第零.一話「入学」
初めまして、せおというものです。
ブログで連載している小説、学園キメラをこのたび、「小説家になろう!」のほうに二重掲載させていただくことにしました。
前もって謝っておきます。BL前提で書いています。苦手な方はバックしてください。
ではどうぞ。
俺が住むF県D市樹牙羅町は、緑が豊かで、首都圏ほどではないけど、大きな町だ。しかし、大きな謎もある。
町の外れに大きなトンネルがあり、そこは異世界と繋がっているうわさなのだ。何しろそこは、選ばれたものしか行くことができないという場所なのだ。
運よくそこから帰ってきたものはこう語っている。「あそこへ行った人間は、バケモノの餌にされてしまう」と。俺は、その言葉を信じてはいなかった。樹芽羅学園の入学試験を受けるまでは・・・。
第零.一話「入学」
-神谷家・11月某日-
飛鳥の母・良奈「飛鳥、樹牙羅学園の入学願書提出、明日が締め切りでしょ?間に合うの?」
飛鳥(俺の母さんが、階段の下から俺を呼んでいる。俺は今、入学願書を書いているところだった。俺は将来のことはまだ、考え中で、とりあえずは私立の高校に進みたいと思っていた。なぜなら私立のほうがかっこいいと思っていたからだ。なんて単純な考えなんだろうか。俺は自分でぼけて、自分で突っ込んだ。)
飛鳥「もうすぐ書き終わるよ母さん、明日には間に合うよ。」
良奈「それにしても、全寮制の高校に進学したいだなんて、一人で大丈夫なの?」
飛鳥「ルームメート制だから、一人暮らしじゃないし、友達も出来るかもしれないから、多分大丈夫だよ。心配しないで母さん。」
良奈「そう?その子がいい子だったら、心配ないんだけど、もし変な子だったら・・・。」
飛鳥「・・・そうか、それもあるか。でも俺は大丈夫だから。負けないで頑張るよ!」
飛鳥(俺は強がって見せた。内容を書き終え、封筒に学校の名前と住所を書く。俺はしっかり樹牙羅学園の住所と名前を書いたはず・・・なのだが、どういうわけか別の学校案内のパンフレットを見てしまった成果、住所と名前を微妙に間違えてしまったのである。なぜそこにその学校のパンフレットがあったのかは、いまだに謎だ。俺は樹牙羅学園ではなく、樹芽羅学園に願書を出してしまったのである。)
-1月某日・試験当日-
飛鳥(俺は試験当日の朝を迎えた。気合を入れてすぐ、家を出たのだが、そこに見知らぬ車が止まっていた。どこにでもあるRV系の車なのだが、そこにはKIMERAと書かれていた。運転手は白衣を着た女性だ。)
飛鳥「あ、あの、何か用ですか?」
飛鳥(俺は身構えた。入学試験当日に、不審な人物に拉致られたなんて最悪な事態は避けたかったからだ。携帯電話を取り出して、いつでも警察に連絡するようにした。)
ナコ「神谷飛鳥君ね。私は樹芽羅学園養護教諭の蜂谷ナコ。あなたを学園まで迎えに来たわ。」
飛鳥「え?樹芽羅学園?俺が願書を出したのは、樹牙羅学園で、その学校じゃ・・・。」
飛鳥(怪しい、怪しすぎる!俺はとっさに警察に連絡しようと携帯をプッシュしようとした。すると、その女性は、俺を強引に車に引っ張って、乗せてしまった!しかし、なぜか口にナフタリンのような意識を奪うような薬品は抑えてこなかった。普通拉致るならそのくらいはやるだろう!もしくは目隠しをして体を縛るとかさ。しかし、その女性・・・ナコ先生と呼ぶべきだろうか?・・・は、俺の携帯を取り上げた以外は何もしてこなかった。)
ナコ「この世界の警察は、呼ばないでね。厄介なことになっちゃうから。さあ、シートベルトを締めて!学園まで一直線に行くわよ!」
飛鳥(この世界?厄介なこと?訳がわからないまま俺は、車に乗せられ学園まで行くことになってしまった。と、その車は例のトンネルまでやってきてしまった!)
