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14.Whispers In The Dark ~独りじゃない~

 お越しいただきありがとうございます! 夏休みスペシャル編最終話です! 

 さて、雨田達はあの化け物に勝てるのか?!

 紅雀は立ち直る事が出来るのか?!

 ではスタート!!

「くそ! 痛ぇぇぇぇぇ!! 冗談じゃない!」瓦礫の中から救い出された雨田は、体中の傷を押さえ、唸った。「あいつは?」頭からの出血に気付き、目を剥く。「まじか」

 彼の傷を心配しながらも質問に答えようとする犲河。「……あの野郎は、きっと大きな音のする場所に……」と、口にした瞬間、遠くから乾いた音が数回鳴り響いた。まるでよく乾いた紙鉄砲でも鳴らしたかのような、気持ちのいい音だった。

「まさか、銃声じゃないよな?」雨田が己の耳を疑う。

「まっさかぁ、ここ日本だよ?」と、互いの顔を見合わせて笑った瞬間、今度は強大な爆音、悲鳴、落石でも起きたかのような轟音が鳴り響き、音の方向で黒い煙が上がった。「……日本、だよね? ここ」数百メートル先のものと思われるタイヤが彼女らの目の前まで飛んできて、転がる。

「……どうしよ?」2人は声を揃えながらも立ち上がり、騒ぎの方角へ駆けた。



「夢だ! 夢なら覚めろよ、畜生!!」目の前で起きた惨劇に目を疑い、頭を押さえる。彼の目の前で、天の助けと思えた警官隊(パトカー6台)が壊滅したのだった。発泡許可が下りる前に半数を潰され、もう半数は1発目の空砲を撃ち終える間もなく全滅。現場の指揮をとっていた刑事も裏拳一発で潰された。その間、およそ12秒。

 体中から蒸気を噴き散らし、ゲラゲラと笑う菜門寺。「平和ボケした県警はこれだからなぁ……」と、隠れていた密山を見つけ、ニタリと笑う。「さぁ、続けよう」

「やだぃ!!」背を向けて逃げようとした瞬間、回り込まれる。「うわ!」

「本気で走ればこんなもんだぜ」と、密山の髪をワシっと掴み持ち上げる。「さぁ、どう殺されたい?」彼の頭ほど大きい拳を引き、あらゆる個所に狙いを定める。

「……せめて楽に、なんてな!! 対戦車ロケット弾装填!」と、右手を思い切り引く。

【RPG-7】菜門寺の顔面に極限まで固めた拳をぶち当てる。うまく衝撃を乗せた拳から相手の頭の内部へと移動させ、頭骨内で衝撃波を跳弾させ、炸裂させた……はずだった。だが、密山のはなった衝撃は菜門寺の顔表面ですでに殺されていた。

「し、痺れるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」ビクともせず、自分の放ったパンチの威力がすべて返り、拳が激しく震えた。あまりの絶望的な状況に笑いだす密山。「ははは、……なぁ、今のはナシ! 冗談だからさ……せめて話し合いで解決できないかな?」

 菜門寺はニヤリと笑い、密山の顔面に膝蹴りを喰らわせ、地面にたたき伏せて下段突きを放った。「ぐぁ!!」

「面白い奴だな、お前ぇ」

【肉叩き】大足を思い切り上げ、まるで蟻をいたぶるように何度も踏みつぶす。数回ほど小枝が折れるような音が響き、その度に密山を中心に血だまりが広がった。「はは、このままひき肉にしてやろう!」

【1.21ジゴワット・キャノン!!】菜門寺の背後から雨田が自慢の必殺技を放つ。「どうだ!」

「効いてるよ! ほら、動かない!!」犲河が雨田の影から菜門寺の様子を伺う。

「おい」背の皮だけ浅黒くなった菜門寺が振り返る。「痺れたじゃねぇか」殺気に満ちた眼差しを雨田達に向け、一瞬で彼の鼻先まで近づく。「やればできるじゃねぇかよ」

「くっ 紫電竜!」

【サウザンド・サンダー・ネイル】雨田は電撃を纏った両拳で菜門寺の体、顔面を殴りつけた。「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

