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ファイアスノーの双子

ファイアスノー家。


ロンドベルンの氏族の中での地位は高くないながら、血統と言う意味では、他と隔絶した特殊性を持つ。その血統には、あらゆる種族が取り込まれ、王国に存在する種族固有技能の因子を、全て網羅すると言われている。


恐るべき雑種。


但し、そのバランスは尖っており、固有技能がマイナスに働いていたり、全く機能していなかったりするものも多い。


然し血族の中では発現する技能より、血の中にある因子の方が重んじられ、例え個々人の能力が凡庸であっても、軽んじられることはない。血族の結束は固く、血族が他に害されるのを許さない。



燃える雪(そんざいしないもの)として存在する氏族。あり得ないもの(もえるゆき)を求める氏族。


------------------- そもそも遺伝子とは、プログラムのソースのようなもので、多用な用途にあった様々なコードが存在し、その数が増える程、生物として複雑な、多用な機能を持つことができるという。あるDNAは、古代の生物に比べて4倍になっているそうだ。それによって人類は、三葉虫より高度な機能を獲得している。


ファ○コンのドラ○エより、プレ○テのド○クエの方が複雑なシナリオやグラフィックなのと同じ理屈だ。ファイアスノー家は遺伝子の複雑さ多様さ…それを何より重要視する一族である。 -------------------




その中でも奇跡と言われたのが今代当主の姉夫婦が産んだ双子であった。


彼等の見目は麗しい。空色の髪と銀色の瞳、藍色の髪と黄橙の瞳。その見た目から、蒼穹の銀月と宵闇の暁月と言われた。


彼らは産まれてからとんでもない早さで色々な物事を習得した。更に、同期(シンクロ)しているかのように、お互いが習得したものを、いつの間にかもう一方が使える様になっているのだ。


その内姉の方は武芸の習得に特化し、弟の方は魔法の習得に特化した。あくまで習得を、である。教えたはずのない魔法を姉が使用し、見たはずのない剣技を弟が駆使する。お互いに教えあっていたとしても不可能なほど、難解な理論や技術を共有している。元々、天才と呼ばれそうな程能力の高い双子が、其々が習得した技能を共有するのである。


各々が手に入れた物を、二人で齟齬なく認識し、二人分の脳で解析、応用する。そして技術や武技も、その血から来るであろう身体能力で会得するのだ。


双子は五才を過ぎたばかりだが、もはや大人でも手が付けられないほど高い能力を手にいれている。


それに加えて噂になったのが、アルファリーゼ姫である。


双子の乳兄弟だったアルファリーゼ姫は、双子が噛み砕き、真理まで迫った理論を、真綿の様に吸収して自分のものにしていった。双子が反則に近い手段でスペックを挙げるのに対し、此方は正に正攻法で成果を挙げていたのだ。天才という呼称は、アルファリーゼのほうが相応しいのかもしれない。


四六時中付きっ切りで勉強漬けだったが、双子との遊びの延長だった為、何の苦もなかった。寧ろ双子に置いて行かれまいと思うことで頑張れると語っている。


中でも特筆する程得手としたのが回復魔法だ。彼女の治癒は独特で、魔子を体に循環させ、回復力を強化するという。魔子を強制的に無理矢理流せば、魔子酔いになるはずだが、彼女が施術すると、それは無いらしい。そして、驚愕すべき事に、生体魔導器の回復までも成功したと言う話だ。


今後の彼女の目標は、未だ誰も未到達の魔子回路の回復まで視野にあるという。世界を変えていく人材の出現に胸が踊らない筈はない。


「何見てんのヨッカ。」


「何か昔の記事のスクラップをアルのお母さんから貰ったのでス。布教用だから問題ないと。」


「ああー、ウルドの身体を治そうと頑張ってた時の奴かー懐かしい。」


「身体が悪かったのでスか?」


「やー、結局勘違いだったんだけど、まあその時の成果で、今の治癒能力があるから、何が幸いするかわからんね。」


「この同期(シンクロ)ってところなんでスけど…」


それを聞くと、アルはちょっと悲しそうな、困ったようなよくわからない微笑みを浮かべる。


「……ウルドとソフィはね。共振脳梁っていう生体魔導器を持っていて、感応っていう能力を使えるの。それ自体、あまり珍しくないんだけど、その強度が桁違いで、距離も時間も関係なく、記憶や認識や概念を共有するのよ。その能力で様々な技能を常人以上の早さで身に付けてるわ。でも、双子同士で隠し事は出来ないし、嘘もつけない。人格は違うのに、他人の記憶を共有する。その苦しみは、誰にも分からないわ。そのお陰で誰かを守れるほどの強さを手にいれたのだから、恨むことじゃないんだけどね。」


「どうしてそんなにシてまで…?」


「本人達の事情もあったのよ。特にウルドは生まれつきの問題を抱えていたし……。肉体が崩壊する前に、自分自身を早急に強化する必要があったの。」


「…っ崩壊って!そんな危険な状態だったんでスか?!」


「まあ超越者の素質があったとはいえ、未成熟な肉体は、潜在的な力が巨大なぶん、かなり不安定だったの。今は取り敢えず大丈夫だけど。」


「そうだったんでスか…。」


「あ、あとね…。事情はともかく…心情的には、…わ、私っ、…私をね……?守りたかったんだってっ…!」


顔を真っ赤にするアルがかわいい。


そう、双子はいつも誰かを守ろうとしてる。


誰かの生き方を、心を、思いを。それはアルも同じだ。この前お姉ちゃんが泣いてた。思いを受け止めてくれる事が嬉しいと。幸せを願ってくれる事がとても愛しいと。


そして、三人はお互いの事も守ろうとしている。その絆の深さに泣きそうなる。きっとまだ私がそこにいない羨望と、彼等も幸せであってほしい願望と。そんなものがごちゃごちゃになっているのだ。


私も彼等の様に、誰かを守れるようになりたい。

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