飛鳥「そこのトンネルは、行かないほうがいいですよ・・・。」
ナコ「だってここを通らないと、学園にいけないじゃない!私達の世界にも帰れないし。」
飛鳥「え!!!!!」
ナコ「それじゃ行くわよ!しっかりつかまってて!」
飛鳥「うわあああああああっ!!!!!」
飛鳥(こうして俺は、人間の世界から一時的に姿を消すことになってしまった。)
飛鳥「ここは・・・トンネルの中・・・だよな?」
飛鳥(トンネルの中は、見たこともない町が広がっていた。見た目は樹牙羅町と似ているが、微妙に大きい。立派な駅や、駅前アーケードもある。それに都会にあるような、立派な建物もある。こんな大きな町が、トンネルの中に広がっていたなんて・・・。)
飛鳥「誰だよ、バケモノがいるって言ったやつは。」
ナコ「さあ、付いたわ。」
飛鳥(俺とナコ先生は車を降りた。)
飛鳥「ここが、樹芽羅学園?」
ナコ「そう、ここは職員駐車場で、そのとなりが来賓用。今入ってきたところは裏門で、正門は反対側にあるわ。そこまで案内してあげる。」
飛鳥(ナコ先生は、俺を正門まで案内してくれた。樹芽羅学園、そこは一見すると普通の学校に見える。普通の、ごくありふれた何の変哲もない学校・・・。)
ナコ「そのとなりにある礼拝堂は、聖キメラフィーネ女学院の物ね。あなたには関係ないかもしれないけれど。さあ、試験の時間が迫っているわ。受験票を出して、入り口で受付してもらって、試験会場まで行ってちょうだい。お姉さん、試験が終わるまで、保健室で待っているからね。」
飛鳥「は、はあ。」
飛鳥(俺は入り口で受付してもらい、受験会場である教室に向かった。指定の番号の席に座り、勉強の最終確認をしていた、その時・・・。)
飛鳥「!!!!!!!!!!!!?女の子?」
飛鳥(俺のとなりに女の子?が座った。ここは確か男子校のはずだ。共学のはずはない。しかし、俺のとなりに座ったこの子は、明らかに女の子だ。クリームのような柔らかそうな髪の毛、吸い込まれそうな金色の瞳、151cmくらいの小柄な身長、俺は一気に彼女?に惚れてしまった。この子と一緒に学園生活が送れるなら、どんなに幸せだろう!)
飛鳥「よし、試験は絶対乗り切ってやる!」
飛鳥(俺はそう思った。そして試験は何の問題もなく終わった。ただ、気になるところがあった。小論文の問題で、人間とキメラについて書けとあったのだ。なぜそんなファンタジーのような問題が、入学試験に出るのかと俺は不思議に思った。それに、数学も、科学も、英語も、社会も、すべての問題でキメラという単語が出てきていたのだった。面接にいたっては・・・。)
面接官・ドリュウ「あなたは人間みたいですが、なぜこのキメラの学校を受けようとしたのですか?」
飛鳥「ハイ、私はこの学園で、共に学べる友人という物を求め、将来に生かしたいと思い、この学園を受験いたしました。将来、世界の役に立てる職種に就きたいと思っている次第です。」
飛鳥(棗さんの受け売りで、志望動機を答えてしまったが、返ってそれがいい答えになったと今では思っている。でも、設問としてはやっぱり変だった。何でキメラにこだわるんだ?)
ナコ「お疲れ様。どうだった?」
飛鳥「この学園は変です。キメラにこだわりすぎています、キメラとは空想上の産物に過ぎないはずです。なぜそんなにキメラにこだわるんですか!?俺にはさっぱりわかりません。」
ナコ「今は・・・あなたにはわからないわね。この学園に通うようになれば分かると思うわ。」
飛鳥(このナコ先生の言葉の意味が、当時の俺には分からずじまいだった。学園に通うようになれば分かるって・・・?)
