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事の顛末

姉が無事だったということに、喜びながらも、目を覚ますまで逢えない事に落ち込むヨッカ。それでも映像魔道機により、眠っている姿は確認出来た為、一応の落ち着きを見せる。意識が戻るまで、事の顛末を説明されることになった。


「だから、助けたところの、周辺に怪しいヒト族がいたもんで、軽く挨拶したら、襲いかかってくるもんだから、専守防衛(おしおき)事情聴取(ごうもん)をしたわけなんだよ。そしたら他にも拉致してるっていうから、まあ、それで保護したんだけどね。よくよくお話しすると追っかけてたのは三人っていうんで、慌ててもう一人を探したんだけど……見つけられないんで、これは一度関係者にお話しを聞いて仕切り直しかなと思ってたんだよねー。」


あはは、とウルドが笑う。軽い。


「で、でも、どうやって…?」


「ええと、使役してる、というか、作製した魔法生物で、かな。」


「はあ…。もしかして上級の錬金術師なのでシょうか?」


聞いた限りでも、索敵や強襲、探索を広範囲で行っているので、それを可能にするような、強力な多数の魔法生物を使役する、錬金術師とだ思った。だが、爽やかに笑う頼りなさそうな外見から、そんな強者の雰囲気は感じられない。


「俺は、魔法料理師(マジカルクッカー)だよ。まだ見ぬ食材、想像を絶するレシピ。それを魔法で料理して、オリジナルを超える事が出来た時の感動は、言葉に出来ないんだな!」


熱く語るウルド。

やや、勢いに押されながらも、言葉を返す。


「ええと、それがどうして錬金術の技術を?調合系なら兎も角、生命創造の技術は料理に関係ないでシょう?」


「え?討伐、採取したものを素材にゴーレム作れば、背負って帰る必要がないだろ?調理は素材の調達から始まっているんだよ!」


「ああ、そういう…」


納得はする。が、その為だけに他分野の技術を習得するのか?そういうものなの?都会の常識ってそういうもの?混乱するヨッカを置いてけぼりに、嫌なことを思い出したのか、アルが顔を顰めながら言う。


「あー、討伐したレッドマンティス数十体固めて、七メトル位の人型ゴーレム作ったの思い出しちゃった。あれマンティスの孵化みたいで、気持ち悪かったー。」


「ま、まあ、素材と割り切って見れば、平気だったのでは?」


たしかにそれは気持ち悪い。


「それがね…。動くのよ。一匹一匹がうごうごと。だから街に戻ってきたときに阿鼻叫喚になったの。」


たしかにそれは恐ろしい。


「だって素材の新鮮さを保つのに、生きてたときみたいに体液を循環して、生かしとかないとまずいだろ。」


ケロっとしていうか、最早何処から突っ込めばいいのか。数十体もの巨大な魔物を擬似的に生かし、同時にゴーレムとして組むとか。どれだけの魔力と制御力があれば可能なのか、想像もつかなかった。唯の少年少女ではない。それを段々と理解し始めたヨッカだが、その上限が何処なのか、現時点では予想すら出来ていなかった。


「取り敢えず、常識が無いってことはわかりまシた。」


「ひでぇ!認知が足りないだけだって?実際何回か繰り返したら、皆あんまり騒がなくなったし。」


「何回もやったんでスね…。」


「そうそう。皆にたくさん振舞ったら喜んでくれるしね。最近は門兵さんにも期待されちゃってさー。」


「そして現在進行形なんでスね…。」


照れ照れと頭を掻くウルドを見て思う。なぜ自慢気なのか?褒めて無いはずだ。褒めてないよね?料理バカなのか?それっぽいし。いやそもそも料理関係なかった。じゃあバカだな。


「せめて料理バカがいいな。」


「心の声を読まないで!」


いろいろ混沌としてきたところで、アルが話を戻す。


「ともかく、これからのことなんだけど。ヨッカはどうしたい?」


「探索が行き詰まっているなら…、一度里と連絡を取りたいでス。」


「そうだね…。だた遠耳、だっけ?あれはやめておいたほうがいいよ。」


「なぜでスか?」


「たぶんだけど…。普通の可聴域の外の波長で遣り取りしてるんでしょ?おそらくそれを傍受されたんじゃない?使っている波長域がわかれば、大体の範囲で居場所が特定出来るから。」


「なっ。それじゃ里の位置も?!」


「んー、傍受しただけなら、そこまで特定出来ないと思うけど…。そもそも捕獲しようとした集団は三人を追ってきた訳だから、里は後回しじゃない?」


「それでも何人か戻って探してるかも知れまセん!」


そこにウルドが口を挟む。


「部隊は一人残らず叩き潰したから、暫く大丈夫かな。」


懐の鳥がジヒワナイー、ジヒワナイーと鳴く。


「そ、そうでスか…。でも、遠耳を使うのは大丈夫でス。狩りなんかで仲間の居場所が分からない時は全方位に飛ばしますが、場所が分かれば指向性で飛ばせまスから。」


「あー、成る程、耳だけじゃなく、声帯も生体魔導器なんだね。そんな便利だと、確かに欲しがる人は多いかもな。」


生体魔導器とは、魔子を消費して異能力を発揮する、先天的な生体器官だ。魔法で代用することも出来るが、起動速度や強度が段違いだし、何よりデメリットなく常時起動(パッシブ)に出来る。魔眼などもこれに含まれる。


「鋭いでスね。余り離れてると無理ですが、10キロメトル位まで近付けば、可能でス。」


「じゃあ、お姉さんの目が覚めたら、出発しましょう。治療があるし、放って置けないから。それまでは、観光でもする?」


アルがいたずらっぽく笑う。


「そういえば、ここは何処なのでスか?」


「ここは、魔導学園----ガルネシア魔導帝国、図書館迷宮、別名『賢者の塔』----その施設の一つよ。」


言いながら部屋の扉を開けた先には、上下に何処まで続くが分からない、吹き抜けの回廊が、本棚に埋め尽くされて、何処までも続いていた。


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