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6.Give ‘Em Hell, Kid ~点取り虫のサンバ~

 ども、お久しぶりです~! 第六話がはじまりますよ~! このお話から、学園ものには欠かせない要素、生徒会が登場します! さて、どんな人々なのか、それは読んでからのお楽しみ。

 では、召し上がれ~

「ふわぁ……おふぁよぉ」雨田が眠気眼でリビングまで降りてくる。そのまま台所へ向かい、冷蔵庫を開け、そこからブラック・マタドールを取り出し、一気に飲み下す。「あぁ! 生き返った!」と、空き缶をゴミ箱へ捨てる。リビングへ目をやると、そこにはコーヒーを啜りながら新聞に目をやる密山の姿があった。「くつろぎすぎだ、お前は」

「お、おはようございます」顔面を青くした犲河が降りてくる。頭をポリポリと掻きながら洗面所へ向かい、顔を洗う。リビングへ向かい、椅子に腰かける。「おはようございます……って、うわ!!」密山と目が合い、後退する。「なんであんたがここに! この、この!」

「やぁおはよう。いい夢見れたかな? つ・ば・き・ちゃん♪」と、美味そうにコーヒーを啜る。「ん~、朝のアイリッシュ・コーヒーはいいねぇ」

「ってことは、あの夢は……あんたのせいか!!」

「あの夢? あの夢って?」不思議そうに雨田が尋ねると、犲河は顔を真っ赤にして「知らない!!」と、真っ赤な顔を隠した。事の真相は単純。例の本(百合べっぴん夏の増刊号)を彼女の枕の下に、密山が滑り込ませただけである。おかげで彼女は百合畑な夢を見れたとさ。

「みなさん、おはようございます」母親が台所から出てくる。「朝飯はハムエッグです! なにかける?」雨田はそれにマヨネーズを、犲河は醤油を、密山は胡椒をかけた。

「なんでアンタまで食べるのよ!」

「言っておくが、ツバキちゃんより俺の方がこいつの家に通ってる期間、長いんだぜ」

「なんだとぉう!」悔しそうな表情を見せる犲河。

「黙って食えよ、お前ら……」



 早朝の夢法学園高等学校。ここには一番で登校する者たちがいた。まず、教師より早く登校するのは風紀委員だった。彼らはある人たちを出迎え、本日の学園に異常がないかを知らせる役目が朝の最初の業務だった。その為、夜の警備員や泊まり込みの用務員たちに現在の状況を聞き、メモし、備える。そして、彼らを出迎える。

 そう、生徒会である。彼らは事実上、この学園を仕切る、否、支配している存在だった。その為、威厳を保つため遅刻は許されなかった。

 では、なぜ風紀委員が彼らを出迎えるのか? それは彼らが生徒会候補生だからである。生徒会には誰でも簡単に入れるわけではなかった。厳しい審査をパスし、中間または期末テストの点数が平均85以上いかないと入ることができなかった。この条件をクリアできなかったもの達の殆どが風紀委員に入り、学園の風紀を生徒会合同の元取り締まっていた。

 時にして6時半。生徒会役員たちが生徒会室に集まり始める。その中で、風紀よりも早くにたどり着き、すでに椅子や机の準備を終えていたものがいた。

 彼が生徒会長の『破嶋範次』(ハシマ・バンジ)である。彼はすでに生徒会長専用の大きなデスクにつき、生徒会書記長の『柳零』(ヤナギ・レイ)のメモ帳に書き記された情報を彼女と共に相談しながら目を通していた。

「困るな、中間テストに向けての集団カンニングか……」破嶋は威厳の塊のような顔から鉛の様な重たい声を出した。「調査結果見る限り、こりゃ校外で計画、準備が進んでいるな……」と、太い眉を曲げる。「どうするか……」

 インテリア・メガネを上げながら柳がメモ帳片手に口を開く。「そうですね……我らは警戒されておりますから、先月の入学式後に仕入れた1年生のチクり屋を数人潜り込ませましょうか……確固たる証拠を押さえたのちに我々が動く……と」

