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悲痛

作者: DT

悲痛

 この世は、憎悪、で埋め尽くされている。

 しかし。

 ニンゲンは止める術を知らない。

 まったく。

 あーあ。

 まったくもって。

 ニンゲンはロクでもない生物である。

 僕はただ立ち止まっている。

 それだけの話。

 しかし、傍観者である通行人は、悲痛、を上げている。

 僕は振り向こうと足をターンする際、何か、を踏んでいることに気付く。

 おや? おやおや。

「きゃーー!!」

 女性は叫ぶ。

「ま、マジか」

 写真を撮る男性。

「・・・おや。おやおや」

 こりゃ、先ほど自動車に轢かれた、少年、じゃないか。まったく、歩道の上に倒れているなんて気付かなかったよ。

 ・・・を言った際。

 僕はそのまま、少年、の後頭部を踏んづけ。

 赤自動車の社内から見ている彼女に向けて。

 ささかながら、笑った。

 ぼくは転んだ。エンジン音、が鳴り響く道路で一台の赤自動車に轢かれた。

 ・・・・・・ッ。

 空を舞ったぼく。

 歩道の上で歩いている、彼、の声をいささか聞いた。

「・・・おや? おやおや」

 虚ろな顔した、彼、であった。

 歩道の上に落ちた。

 ぼくはうめき声を上げる。

「うっ」

 ・・・そして意識が途切れそうな時。

 彼は。

 ぼくの背中に乗って何かを呟いた。

 瞬間。

 彼の笑い声を聞いた。

 横から現れた、少年、はそのまま私の愛車にぶつかった。

 私は困惑する。

 けれど、少年は、舞っている。

 きっと、愛車より高く飛んでいるだろう。

「・・・ひッ」

 私は恐怖する。

 人を跳ねた。

 殺したかもしれない。

 ヤバイやばいやばいやばいやばい。

「・・・・・・ヤバイ」

 窓から見ていた私は発した。

 轢いた少年の後頭部を踏んづけている彼は。

 私に。

 笑い顔を見せた。

 落ちてきた少年のうめき声を聞いた瞬間、私は困惑した。

「え?」

 何が起きたのかさっぱりの私。

 そんな私の目の前に、彼、は何事もなく、少年、の背中で立ち止まった。

「きゃーー!!」

 そんな光景を見た私はいささか不気味な世界観に、悲鳴と悲痛、を上げた。

 けれど彼は、悲鳴も悲痛、もなくただ呟いた。

「こりゃ、先ほど自動車に轢かれた、少年、じゃないか。まったく、歩道の上に倒れているなんて気付かなかったよ」

 ・・・・・・。

 彼は笑っていた。

 俺は少年の背中に乗っている、彼、を撮った。

「・・・ま、マジか」

 悲痛を上げた俺はネットに写真を晒した。

 コメント数が多数届く。

 悲惨なコメントばかり。

 そんな、ネットの世界、を知らない。

 彼は。

 笑っている。

「この世は、憎悪、で埋め尽くされている。しかし。ニンゲンは止める術を知らない。まったく。あーあ。まったくもって。ニンゲンはロクでもない生物である」

 笑いながら。

 僕は悲痛を上げた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 小刻みに移り変わる視点と、淡々とした語り口が、独特の狂気を演出してますね。 最初は、ちょっと情景がわかりづらかったんですが、ちがう視点を読んで理解できました。 ただよう異常性に、じわりとくる…
[一言] 様々な視点の世界観があり、とてもホラーの中でも読んでて楽しめる作品でした! また悲痛をここまで表現できる恐ろしさにも見事ととしか言い様がありません(*^^*) またの作品も期待してます!…
[一言] 愛理修です。 SF以外は読ませてもらいました。 みんな危ない系ですね。平山夢明さんみたいのがお好きなのかなと思いました。 読んだ中では、日常からの狂気の摘出ということで、これが一番しっく…
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