ナコ「それじゃ、あなたのお家に送っていってあげるわ。」
飛鳥「はい。」
飛鳥(その日はわけも分からずうちに帰った。今日はいつになく疲れた・・・。俺はふと、あの女の子?のことを思い出していた。あの子は試験に受かっただろうか?あのキメラの問題を簡単に解けただろうか?俺はあのこと一緒に学園生活を送れるだろうか?そのことは頭の中を駆け巡り、その日は寝付けなかった。)
-4月某日-
飛鳥(俺は、樹芽羅学園に無事合格した。うれしい半分、少し複雑になった。この学園に入って果たしてよかったのだろうか?あのひたすらキメラにこだわる入試は悪い知らせの前兆なんじゃないかと。しかしその不安は一発で吹き飛んだ。)
飛鳥「!君は・・・!」
飛鳥(彼女がいた。樹芽羅学園の制服を着て、桜の舞う中おとなしく登校する彼女はまるで、天使のように見えて・・・。)
??「若、いってらっしゃいませ。初登校ゆえ、怪我のないようにお気をつけてくだせぇ、キョウカ様。」
飛鳥「わ、若?」
キョウカ「うん、行ってくるよトラジ、僕のことは気にしないで。うまくやるからね。生徒会のことは頼んだよ。」
トラジ「わかりやした。会長の迷惑をかけないように、頑張りやす。」
飛鳥「?」
飛鳥(一瞬なんだったのか、意味が分からなかった。彼女は一体何者なんだ?あんな強面を相手に会話していたぞ。それに、若って。すると、彼女は俺に微笑んだ。)
キョウカ「おはよう。」
飛鳥「お、おはよう。あの、入試の時に一緒だったよな、俺たち。」
キョウカ「うん。あの時は僕も君のことは覚えてるよ。一人だけ人間だったし。」
飛鳥「?一人だけ人間?それって一体・・・。」
キョウカ「あ、入学式に遅れちゃうよ。急がないと!」
飛鳥「あ・・・。」
飛鳥(そういって彼女は俺の手をつかんで引っ張った。初めて彼女と手をつないだ瞬間だった。これが女の子の手か・・・まともにつないだことってなかったからな。それにしても、この子の手、ちょっと硬い気がする・・・・。)
-入学式-
学園長「皆さん入学おめでとうございます。樹芽羅学園の新入生として、立派なキメラを目指し、日夜勉学に、校内活動に精を出してください。」
飛鳥(学園長もキメラのことを言ってる・・・。どうしてこの学園はキメラを・・・。)
シハク「生徒会長として一言言っておきます。新入生の中に一人、人間がいるという話を聞きました。これはわが学園始まって以来の危機だと私は考えています。人間は我々キメラよりも下等な生物、出来損ないの生物だと私は認識しています。何の能力も持たない人間が、この学園に入学して何の得になるんですか?私の話しを聞いている人間、あなたは何かになれますか?なれないでしょう。転校したいのなら今です。あなたはこの学校にいてはいけない存在です。それ以外の皆さんは、この学園に入学できたことを誇りに思ってください。」
飛鳥(この生徒会長は、何を言っているんだ?自分達がキメラだって?どう見ても人間じゃないか。キメラだって言うのなら、証拠を見せてほしいぜ。)
-1年E組-
蝦夷モリオ「えー、お前達の担任になる蝦夷だ。実は俺も今年度からここに赴任してきたばっかりの新任教師なんだが、お前らと一緒に大きくキメラとして成長して行こうと思っている。ちなみにキメラ能力は、エゾモモンガとマリモだ!」
飛鳥(そういって蝦夷先生は、教卓の上に立ち、両腕を広げた。するとモモンガの耳が生え、腕に皮膜のような物が生えてきた。そのまま先生は風を受け、教室内を飛び回り始めた!)