「ちょっと待ってください!」小耳に挟んだ風紀委員長の軍宗が口をはさむ。「そういった場にこそ、我々風紀が!!」

「役立たずが口を挟まないで下さい」機械的な発音で柳が顔もむけずに言い放つ。「たった数人のバカも取り締まれずに何が風紀ですか。だから平均点68なんです」

すると軍宗は肩を竦めた。「63です……」

「あら、それでよく委員長ができますね」年間平均点92の柳が口調をまったく変えずに言い放つ。彼女の言葉は、一つひとつに氷が詰まっているかのように冷たかった。

「こらこら、嫌味は慎め」平均点89の破嶋が諌める。「そうだな、風紀さんには学校内のカンニング・ペーパー取り締まりをやってもらおう。テストの前日には持ち込まれるだろうし。それに情報源である職員室の警備、並びに不正教員の取り締まりもお願いする」と、怖い顔に似合わない笑顔を覗かせる。

「は! ありがとうございます!!」と、敬礼する。「あの、会長様……その、相談が」

そこへ柳が割って入る。「役立たずが何か? アポは取ったの?」

「これこれ……で? 何? あ、会長様はやめてくれ、恥ずかしい。それに同級生なんだから、そんなにへりくだらなくてもいい」と、笑顔を見せる。

「その、厄介な違反者がおりまして……我々も手を焼いてまして……」

「でしょうね、役立たず」いちいち柳がちょっかいを出すので、さすがの軍宗も目を尖らせた。

「コラ! そんなんだから役員たちが君見て怯えるんだ」

「……ほっといて下さい。業務中は嫌われる程、真剣でなければ」

「まぁ君のギャップの激しさは入学してから知ってるよ……で? 続きは?」

「……生徒会のお力をお借りたいのです」

破嶋はしばらく唸り、指を口元に置いた。その間、柳はまるでゴミでも見るかのような目つきで彼女を眺めた。「ふむ、その厄介者の名前は?」



 昼食時になり、授業からしばし解放される生徒たちが一斉に弁当箱のふたを開け、購買へと走った。「あの、ありがとう。雨田くん。お母様にも言っておいてね、お弁当まで頂いちゃって……」と、弁当箱を開きながら犲河がお辞儀する。

「おせっかいな母さんだろ?」と、自分は道中コンビニで買ったパンに齧りつく。

「それが幸せってやつよ、忘れちゃだめよん」と、から揚げを一口で食べる。「美味しい……この味は冷凍食品じゃ出せない!」

「揚げ物得意なんだよね、母さん」と、彼女のホクホクした笑顔を見て少しだけ照れたように笑う。「それにしても密山のやつ遅いな……ポテトはまだかよ!」

 犲河も首を傾げながら紅雀の席に目をやる。「あれ? 紅雀さんがいないなぁ……食堂かな?」

 そんな教室に向かって、2人の男子生徒が足音を立てて迫っていた。片方はロングヘアーで高身長の美青年だった。周りの女子達は彼を一目見ただけでため息を吐き、頬を赤くした。もう片方も美青年といえば美青年だが、眉は常に谷を作り、厳しい眼差しをまるで威嚇するように周りに振りまいていた。この青年は周りから恐れられているようで、誰も目を合わせようとしなかった。

 ロンゲの美青年は3年の『杜ノ上閃一』(モリノガミ・センイチ)、もう片方は2年の『堅菱理』(ケンビシ・トオル)といった。2人とも生徒会であり、その中でもやり手で通っている。ちなみに堅菱は今年度の生徒会長候補である。

「折角のお昼だってのに……ねぇ理君」杜ノ上がダルそうな表情で漏らす。

「先輩、我々に時間はありません。いつだって遅すぎる。今、いま行動しなければ意味がありません。それが我々でしょう!」

「苗字の通りに堅いよね、家訓か何か?」

「……半分は」と、話している間に1-B教室の前に付く。戸に手を掛けず、自動ドアの様に戸が開く。ピシャンという大きな音が教室内をしん…とさせる。

「ここに雨田龍法、ならび密山瞭、犲河椿そして紅雀玄はいるか!」堅菱が教室中に響く声を出しながら雨田の目を見つける。「また貴様だな……雨田龍法」

 不思議そうな表情で犲河が彼ら2人と雨田を交互に見る。「知り合い?」

「知りたくもなかったけどな、よぉぉぉく知ってるよ」と、顔を険しくさせながら指の骨を鳴らし、机を蹴り上げ、堅菱に殴りかかる。「俺の魂を返せ!!」

【雨田龍法VS堅菱理】

 すると、不思議なことに、蹴り上げた机と飛びかかった雨田は宙に浮いたまま、その場で止まっていた。「食事時の行儀が悪いな……悪い脚はこの足かな?」堅菱が手をかざすと、雨田の利き足が不自然な方向へ曲がっていく。

