勧善懲悪
昔々あるところに一人の貧しい若人がおったそうじゃ。
その若人は身寄りもなく、貧しい生活をしておったが人一倍正義感が強く、悪に対する嫌悪感も人一倍強かったそうで村人からはとても好かれておったそうじゃ。
ある時、若人が山に食料となるものを探しに行ってると一人の老人が倒れておった。
「大丈夫ですかおじいさん。今村のところまで運んであげますからね。」
すぐさま老人を担ぐと山を降りて自分の家へ連れ帰り看病してやった。
そうして三日経ち、老人は元気になった。老人は礼を言い、旅立って行った。
それから3ヶ月経った頃、その老人がまた若人のところをやってきた。なんと話を聞くとその老人はその地域でも随一の金持ちの家柄と言うではないか。こうして若人は沢山のお金を貰ったという。
そうしてまた3ヶ月経ったある日、老人がまた、今度はお忍びで若人のところへやってきた。なんでも人手が足りないらしい。若人はもちろんやりますと答え老人と一緒に村を出た。
老人の家はたいそう立派でとてもとても見たことないような豪勢な家だった。
その若人はその家の倉庫の門番を頼まれた。
期間は2ヶ月間、休むところと飯は出してくれるからありがたいもんだ。そうして1ヶ月が過ぎ、他の仲間とも仲良くなった時、一人の仲間がこう言った。
「実はな、ここの主人はとてもじゃないけど人に言えないようなことをしてるんだ。」
「どんなことなんだ。」
「それはな、表では貧しい人に金を無償で提供してるんだけどな、それは表向きで裏は人に金を貸しては莫大な利子をつけ、返せないようにしてからその家の娘を遊郭に売ったり土地をかっぱらってるらしい。」
それを聞き、若人はあの老人に対して物凄い恐怖、嫌悪感を覚えた。自分はそんな老人を助け、そんな老人から金をもらっていたのか。
若人はすぐさま老人の元へと走り出した。
そうして老人のいる部屋へ辿り着くとこう言い放った。
「おい。人に金を貸しては莫大な利子をつけ、返せないとなると娘を遊郭に売ったり、土地をかっぱらってるとは本当か。応えろ。」
そうすると老人は少しの間黙っていたが突然こう言った。
「ああ本当じゃ。じゃがなにが悪い。金を借りるような生活をしとる方が悪いんじゃ。お前さんだって金欲しさにわしを助けたんじゃろ。世の中はそうやって動いてるんじゃ。今更勧善懲悪ぶっていてもそんなものなんじゃよ。」
若人は自分を全部否定されたと思ったんじゃろう、ついかっとなり近くにあった棒で老人の頭を叩いてしまった。そしてその叩くところだけを見た仲間が役人を呼んだ。すぐさま若人は取り押さえられ、即刻打ち首になったそうじゃ。
善人なるものが悪人とされ、悪人なるものが善人とされた。なんとも悲しい時代の話じゃ。
この世にはこの若人のように善人だったのに悪人とされることがよくあります。とても悲しい時代です。というよりもいつどんな時代でもこうなんでしょうね。とても悲しいです。
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