【犀型・突撃角・極!!!】助走をつけた犲河が突撃する。すると、雨田は攻撃を止めてしゃがみ込み、彼女の為道を開けた。すると彼女は彼の背を踏み台にし、肘と膝を重ね、菜門寺に全力の一撃を叩き付けた。「どうだ!!」技が直撃すると、菜門寺は少々後ずさりし、苦しそうに咳をした。だが、倒れる様子は見せず、不気味な微笑みを覗かせる。

「ふふ、それが精いっぱいみたいだな」不敵に笑い、両手を使って2人の首を掴む。

「うわ!」「ぐぅ!!」

 菜門寺は2人を地面に叩き付け、足の先から胸のあたりまで地面にめり込ませた。「な、くそ!!」「抜けない!!」2人は脱出しようともが、次の瞬間に菜門寺は2人の顎をアッパーで打ち抜いた。天高く舞い上がった2人と共に跳び上がった菜門寺は空で彼らの顔面に肘を入れ、地面にたたき落した。〆に2人の鳩尾に着地する。

【オーバーキル・フルコース!!!】

「ぐぎゃ!」「ごぉあ!!」2人そろって白目を剥き、吐血しながら昏倒する。

「代わりにお前らをひき肉にしてやろう」なんと菜門寺は3階建てビルを両手で掴み、支柱ごと引っこ抜いて頭高く持ち上げ、2人目掛けて叩き付けた。

 だが、その寸前に飛び入った武刀が2人を抱え上げ、安全と思われる場所に置く。「マジで殺す気かよ!」殺意の籠った眼差しを向ける。

「俺は言葉には責任を持つタイプだ」

「そうは見えないな!」と、武刀は木刀片手に駆け出した。



「密山?」紅雀が、倒れた彼の傍らに立ち、揺さぶり起こす。

「くっ……死んでなかったか、俺」血の混じった咳をしながら傷を押さえる。

「逃げようよ、なぁ……勝てっこない!!」

密山は見苦しそうに紅雀の顔を見た。もはや以前の彼女の面影すら感じ取れず、軽蔑すら覚る。「立ち向かわなきゃ、あいつはずっと暴れますよ」震える足でなんとか立ち上がり、ヨロめく。「……あんたは逃げればいい。だが、これから一生そうやって生きていくことになる。後悔するなよ?」と、歩き出した。「あいつは、俺らが倒す」

 紅雀は悔しそうに表情を歪ませた「……私だって、私だって戦いたいさ!!! でも、でも……力を奪われて……」弱々しく震える両手を握り、悔しそうに歯を剥きだす。

「そんなのはただの言い訳に過ぎない! 人間、誰だって始めは弱いし、初心に帰って立ち向かう必要だって、ある」最後は自分に言い聞かせるように、密山は駆けだした。

「あの野郎……(あいつの言うことは正しいぞ……)黙れ!」頭を抱え、地面に打ち付ける。「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れだまれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」



「くそ! 堅い筋肉なくせに、なんて柔軟性だ! こんな相手、見た事ない!!」武刀は悔しそうに後退し、息を整えた。「俺もまだまだ浅いな……」

「当たり前だ、誰も俺には勝てん!!!」双腕を突き出し、武刀を防御ごと吹き飛ばす。彼はそのまま背後のガソリンスタンドへ突っ込んだ。「死ね!」近場の車を掴み、彼が飛んでいった場所へ投げ込む。車から放たれた衝撃、火花がガソリンに引火し、たちまち大爆発を起こす。周囲に停まっていた車に引火し、地響きが轟くほどの連鎖爆発を起こし、辺りに火の雨が降り注いだ。「俺は最強だ! 燃え尽きるがいい!!!」

 爆音に起こされる雨田。「く、また気絶してたか……この野郎がぁ!!」起き上りざまに拳を振り上げるが、すぐさま反応した菜門寺にボディを貫かれる。「ぐぁ!!」酷使された体の傷口から血が噴き出る。