「くっ! またかクソ!」痛みをこらえながらも宙でもがく雨田。それを不思議そうに眺める犲河。だが、教室にいる他の生徒たちは知っていた。これから何が起こるのかを。

「ん~どうやら密山君と紅雀さんはいないみたいね」と、杜ノ上が教室を見回す。「ってことで僕の相手は、犲河さんかな? ちょっと付き合ってくれる?」と、彼女に歩み寄り、手をかざす。

【座標計算瞬間移動】

「え? 急に何?」と、言う間に自分が校庭のど真ん中に立っている事を知り、さらに驚いた表情を作る。「え? え? どういうこと?」

「さて、付き合ってよ。君の大好きな喧嘩だ」と、優しげな表情を作って見せる。

【犲河椿VS杜ノ上閃一】

「ワケ分かんないけど……ラッキぃ」



「この野郎ぅ!!」不可思議な拘束を解かれた瞬間、雨田は牙を剥きだしながら、生徒会役員、堅菱に向かって構えた。「双頭龍……」

【コバルト・アンド・ヴォルケーノ・ツインブレス】と、両腕から紅蒼の光線を出すが……。

【フィジックス・アーツ 絶対防御壁】手をかざした瞬間、薄緑色のクリアな壁が彼の目の前に現れ、雨田の攻撃を弾いた。さらに【壁展開・六面檻】と、今度は檻が雨田の周りに現れ、彼を閉じ込める。【ウェイトレス・ホバー】と、彼の入った檻をふわりと持ち上げ、それを廊下の外へと投げ出し、壁を突き破って校舎裏へと吹き飛ばす。そして、宙で急停止させ、地面に叩き付ける。轟音と共に土埃が立上る。その頭上を堅菱は腕を組みながら宙に浮いていた。

「今日はお灸を据える、どころではないぞ……」と、険しい表情をいっそう厳しくさせる。そんな彼に向って再び蒼い炎が飛び、彼はそれを弾いた。

「俺のセリフだよ!」と、付いた土埃も払わずに跳び上がる。

「サル以下が……」と、再び【六面檻】を展開させ、彼を捕縛、そのままバスケットボールよろしく幾度も地面に叩き付けた。堅菱が地面に足をつける頃には、雨田は傷だらけの泥まみれになり、あっという間に立ち上がるので精いっぱいなほど体力が削れた。

「くそ……前と同じだ……」

「同じでは済まさん」と、手をかざす。

【フィジックス・アーツ 罪人絡ノ竜巻檻】雨田の周りを強風が吹き荒れ、いつしか天にも昇る巨大な竜巻が出来上がる。その中から脱出しようと雨田は試みたが、まるでミキサーの中心にいるように、下手に身動きが取れない状態だった。「くそ、どうすりゃぁ」

「とどめ」と、指先から薄緑のエネルギーの塊を放ち、竜巻に入れる。

【碧玉色ノ轟爆破】塊が入った途端、塊が竜巻の強風で跳弾し、それが雨田に連続で当たる形となった。避けようのないその塊は、少しずつ大きくなり、やがて校舎裏が焼け野原になるほどの大爆発を起こした。

「わかっただろう? この学園で学生の本職を全うしたければ、風紀を乱さずに謹んで勉学に勤しむべし……だ。明日までに反省文を原稿用紙6枚以上書いて生徒会室に……」と、言う間に目の前が紅色に包まれ、急いで弾く。「なに?」

「なに勝ち誇っているんだ? ばぁか!」雨田はボロボロになりながら、血反吐を飲み込み、堅菱を睨み続けていた。

「……これ以上やると、死ぬぞ? お前程度では……」と、右腕を鈍く光らせる。



 その頃、校庭では打って変わって、地味な攻防戦が繰り広げられていた。と、言うよりいまだに戦いらしい殴り合いは始まっていなかった。いつもなら犲河がいの一番に殴ってかかるが、本日は違った。 なんと、彼女は動けないでいた。しかも、自らの意志で相手を殴らずにいた。

