第十八.五話「友達になりませんか?」
十八話と十九話の間のお話です。
これまでの番外編とは違い、私が書いています。
鏑木マリア・・・由緒正しき旧家・鏑木家の最後の当主。チスイコウモリとカナリアのキメラ。歌が得意で、学院の敷地にある礼拝堂で1人で歌っている時がある。10年前に一族心中に巻き込まれるものの、彼女は背中に軽い火傷を負っただけで済んだが…両親と親族全員を失い、天涯孤独となった。彼女は初等部に入学すると同時に、当主の座と数十億の遺産を継承した。
葵夜酉ヒヨリ・・・ネコとヒヨコのキメラ。双子の兄がおりキメラ学園に通っている。兄のフウリの呼び方は「兄さん」学院では猫かぶっており優等生を演じている。寮では面倒だからと基本ジャージ。しかしそれは友人や周りの人にはばれないようにしている。学校では丁寧な言葉づかいだが、友達の間ではふつうに喋る。しかしテンパったりすると兄同様素に戻る。
この二人は、偶然の出会いを果たした。しかし、お互いに敵対するという形に。それでも二人は、心の底で、友達になりたいと思っていたのだった。
第十八.五話「友達になりませんか?」
マリアは今、キメラフィーネ女学院の廊下を、ゲームソフト(PC用)を抱えて、歩いていた。
マリア(カオルお姉の話によれば、仲良しになるには、そのきっかけを作らないといけないとのことでした。仲良しになるには、ゲームを通して、意志の疎通をする。これなら相手も私と仲良くなりたいと思うはずですわ。)
一方ヒヨリは、自室に篭り、自分のことで思い悩んでいた。
ヒヨリ(兄さんとヒロ君は、あの人間、神谷君のことが憎いって言っていた。でも私は、偶然神谷君が好きになってしまった。昨日はあの後、兄さん達の部屋に行って、鏑木さんの話を聞かされたけど、私はどうしても鏑木さんに恨みを持てない・・・。むしろ神谷君を嫌いになれない。本当のことを言えば、兄さん達を裏切ることになるし、どうしたらいいのかな?)
その時、部屋のドアを叩く音がした。
マリア「葵夜酉さん!いらっしゃいますか!?」
ヒヨリ「ニャ!!その声はッ!!!鏑木さん!」
マリア「入りますよ。」
ヒヨリは焦った。なぜなら、自分が自室にいるときは、ジャージ姿なのだ!普段猫をかぶった態度をとっているので、こんなみっともない自分を知られるのは、正直いやだと思ったのだ。というわけなので。
ヒヨリ「5分だけ待っていてください!」
そういってヒヨリは、ジャージからいつもの制服に着替えた。
ヒヨリ「入っていいです。」
マリア「それでは失礼いたします。」
マリアはそういって、ヒヨリの部屋に入った。部屋の中は、漫画が散乱して少し汚かったが、服などはクローゼットにしまって合った。
ヒヨリ「鏑木さん、一体何の御用でこちらに?」
マリア「実は・・・、一度あなたとお話がしたかったんです。昨日のお詫びもかねて。」
ヒヨリ「お詫びって、それは私の兄達があなたに勝手に恨みを持ってやったわけで、あなたはその、悪くなくて・・・。」
マリア「私が悪いんです。人間なんかに手助けをしたから、恨みを買われたんです。あなたも人間のこと、よくは思っていないでしょう?お兄さんと同じで。」
ヒヨリ「え・・・?私は・・・。」
するとマリアは、一つのゲームソフトを差し出した。弾幕シューティングゲームの対戦版である。
マリア「お話は、ゲームをやりながらしませんか?「射撃妖怪対戦」、おもしろいですわ。」
ヒヨリ「はぁ。でも私、シューティングとかやったことないですよッ!!」
マリア「慣れれば楽しいですよ、さあやりましょう!」
マリアはPCゲームにコントローラーをつないで(自室の物を二つ持ってきた)ゲームを始めた。初めはおっかなびっくりで、ゲームを進めていたヒヨリだったが、慣れてくると、弾幕の避け方も様になっていた。
ヒヨリ「ココでボム!決まったぁ!」
マリア「普通はボムは温存しておかないと、後で困るのですが・・・。」
ヒヨリ「気にしない気にしない。あ、ボス戦ですよ!」
マリア「ハナオンナは今までのボスよりも手ごわいですから、気をつけて・・・。」
ピチューン!!!!
ヒヨリ「ぎにゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
マリア「ほら、落ちましたわ。」
ヒヨリ「よし、もう一回!って、鏑木さんまだ残機に余裕がありますね。」
マリア「長年やってますからね。経験をつめば、あなたも私のようになれますよ。」
そして、ゲームはマリアが勝利し、二人はお茶にすることにした。
ヒヨリ「スナックしかないんですけど、大丈夫ですか?」
マリア「たまにはポテトチップスもいい物です。構いませんよ。」
ヒヨリ「よかった・・・。あの。」
マリア「?」
ヒヨリ「私は、人間に恨みなんて持っていません。むしろ大好きです。ココだけの話なんですけど、私はあなたが勉強を教えたって言う、神谷飛鳥君のことが、大好きです。」
マリア「告白はしないんですの?」
ヒヨリ「したらシスターに罰を受けてしまいます。だからしません、今はね。」
マリア「よかったです。」
ヒヨリ「?」
マリア「私は、実を言うとあなたとお友達になりたくて、こちらに遊びに来た次第なんです。でも、あなたがもし、人間を嫌う存在なら、私を他の生徒のように拒絶してしまうと思って、少々不安だったんです。しかし、あなたのその告白で、安心しました。あなたが人間好きでよかったです。」
ヒヨリ「鏑木さん・・・。」
マリア「葵夜酉さん、私と友達になりませんか?」
ヒヨリ「喜んで!」
そのあと、ヒヨリはゲームソフトをすべて借りることになり、そのお返しとして、マリアに漫画を貸すことにした。
マリア「何ですか、この莫大な量の漫画は!」
ヒヨリ「「スターブラッド」その文庫本です。私が大好きな漫画なので、マリアさんが好きなゲームを借りるお返しに、その漫画を貸してあげます!お勧めですよ、私が子供の頃からの愛読書です。少しグロいですが、おもしろいですよ。」
マリア「あ、ありがとうございます。それでは失礼します。」
マリアは部屋に戻り、その夜例の借りた漫画を読み始めた。
マリア「このキメラになった男・・・、この前言い争いになった生徒とそっくりですわ。性格といい、鳴き声といい・・・あ・・・火が・・・燃え移って・・・、広がって・・・お父さんが死んで・・・焼かれて・・・屋敷にも火が・・・ああああああああああああああああ!!!!!」
その後マリアは、自分の過去のトラウマがよみがえり、眠れなくなってしまった。そしてヒヨリの部屋へ行き、すべてを話し、彼女の部屋で寝ることにした。
マリア「主人公の家が火事になったとき、私の記憶がよみがえってしまって・・・。一人はいやです。今夜は一緒に寝てください。」
ヒヨリ「あなたがさびしがり屋で、まだ第1部のさわりなのに、トラウマを掘り返してしまうとは・・・。分かりました。またさびしくなったら、一緒に寝てあげますよ。」
マリア「ありがとうございます。」
完→十五話へ続く
女の子同士の話で、キメラ学園の生徒が登場しないので、番外編という形になります。マリアの弾幕シューティングゲーム好きという設定を生かし、書きました。あと、マリアにヒヨリの愛読書を読ませると、序盤で躓くだろうなと思い、こんな展開にしました。若干百合気味になってしまったら、すみません。