「そろそろ終わるか? 飽きてきたしなぁ……」

「お前が倒れるまで飽きるかよ!!!」密山が後頭部に蹴りを入れた。だが、その着弾に合わせ菜門寺は彼の足を掴み、地面に思い切り叩き付けた。「ぐぁ!!」彼の傷が音を立てて広がる。「くそ! ダメか……」

「そろそろ、いい悲鳴を聞かせろ!」と、踵で密山の鎖骨を踏みつける。生木が折れる音と共に彼は甲高い声で喚き散らした。「いい声だな」いたぶる様に踵をグリグリ回転させる。

「やめてくれ! くそ、頼む! やめろ!」目に涙を溜めて必死で喚く密山。健闘むなしく、ついに肩の骨が『ゴキリ』という音と共にイカれる。「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「このゴリラ野郎!!!」雨田が間合いに入り込み、痛みを堪えて技を出す姿勢になる。が、菜門寺は彼の左手を掴んでニヤリと笑った。

「さあ、お前はどんなかな?」と、彼の左腕に膝を入れ、不自然に折り曲げる。

「ぐぎっ! が! あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」見事にへし折れた自分の腕を見てショックのあまりに膝を落とす。

「聞こえるぞ、お前らの心が折れる音が……さぁ、折れろ! 折れろ!!」と、左足で密山の肩を踏み、右足で雨田の左手を踏みつける。「折れろぉぉぉぉぉ!!!」

「もう、やめて!!」ふらふらになった犲河が菜門寺の正面に立つ。「もう、やめてよ……いい加減、この町からでていってよぉ!!!」目に涙を溜めながら背後に獣気を漂わせて構える。

「いや、出て行く前に、この町は真っ平になる」と、踏みつけていた2人を蹴りころがし、犲河の鼻先まで近づく。「お前はどんなかな?」

「に、逃げろ、犲河さん……」「こ、殺されるぞ、ツバキ……逃げてくれ!」2人は痛みに転がりながらも菜門寺を止めようと、這いずり寄った。

「あたしは……うぅ……あたしは!!!」彼女は腕を振り上げ、眼前の憎き化け物に向かってひとり、突っ込んだ。

「バカが」一瞬で彼女の鼻先に近づき、腕を広げる。



「……もう、終わりだ……」紅雀は泣きながら崩れゆく町中を歩いていた。雨田達の悲鳴を聞き、震える足でその方角へ向かう。「やめろ、そっちへは行きたくない! (このいくじなしが!! せっかく手に入れた友人を失っていいのか!!)やだ! (じゃあ守れよ! 力がなくたって、守れよ!!)……無理だよ……」立ち止まり、また涙を流す。

 その先から、犲河の悲鳴が轟いた。



「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! いや! いやっ! ぐばぁ!」犲河は菜門寺に捕まり、抱き寄せられ、さば折りを喰らい、もがいていた。

「お前には一番苦しんで貰うぞ。ハルカの一番の友達、なんだろ?」と、締め上げる力を更に強める。顔面に血の塊が何度となく降り注ぎ、その度、引き攣る様な笑みを零した。

「離せ! 離してよ! あ! あぁ!」次の瞬間、連続して肋骨が砕ける。「ッッッッカパッ」白目を剥き、仰け反る犲河。それでも締め付けの力は緩むことなく、彼女を圧迫し続けた。口から大量の血がゴポゴポと溢れ出る。

「鼓動が弱くなってきてるな……もうひと締めいくか!」と、さらに腕に力を入れる。犲河の折れた肋骨が各内臓器官に食い込み、彼女の呼吸を妨げた。

「た……た、た……す、け……か……」

【玄武甲・大白熱火球拳!!!!!】紅雀が勢いよく飛び出し、菜門寺の背中を焼き尽くす。珍しく怯み、犲河を解放した。「グワ!!! あちぃじゃねぇか!!!」紅雀を睨み付ける菜門寺。