「どうしたのかな?」と、不敵に微笑む杜ノ上。彼を殴れない理由は、決して美男子だからではない。犲河の獣じみた、『殺気を感じる力』が働き、相手の殺気を読み取ったからである。この相手、杜ノ上閃一からは尋常ではない殺気が放たれていた。その気に当てられ、彼女は数回死んだ自分を目の当たりにし、肝を氷の様に冷やしていた。

 大玉の汗をグラウンドに垂らし、息を荒げる犲河。「……くっ」戦力が違いすぎる相手を目の当たりにし、転校して来て初めて逃げ出したい気分に陥っていた。だが、それを彼女が許さなかった。彼女のポリシーとして『情けない姿は見せない、逃げない』と心に決めていた。

「ばぁ」と、急に間合いの外にいたはずの杜ノ上が眼前に現れ、おちゃめな表情を作る。

 その顔をみるや犲河は「ひゃぁ!!」と、膝を崩し、腰を抜かした。

「ははは、可愛いね。まさに初々しい1年生だ」

「え! う? そりゃどうも……っと!」と、起き上りざまに蹴りを放とうとしたが、『真っ二つにされた自分の利き足』というビジョンが映し出され、急いで間合いから離れて、再び構えた。「あ、あなた、何か刃物でも持ってるの?」と、おびえた口調で尋ねる。

「お、鋭い! って今の面白い?」おちゃめに笑って見せ、ポケットから竹刀を取り出す。

犲河は目を真ん丸にして指をさした。「え? 何でそんなトコから?!」

「剣道部の部長たる者、常日頃から持っておかなきゃね」

「いやいやいや……」と、苦々しい表情をしながら、その竹刀を見る。一見ただの古びた竹刀だが、そこからただならぬ鋭さを感じ、更にそれを持った彼から、先ほどより強い殺気を感じた。

「しかし、折角の喧嘩だよ? 君の趣味だって聞いたのになぁ……そっか、竹刀があったらフェアじゃないよね?」と、竹刀をポッケに仕舞う。「どう? あぁそういえば僕は3年、君は1年だったね。ハンデがなきゃ」と、その場にワザとらしく体育座りする。「どう? これで初撃の戦力は大幅減っただろう?」わざとらしく首を傾げ、笑う。

 それを黙って聞いている犲河ではなかった。舐められたことにより、彼女の警戒心を怒りがぶち壊し、すぐさま彼に蹴りかかった。

【犀型・突撃角・改】と、絶妙なタイミングで彼の整った顔面に膝蹴りを当てに向かう。が、その瞬間、彼は残像を残して眼前から消え去った。

【閃竹刀・獣薙ぎ】彼女の背後、間合いの外で竹刀をポケットに仕舞った瞬間、犲河の口から血が垂れ、それを合図に胴から鮮血が噴水のように飛び出た。「あ゛……がっ」傷を押さえ、踏みとどまり、振り返る。【無手刀・賽の目斬り】と、掌から無数の斬撃をカマイタチの様に飛ばし、彼女の全身を斬り刻む。血霧で彼女自身が見えなくなり、それが収まると同時に犲河は物も言わず、グラウンドに土埃を巻き上がらせながら倒れた。

「わかる? 居合だよ居合。静から動へ、相手の威に合わせてなんとやらってね」そのセリフには何も返さず、血溜りに沈む犲河。呼吸をしているのか否か、ピクリとも動かなかった。「ま、後で友達に聞いてよ。このままこの学園に居たければ、反省文を書いてこいってね」と、その場から立ち去ろうとする。