飛鳥「なななななななな!?」
オトワ「なかなかすごい能力だな。」
トロ「かっこいい。」
ジュリ「派手で俺好みだ。」
ダイキ「お見事です、先生。」
飛鳥(そして先生は飛び回った後、丸くなってマリモのように動かなくなったかと思うと、ごろごろ転がり始めた。)
モリオ「それじゃ、出席番号順に自己紹介をしてくれ。まずは赤間からだ。」
赤間「はい!」
飛鳥(という訳で自己紹介と称してみんなは自分の名前と能力を晒していった。)
ジュリ「桑山ジュリ!クワガタムシとテッポウウオのキメラだ!ぷっぷっぷ!」
トロ「立ててあった的を糸も簡単に、倒しやがった。百発百中じゃん。」
ダイキ「鈴菫ダイキ!チンパンジーとすずめのキメラだ!」
飛鳥「おお、飛んだ!すげぇ!」
飛鳥(そしてあの子も・・・。)
キョウカ「兎影キョウカです。ロップイヤーとトカゲのキメラです。」
クラス全体「兎影ってもしかして、兎影組の若頭か?うわさの。」
飛鳥「わかがしら?」
飛鳥(すると兎影は、おもむろにブレザーとシャツを脱ぎ、上半身を晒した。本能的に俺は目を覆った。しかしそれは意味のないことで・・・。)
キョウカ「そのとおり、僕は兎影組若頭です。この刺青が、その証拠。」
飛鳥「お前、もしかして、男?」
飛鳥(兎影の胸には、今兎影が発動しているように、兎の耳が生えたトカゲの絵が彫られていたのだ。その旨にはふくらみがなく、おっぱいというより胸板といったほうが正しいかもしれない。兎影キョウカは紛れもない男だった。俺は、男に恋をしてしまったのだ。)
キョウカ「うん、今までなんだと思っていたの?」
飛鳥(自己紹介は続く。)
飛鳥「神谷飛鳥です。人間です。だからといって俺を、嫌いにならないでください。」
モリオ「生徒会長の言葉は気にするな。先生はお前の味方だぞ。いつでも相談に乗る。」
飛鳥「ありがとうございます。」
トロ「森勝トロ。アブラコウモリとカツオのキメラだ!血は吸わないから、安心してくれ!」
オトワ「最後は俺だ。獅音オトワ。ライオンとカメレオンのキメラ。好きなものは・・・・、」
飛鳥「え?」
飛鳥(すると俺は、いきなり獅音の舌に絡め取られ、引き寄せられた。)
オトワ「お前のような、男だ。」
飛鳥「!?」
トロ「ちょっと待った!こんなところでキスはするな!お前の悪い癖だ!そうやっていい男がいれば、勝手に自分の物になるように、キスしていくの!」
飛鳥「何!ちょ、放せ!」
モリオ「はいはい、一通り自己紹介は終わったな。来週からこのメンバーで一緒に切磋琢磨していこう!」
飛鳥(こうしてHRは終わり、俺は寮の部屋へ行くことになった。そして俺は、ルームメートが兎影であることを密かに期待し、部屋の戸をあけた。すると・・・。)
オトワ「よう、遅かったじゃないか。」
飛鳥「!?」
飛鳥(という訳で、俺のファーストキッスは、獅音によって奪われてしまった。最悪だ。こうやって、俺の学園生活は、幕をあげたのだった。)
第零.五話に続く
いかがでしたか?
実はこれ、1話より後に書かれたものなんです。
しかし、初めての方もいると思い、一番最初に持って来ました。
後に掲載する第1話と性格が違っていたら、本当にすみません(まあ、あまり変わらないと思うけど)。
キャラクターの詳細が知りたい方はブログのほうにありますのでよかったら・・・。