「わかった……私も戦う。たとえ殺されても構わない!」構え、菜門寺を睨み返す。「撤回するよ、お前だけは死んでも許さない!!!」

【紅雀玄VS菜門寺剛】

「ほぉ……」一歩踏み出る菜門寺。「絞りカスの分際で……よく吠えるな」次の瞬間、彼は紅雀の顔面に巨大な拳をぶつけていた。「嬲ってやるよ、ハルカぁぁぁぁぁぁ」



「おい、どうするんだよ雨田ぁ……」砕かれた肩を押さえ、苦しそうに問いかける密山。

「い、息してないぞ……お、おい! 呼吸してくれよ!!」取り乱し、目に涙を溜めながら犲河を揺り動かす雨田。すると、密山が彼を止めた。

「下手に動かすな! 本当に死んじまう!」と、犲河の胸に耳を当てる。「弱いが、心臓は動いてる……必要なのは、人口呼吸だ!」

「え? 人工呼吸って……アレだよね?」雨田は顔を赤くし、犲河の顔を見る。

「そう……アレだ」密山も赤くさせ、喉を鳴らした。



「おいハルカ、教えてくれよ」壁に彼女を叩き付けながら問う。「力も失い、たった独りぼっちのお前が、何をできるんだ?」

「ぐ、私は……独りじゃない!!!」と、吠えるが成す術もなく彼の拳を数発くらい、血反吐を吐き散らす。「げぇ!」

「どうしたよ、あ? 痛いかよ!」転がる紅雀に追い打ちをかけるように踏みつける。「どうした? 命乞いのセリフでも考えてるのか?」

「……いいや、あんたを倒した時のセリフを……ぐぁ!」背中を踏みつけられる。「考えて……いるのさ」少しずつ地面にめり込んでいく。背骨から物騒な音が少しずつ響き、体中に激痛が走り抜ける。「あぁぁぁぁぁ!!!」

「あと少し体重を乗せれば、お前の背骨、脊髄は砕け、一生達磨で暮らすことになるぞ。それもいいなぁ。だが、殺す!!!」と、踏みつける力を強める。「さぁ、一生孤独なハルカちゃん! この世に別れをいいな!!」

「わかった……言わせて貰うよ……」彼女は最後に、息を思い切り吸い込んだ。



「ゲホ! ゴホ、ガハ! ~はぁ……」目を覚ました犲河は苦しそうに深呼吸しながら2人の顔を交互に見る。「あ~、変な夢見た。焼き鳥屋で盛り合わせ頼んだらさ、全部レバーでさ……それを喉一杯に詰めて水を飲んだと思ったらスッポンの生血でさ、もう口ン中が鉄臭いのなんの……」

「妙な走馬灯を見てんじゃないよ……」密山が背後へ親指を向ける。その先では、紅雀が菜門寺から何発も拳を貰い、壁に叩き付けられていた。「このままだと、彼女が……殺される」

「どうするんだよ?」雨田は折れた腕に有り合わせの添え木を付け、布で固定した。口の周りを拭い、犲河から目を背ける。「今の俺たちが奴に何やっても……」

「そんな事言ってたら、一生あいつに勝てな、あ痛っつぅぅぅぅぅ!!」犲河は両脇腹を押さえ、苦悶の表情を隠す。彼女のあばらは歪な形にねじ折れていた。

「この調子じゃあ……」と、頭を抱える密山。「おい、雨田……あと何撃分動ける?」

雨田は少しだけ間をおいて考え、口を開いた。「気絶していいなら2発だ」

「だったら、その2発を1発に凝縮して、俺の合図で例の電磁砲を俺に向けて撃て」と、立ち上がる。「雨田、なるべく高くジャンプして俺の背後につけ」

「おいおい、何を考えてるんだ?」

「黙って俺の言うことを聞け! いいな?」

「あぁ……わかったよ!」雨田は腕を庇いながら近場のビルの側面を昇った。

 犲河は無理やり立ち上がって密山に問う。「あたしは? 何をする?」

「……何もしなくていい……その傷じゃあ、無理だろ?」と、密山は最後の力をふり絞って高くジャンプした。彼の目先上では、菜門寺が紅雀を踏みつけ、下品に笑っていた。「くそ! このままじゃあ、彼女にまで当たる!」表情を濁らせた瞬間、意外にも紅雀から合図が飛んでくる。


