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賢者の塔

説明回です。

「うわああぁ……。」


ヨッカが思わず感嘆の声を挙げる。其処は巨大な塔の内部。本棚の壁、本棚の柱で構成された吹き抜けの内部に、縦横無尽に仮設足場の様なものが無数に走っており、ここの扉と同じ様な扉が本棚と本棚の間に沢山設置されている。その広さはとんでもない。緩くカーブした外壁は、奥のほうが霞んでいる。


「ここは、賢者の塔『書架区』の解放区域ね。迷宮区からサルベージした本や、研究者がその成果で作成した本を全て収納してあるわ。内容は分類されていて、ここ南区画は、魔法工学、調合学とかが主ね。」


「これが魔導学園なんでスか?」


アルは首を横に振る。


「学園の中に迷宮があるんじゃなく、迷宮の一部が学園なの。そもそも、魔導帝国は、この迷宮へ知識を求めた者と、その知識を元に工業、研究を始めた者が国の始まりなの。だからこれは帝都の中心であり、この国の中枢なのよ。」


「ほえぇ…」


その由来が確かだとすると、相当高度な技術大国である。今も門戸を大きく開き、知識を広げているのだから。ただ、実はその成り立ちから、研究者が多く、国民総魔ッドという癖のあるお国柄なのだが。


「でも、国の中心施設になんで気軽に外国人が住めるんでスか?」


「元々賢者の塔は、正しく活字廃人の為の、古代の施設だったみたい。本棚の扉から、寝所街、研究街、食堂街に空間的に繋がっていて、本を読む以外の最低限が、すぐ目の前にあるの。飽きる迄本を読み、直ぐに実証出来てお腹が空けばご飯を食べて疲れたら寝ればいい。必要なものがすぐ近くにあって、要らないものがない。研究者にとっては、楽園のような場所よ。学園に入ると、賢者の塔に入らざるを得ないから、そこに住むことなるの。」


「入らざるを得ない?」


「学園は研究街にあって、学園の単位は全て迷宮区の探索深度で測られるの。教師はガイドするだけで、器の拡張(レベルアップ)や知識確認の為の試練が、階層毎に設置されていて、一つ一つクリアしていく必要があるの。50階到達でビギナー、100階踏破でエキスパート、派生技術の本一冊作成でマスター、本一部屋分作成でセージの階梯となるわ。それ以降は星の数が部屋数となるけど、そんな人片手の数位しかいないわ。」


「卒業はないんでスか?」


「学園は一応ビギナーからマスターまで面倒を見てくれるの。それ以降は国の管理ね。ずっと住んでる研究者もいるし、手に職ってならビギナーで卒業しちゃう人もいるわ。」


「何だか至れり尽くせりでスね。」


「まあ、お互いにメリットのある話だから。探索や研究で広がった知識は、そのまま国と研究者の財産になる。書架区に収納すれば盗難不可の属性が付くし、写本は可能だけど、原本は残るから損失にはならないし。基本的に知識や技術を広く深く広げていくには、いろんな人がいろんな考えで研究すべきってのが国是だからね。」


「へええ。人を集めて技術を集めて。上手く出来てますね。」


「まあ、お財布の紐は門閥貴族が握ってるし、いい事ばかりでもないからね。」


ぼーっと塔を見ていたヨッカは、後ろに回ったアルに抱きしめられる。


「入学したくなった?」


「……うらやましいとは、思いまス。ですが、我々は里を出られない身なので…。」


「…そうだね。そんな世の中がもし変わったら、一緒に通おうね。」


それを聞いてヨッカはふふっと笑う。

その笑顔は、晴れやかで、儚くて、少し悲しそうだった。


「そうでスね。その時はぜひ。アルと学園に通うのは、とても楽しそうでス。」


「約束ね!」


---------------------


その夜。


「き、今日もやるんでスか」


「当たり前よ。まだ全然回復しきってないし。」


その言葉にモジモジしながら、頬を僅かに染めて言う。


「や、やさしくしてくださいね…。」


「デレた!?ひゃっほーーーーーーーうう!!」


「あああああああああああああああああああああああんあ」


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