ナッカお姉ちゃん
ナッカさん→タ行
ヨッカさん→サ行
となっています。
翌朝、ベッドでヨッカがまどろんでると、扉が開いてヨッカによく似たエルフが飛び込んでくる。
「ヨッカ!ヨッカ!無事でよかっタ!」
「お姉ちゃん!」
涙ぐみながら抱きしめあう二人。
寝惚け眼でうんうんと頷くアル。ちなみに全員寝巻きでベッドの上である。お姉ちゃんの名前は、ナッカラッカ・ダオ・ル・オットー、18才だそうだ。
部屋は学生に貸し出しなので、当然ヨッカの分はない。だからアルと寝ることになったのだ。
コンコン、とノックの音がして、メイドのリンダさんが相変わらずの眠そうな目で入ってくる。
「朝ごはんの用意ができています。お着替えになって、あちらのお部屋にご移動ください。」
再会の感動もひとしおだったのだが、詳しい話は食べながら、ということになったので、着替えて隣に移動する。
「今日の朝御飯はフルーツヨーグルトときのこオムレツです。」
「「いただきます」」
ヨーグルトはガラスの器に、カットしたフルーツとジャムが載っていて、シリアルがパラリと振りかけられている。
お皿には行儀よく一口大に整えられた、小さなオムレツが五つ、スプーンに載せて並んでいる。
ぱくっと食べると、トロットロの中身が濃厚な茸のソースに絡まって押し寄せてくる。
濃厚な卵と茸の旨みに、思わず意識が押し流されそうになった。
「んんん~~~~~~~~~!!!ほっはふっ!はうっ!ひいいい!」
「ヨッカはいいリアクションをするねー。」
「なんデすかこれ!なんデすかこれ!わけわからんし!」
ヨッカのお姉ちゃんも壊れている。
「口直しのヨーグルトもあまぁい…。酸っぱさが口の中をさっぱりさセて、またオムレツに手が伸びまス…。」
「ああっ、こっちの茸のソース違う風味ダし!これ里でよく食べた茸!でも全然違う!お母さーん!」
なんかヨッカのお姉ちゃんが泣き出した。幻のお母さんと語りだしたので放っておこう。
「だから私が作るといいましたのに…。ウルド様の料理は耐性のない者には少々毒です。」
リンダさんがそれ見たことか、という風に零した。
「えぇーそうかな。一生懸命作ったのに。」
納得できない顔のウルド。
結局朝ごはんは大騒ぎで、話なんかできなそうだった。
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「はああ。天国でお母さんに会えましタ…。」
「死んでないよ!お姉ちゃんもお母さんも!」
「ごめんごめん。」
「あっはっは。あんなおいしく食べてもらったら、作った甲斐があったな。」
「ウルド様。」
「え?近い、近いよナッカさん。」
潤んだ目で顔を近づけてくるナッカさん。
「ヨッカまで助けて頂いて、お礼の言葉も見つかりません。この上は、私をぜひ嫁に。」
「あの、未成年なんですが…。それに助けたのはアルです。」
「お姉ちゃん食べ物に釣られただけだよね。」
「食べ物は大事です!」
「あーっずるいウルド!」
「とらないよ。アルのでしょ。ナッカさん。俺はアルの従者なので、これからを決めるのはアルです。」
「じゃあ、私も従者したいデす!」
「まあそれはおいおいお話しするとして、今は里のことと、もう一人のマッカさんの行方です。」
あっ…とナッカは冷静になる。たぶん、おいしい食事と無事な妹のことで気が緩み、思わずテンションが上がってしまったのだろう。マッカには不憫だが、ナッカにも酌量の余地はある。
「残念ながらマッカさんを見つけることは、今もってできていません。ただ、襲われたというミモザの森からヨッカを拾った辺りまで広範囲に探索して、何も痕跡がないことから、生きている可能性は高いです。」
「敵に拿捕された可能性はないの?」
「ヨッカを追ってきた集団ときっちりOHANASHIしてるから、あの部隊は一人残らず潰してる。あとは別働隊だけど、探索範囲に一人も引っかからないから、可能性は低いね。」
「ふうん…。部隊の規模が小さいって事は、敵は思ったより小規模なのかもしれないね。」
「あ、報告し忘れてた。実行犯はガザリンド・ブラクラード男爵。帝国貴族だね。」
「ユグドぅ?」
あ、ソフィ姉が怒っている。ちょっと忘れただけなのに。
説教か…。
「涙目のウルド様もゾクゾクします!わかっている牡って罪ですね!」
ナッカお姉さん興奮しすぎだと思う。
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「今夜は姉妹丼かー」
「言い方がいやらしいでス。」
「なんデすか?」
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「今日もいい仕事したわー」
「一生ついてイかせてもらいます!」
「もう…、もう…、お嫁にいけないでス…。」