「今だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


「わかった、おい雨田! 特大のを頼む!」

「後悔するなよ!!」雨田の背後に雷雲が現れ、稲妻が轟く。

【1.21ジゴワット・ダブルキャノン・コンバージェンス!!!】いきなり範囲を狭めた電磁砲を双腕から放ち、密山にぶち当てる。

「さすがに効く! これなら!! 12.7×99mmNATO弾、装填! 電磁エネルギー最大出力!!」

【ANTI-MATERIEL RAILGUN】雷を全身に纏った密山は一発の弾丸となって、菜門寺目掛けて突っ込んだ。

 その瞬間、目にも止まらぬ何かが紅雀を菜門寺の足元から救い出し、菜門寺の背中を十字に切り裂いた。

「ぐ! 味なマネを! うぉ!! なんだ!!」焦った菜門寺は両腕で密山と雨田の全力投球の蹴りを防いだ。「こいつら、まだこんな力が!!!」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ! いけぇぇぇぇぇ!!!」



「ダメだ……」ヨロヨロと立ち上がりながら犲河が呟く。「足りない……勢いが」目の前で繰り広げられる押し合いを目にして判断する。すると、正面に雨田が落ちてくる。

「あだ! いてててて……なに? あれじゃダメなの?」

「うん……だから」と、彼女は雨田の手を取り、ニッと笑った。「ダメ押しの一撃でも、どう?」

「おい、でもツバキは肋骨が……」

「タツノリだって、腕ぇ、折れてるでしょ? それに、あいつ倒せるなら、全身の骨折っても悔いはないよ」と、体から獣気のオーラが滲みだす。「いこっ」

「ツバキがそういうなら」雨田も蒼いオーラを纏う。「付き合うぜ」雨田は右手で彼女の手を取り、息を思い切り吸い込み、駆け出した。「いこう!!」

 


「温いぜ、まだまだ足元にも及ばないなぁぁ!!!」雷撃の一撃を弾き、一歩踏み込んで密山の首を掴む。

「ちくしょう!!!」

「残念だったな、イタチの最後っ屁……実に臭かった」と、裏拳で彼をすっ飛ばす。密山はその先の本屋に突っ込み、ピクリとも動かなくなった。「っち……腕の感覚が……大した威力だな。だが、俺には……」自慢げに笑おうとすると、遠くから2つの咆哮が轟く。

「うぉぉぉぉあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「りゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「な! なんだ?!?」菜門寺は、想定外な攻撃に狼狽し、防御しようと腕を……「くそ! 動かない! あの野郎……」歯茎を剥きだす。

【ブルー・プロミネンス・ファング!!!】【牙虎型・雪原王の大牙!!!】2つの強大な力が掛け合わさり、1つの莫大なエネルギーの塊が姿を現す。

【双神獣・逆鱗拳!!!!!!】強大な拳が菜門寺の腹部にめり込み、深々と沈む。やがてゴムの様な皮膚を焼き、金属の様な筋肉を突き破る。次の瞬間、彼の前にあった巨大なエネルギー拳はおろか、2人の姿が消える。

【エクスプロージョン!!!】菜門寺の背中が吹き飛び、2人が拳を突き出して飛び出す。10メートルほど飛び、華麗に着地する。

「バカな! そんな馬鹿な!!!!」血を吐き出しながらも膝を折らない菜門寺。

 すると、2人は同時に振り返り、拳をかざした。「紫電龍……」

【ライトニング・ブラスター・デストラクション!!!】

【獅子型・猛獣王の咆哮波!!!】2つの波動砲が菜門寺を飲み込む。

「ぐぉわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」エネルギー波が止むと、彼の黒目が弾け飛び、口をポカンと開け、腕をダランと下げて立ち尽くした。

