おしおき
「ではその貴族が今回のことを謀ったと?」
「そうなります。乗りかかった船ですので、この際そちらの対応もしてしまおうと思うのですが、かまいませんか?」
「それは願ってもないですが…。このとおり交流も少ない小数の部族ですじゃ。アルファリーゼ様に報いる程価値のあるものを返すことができませぬ。」
「ああそれなのですが、ヨッカを下さい。」
「は?」
「間違えました。この問題を解決する際、世界の首脳陣にこう宣言します。『千年エルフはアルファリーゼとファイアスノーの双子が"保護"する。文句があるならかかって来い』と。」
「……っ!それは、世界を変えるに等しいですぞ!」
「「まあいつもの事だし」ぃ?」
「優しい方向に変わるなら、それはいいことでは?」
「……っ!……っ!この年になって、とうに諦めた希望を見せられるとは…っ」
老エルフは跪く。彼らなら可能だろう。世界を滅ぼせる程の力を持つ彼らなら。
各国の首脳陣は命がけで保護を厳命するだろう。しくじれば、国がなくなるのだから。
震える手で体をさすりながら老エルフは言う。
「孫だけでなく…、我が種族全員にも救いを下さるとは…。今夜は宴ですじゃ。ゆっくりご逗留下され。」
感極まった老エルフは涙ぐみながらながら、宴の準備に向かった。
「「で本音は」ぁ?」
「ヨッカとキュンキュン学園生活!すでに言質はとってある!!さーさくっと片付けちゃおう!」
平常運転だった。
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ある貴族の屋敷の玄関先で。
「ふ、ファイアスノー!?あり得ないモノの双子!!殲滅者!!世界を脅かす者ども!!」
「お、終わりだ!!」
「…悪口かな。」
「悪口ねぇ。」
「「やるか」」
「あ、謝れ!謝るしか生き残る術はないぞ!」
「だ、誰が謝るんだ!?」
「「「「全員だ!!!」」」」
即座に穴を掘り出す兵達。ついていけない兵が聞く。
「なな何してるんだお前ら!」
「前に国が一個更地になった時は、土下座した者は消し飛ばされ、土下寝で謝った者は叩き潰され、穴を掘って大地に頭から刺さって、三日三晩泣き叫びながら土下埋した者だけが生き残ったそうだ。半分以上は廃人になったがな!」
ヨッカは半眼で双子を見た。
「また、ずいぶん言われてまスね…。」
いつの間にかナッカが白目を剥いて倒れている。アルが優しく起こしたが、産まれたての子鹿のようにぶるぶる震えている。
「せ、殲滅者!各国の首脳どころか、村長レベルまでの指導者に、『怒らせたらマジで世界ぶっ壊せるから、絶対に喧嘩売るな』って回状が回った超越者!こ、こんな子供だったなんて!あわわわわわわ」
今度は泡を吹いて倒れた。折角の美人が台無しである。
「料理家と服飾家じゃなかったんでスか?」
「「そのつもりだし」ぃ」
「この惨状どうしまス?」
「「何もしてないし」ぃ」
はぁ、とため息をつくヨッカ。正直超越者とか言われても実感わかないし、ヨッカにとっては、ちょっとやらかす感じのする気のいい友人でしかない。不穏な単語はてんこ盛りだが、聞かなかったことにして、現状の打開を目指す。
「大体ぃ、世界を滅ぼすとかぁ、私には無理だし完全とばっちりよねぇ。ウルドの悪行が悪いと思うのよぅ?」
弟君は出来るんでスね。そうでスか。でも弟君はお姉ちゃんに頭挙がらないでスよね。だったら一緒じゃないでスかね。
「アルを嗾けましょうかぁ?」
「ごめんなさい」
なんで考えてることがばれたんでシょう?