「待てよ……」よろよろと立ち上がり、目に入った血を拭き取る。「は、初めてだよ、こんな喧嘩……もっとやろうよ、ねぇ……」未だに威を放つ瞳の奥の燃えたぎる殺気。

 その気を感じ取った杜ノ上は薄ら笑いを浮かべた。「次は、腕持ってくよ。いいね?」

「じゃあ、あたしは命、貰うよ……」と、低姿勢に構える。

 すると、彼女らの前に突如、何かが不時着し、砂埃が舞った。そこには堅菱に踏みつけられた雨田がいた。「くそぉ! まだまだ!」

「いい加減に懲りろ。さもないと、退学通知を出すことになるぞ?」と、碧色の玉を数発放ち、連続で雨田にぶつける。

「ぐっくそぉ! ……あ? 犲河さん?」と、血を被ったようになった犲河に目をやる。

「酷い格好だよ?」

「お前こそ」と、プッと笑いだす。「なぁ、勝てた?」

「全っ然勝てる気しない……」

 相手の隙を見て雨田は彼女の隣へ向かった。「俺もだよ」と、血唾を吐き出す。「だからさぁ、共闘ってのはどうだ?」

「いいねそれ、一矢報いたいし。やろ」と、雨田の手を握る。「共闘」

「おい、1年。お前らが共闘なら、こっちも共闘になるぞ」堅菱が服に付いた埃を叩く。

「勝ち目ゼロ以下、マイナス10くらいまで落ちるよ?」杜ノ上の笑みは止まらなかった。ハエをいたぶる猫の様な残酷さを見え隠れさせながら構える。

「やってみろ! このクソッタレ!!」2人が同時に駆け出すと同時に、生徒会2人も動き出す。

 すると、空から何者かが一筋の斬撃を飛ばした。「その喧嘩待った!!」セリフの次に衝撃波がグラウンドに着弾し、巨大な斬撃痕を残す。そして、攻撃を放った者が着地する。

「……武刀」堅菱が相手を忌々しそうに睨み付ける。その者は2年の『武刀漸』(ムトウ・ススム)といった。彼も生徒会役員であり、杜ノ上と同じ剣道部だった。

 武刀は堅菱たちを睨み付けた。「これは生徒会の権力を掲げたただの苛めではないか? 見苦しいぞ!」と、一喝。

「でも、非は彼らにあるんだけど?」杜ノ上がワザとらしく肩を上げ下げする。

「そういう口実を利用しての苛めか、と言っている」特に杜ノ上を激しく睨み付ける武刀。そして、自分の持っている素振り用の鉛入り竹刀を向ける。「暴れたいなら体育館でお相手します、先輩」

「おぉ怖い。こりゃ堅菱君といい勝負だ」

「では、こいつらの処断はどうする気だ? 不問は認めんぞ?」腕を組みながら不服そうに口を尖らす堅菱。

「俺から厳しく言って聞かせるし、反省文も書かせる。さ、2人は昼食にでも向かったらどうですか?」と、校舎の大時計を指す。

「おぉ、堅菱くん大変だ! あと3分で終わっちゃう!」

「カップヌードルも食べられそうにないな……」と、落ち着き払った態度でその場を後にした。去り際、杜ノ上がボソリと「覚えてな、ね」と、呟きその場から消えた。

 しばらく武刀は、険しい表情で目の前の1年生2人を睨んでいたが、気配が消えたのを合図に表情が一気に緩む。「ふぅ~怖かった……龍法ぃ! あの2人を止める俺の身になれよぉ!」

「すんませんセンパイ……生徒会にセンパイがいて助かった……」

そこで犲河が意外そうな目を向けた。「知り合い?」

「あぁ、俺の小学校の頃からの先輩で、喧嘩の師匠ですよ。ね?」

「ね? じゃねぇよ! まったく、これ以上お前の事は庇い切れないぞ! 前回ン時も生徒会長に俺が頭ぁ下げたんだからな!! それから、ほら!」と、携帯の様な何かを雨田に手渡す。

「はわぁ! 俺の魂!! ありがとうセンパイ! このご恩は」

「忘れたら殺す。いいな? 今日中に反省文書けよ。あとは俺が処理すっから」

 雨田は背を縮ませ「はい……すんません」と、頭を下げた。

「た、魂ってそれ?」犲河は目を丸くして、その魂とやらを見る。それは携帯ゲーム機だった。

「こいつ、校内でそれいじってるところを、よりによってアノ堅菱に見つかってな、没収されたんだ……っておい、コラ! 早速起動させんなよ!!」

「あ゛! データ上書きされてる! 誰だよ、いじったのぉぉぉ!!」

それを聞いた犲河は、呆れ返ったような表情をしながら踵を返した。「あたし、先に保健室行くね」



 HRの後、傷だらけの彼らに密山と紅雀が歩み寄った。「大丈夫かよ?」2人ともミイラに負けないくらい包帯だらけになり、犲河に至ってはエジプト王顔負けな程にグルグル巻きだった。