 そんな彼の目の前に紅雀が姿を現す。「……いっただろ?」拳を握り、激しい蒸気を上げる。「私は、独りじゃない!!!!!」

【玄武甲・最大級・大焦熱火球拳!!!!!】風穴の空いた彼の腹に拳を突き入れ、心臓を抉るように真上にアッパーカットを決める。「これで終わりだ!!!」彼女の手には、紅色の玉が握られていた。

「っぱ……ばかな……うそだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」菜門寺の肉体がしぼみ始める。筋骨隆々だった肉体が見る影もなく細まり、やがて元の大きさに戻り、地面に倒れ動かなくなる。「……ごはっ」仕舞に血の塊を吐き出し、目を剥いて失神した。

そんな彼を見下ろす紅雀。「ありがとう……みんな」取り返した玉を自分の体に戻した。「……終わった……」安堵しながら犲河の元へ駆け寄る。「大丈夫か?」

雨田、犲河、そして遠くの密山が声を揃えた。「大丈夫なわけないだろ!!」


 

 次の日、彼らは町の総合病院に入院していた。女性部屋に雨田と密山が松葉杖を付きながら現れる。「あの金髪ゴリラ、警察に捕まったって?」と、雨田が新聞をベッドの上で開く。そこには『地元の高校生たち大手柄』の見出しと共にズタボロの4人が仲良く写っていた。「無理して注文に応えただけある。いい写真うつりだ」

「この写真のあと、医者に怒られて、すぐ担架で運ばれたけどな」密山が苦笑する。

「しかし、あれだねぇ。よく生きていたよ。まったく」犲河が紅雀を見る。「ハルカのお陰だよ……」

「いや、礼を言いたいのは……私の……」紅雀が頬を赤らめると、彼女の正面に密山が座り込む。

「なぁ紅雀さん……よく頑張ったな。見直したよ。だから……」と、彼女の耳元へ顔を近づける。「過去の罪は、これにてチャラでいいんじゃない?」

彼女は顔を顰め、俯いた。「う……(そうだ、そろそろ自分とアタイを許せ。な?)んぅ?」しばらく考え込むように暗い顔になったが、顔を上げた。「うん……」

「よし、さて諸君悪いニュースだ」密山が手を叩く。「俺たち、全治約2か月だってさ。てぇことで、俺たち4人は夏休み中、ずっと一緒だ。この病院でな」

「うぅん……海に行く予定が……」犲河は落ち込むように暗い表情を作る。

「なぁに、来年があるさ」雨田が声をかけると、犲河は笑顔を取り戻し、頷いた。「そういえばさぁ、紅雀さんが菜門寺のヤローに踏みつけられていた時、誰が助けたんだ?」唐突に口にすると、密山以外の3人が首を傾げた。

「ハルカ、顔は見てないの? その恩人の」

「あんとき一瞬、気絶してたからなぁ……」

「親切な人がいるもんだな」雨田が感心するように頷く。

「あぁ、まったくだ」密山はクスクスと笑いながら壁に寄りかかり、その向こう側にいる者に向けてノックをした。

「……なんか複雑」頭や腕に包帯を巻いた武刀は、口を苦そうに歪めながらも、楽しそうに笑った。


 夏休みスペシャル編完結! いやぁ、あの化け物によく勝てましたよ、あの四人は。

 ここまで見守っていただき、感謝でございます! まだまだ続くので、よろしくおねがいします!

 では、解説!

 まずサブタイはやはりSkilletからの曲です。どんだけ好きなんだよ、俺は! でも、ぴったりなんだよね……うん。邦題は読んでの通りですよ。それに、この楽曲の歌詞の一部でもあるんですよ。洒落てる? そうでもない? はは……。

 キャラ解説~! 菜門寺剛その2! 見ての通り奴はあらゆるマッチョキャラのパロディキャラクターでございます。この話も、たぶんどこかで見た気がする? しない? じゃあしない方向で。別にパクったとかじゃないよ! オマージュだよ、おまーじゅ!! 

 だよね、オマージュだよね?! 密山君!

 密山「いや、パクリだな」

 そりゃないだろ!! 味方してくれよ~

 密山「だったら俺の解説をだな……」

 ではまた次回会いましょう!!

 密山「おい!!」

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