「あの保険医、絶対ふざけてる。消毒液塗るときもケタケタ笑って……」犲河がボヤくと雨田が肘で脇を小突く。

「お前、悲鳴上げすぎなんだよ。たかがヨードチンキくらいで……」

「……生徒会に散々やられたんだってな」紅雀が申し訳なさそうな表情を覗かせる。「私も、その場にいるべきだったか?」

「別に気にしないでよ、反省文で済むんだしさ」包帯のせいで見えないが、笑顔らしき皺を見せる。

「いや済ませられないね」雨田が机をたたく。「負けっぱなしじゃ終われないだろ! 何とかしてあいつらをギャフンと言わせたい……」

「言わせる方法、あるぜ」密山がしたり顔を作り、彼らの中央に立ち、ワザと咳払いをする。「その方法は……時期が来たら言うよ」回りの3人が滑りそうに傾く。

「今言えよ」雨田が噛みつくように立ち上がると、その目前に指先を置く密山。「この作戦はなかなか大胆にして繊細なんだ。途中でお前に計画をおじゃんにされたくないんだ。目安として時期は……中間テストが終わった後だ。その時、説明してやんよ」

 雨田は膨れ面を作りながら口を尖らせた。「本当は何も考えてないんだろ?」

「お前じゃあるまいし、考えてるぜ! 失礼な!」

「ま、おかげで中間テストに集中できるな」紅雀は自分の席に戻りながらため息を吐いた。

「よし、高校生活初めての中間だ! 張り切って行くぞぅ!」雨田が声を高らかに上げると、背後から武刀が気配無く現れる。

「反省文書けたかよ、コラ」と、彼の頬を竹刀で小突いた。

「あ、あと2枚……」

「んで、回りのおめぇらは書いたのかよ、ん?」

「は~い」雨田以外の3人が声を揃えて原稿用紙の束を掲げる。

「おい! いつ書いたんだよ、お前ら!!」



 真っ暗闇の部屋で、ある者がメガネのレンズを怪しく光らせる。「まただ。また、支配から逃れた者が増えた……早急にあいつを消さねば……だが、その前に」

「あの2年を消すのが先決です。あの1年の処分は後ほどでも余裕があります」女性の透き通った声が部屋に小さく反響する。

「あぁ、ヤツは計画通りに動いているのか?」

「もちろん、従順な犬ですよ。あいつは」

「そうか……計画通りいけば、この学園、否この街は、我が手に……ククククク」不気味に笑うその者は、肩を震わせ、高らかに声を上げた。それに合わせるかのように、女も上品に笑った。


 ご愛読ありがとうございます!! 一気にキャラが増え、バトルもあって賑やかな回でしたね。書いてて疲れましたよ、この話。

 では恒例の解説タイム!

 まず、サブタイはマイケミカルロマンスから拝借しました。この曲はバトルにはぴったりな激しく荒々しい曲なので、ピッタリかと。で、邦題……今回は生徒会初登場回で、私の世界観では生徒会はエリート集団つまり点取り虫なわけで、このタイトルにしました。ま、現実の生徒会はこんなんじゃありませんがね……我が母校もボンクラばっかだったし……

 次にキャラ解説!

 主人公、雨田くんのライバルキャラ堅菱理君。彼は理系の完璧主義者で、家柄上、自他にとても厳しい子です。技は、彼の得意科目物理から、テキトーにカタカナと漢字を織り交ぜております。物理ってとても難しいから、それを極める彼はとても強いです、はい。雨田君は彼に勝てるのでしょうか?

 もう1人紹介します。重要なポジション、生徒会長の破嶋範次! 彼は……実はこの話では出番も少なく、戦闘シーンの一切ない地味なキャラです……生徒会長なのに……ですが、裏設定が非常に豊富です。まず得意科目で彼の操る技は『生物』です。生き物の動作、呼吸などを読み取り、それに合わせて打突! というキャラで、なんと学園最強なのです!! でも、出番なし。何故かって? それは……秘密!

 密山「なんも考えてないだろ? お前」

 失礼な! 解説終了~ 次回お会いしましょう!!

 密山「てか、いい加減俺を紹介しろ~!!」

 やだ♪

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