12.Believe ~過去からの尋ね人~
お越しいただきありがとうございます!! 十二話です! 今回から夏休みスペシャルです どこがスペシャルかって? それは読んでからのお楽しみです!
それでは張り切って参りましょう!!
それはおよそ1年前の事だった。とある文化祭の一番盛り上がる3日目に、その2人はやってきた。1人は長身でガッシリした体格の青年だった。金髪を思い切り逆立て、不気味な笑みを漏らしながら指を鳴らす。
そしてもう1人は、青いロングヘアーの女子高生だった。彼女もまた楽しげな笑みを肩で表現しながら校門をくぐった。
ある生徒が、屋台から自慢の一品を片手に「如何ですか?」と、歩み寄る。すると、金髪の男が裏拳であいさつし、口火が切られる。そこから、惨劇は始まった。
屋台を破壊し、生徒に徹底的な暴行を加え、その場にいた風紀委員、生徒会、教師たちが必死で止めに入ったが、2人の暴力には歯が立たなかった。高笑いしながら祭りを吹き飛ばし、校舎おも破壊し始め、ついには学校周辺の住宅まで襲い始める。彼らの暴力は台風、竜巻が如き破壊力で次々と飲み込んでいき、駆け付けた警官隊すら一息で吹き飛ばした。
そんな超暴力は真夜中まで続き、夜が明けると、そこに金髪の青年の姿はなかった。代わりに、髪を深緑色に染めた女子高生が、体に酷い傷を負い瓦礫の中から助け出される。
その娘は病院で半年もの間、心身ともに治療を続け、退院しとある学園に入学式と同時に転入することとなる。
「うわぁ!!!」真夜中の午前3時。紅雀は体中を汗で濡らして飛び起きた。荒々しい呼吸を繰り返し、時計を確認して倒れるようにベッドに倒れる。隣の布団では、犲河が何かに溺れるように苦しそうにもがいていた。
「くそ……」口の中の粘つきを取るため、台所へ向かいコップに水道水を満たして飲み下す。「ふぅ……」台所では彼女の父親とすれ違ったが、なにも会話することなく、まるで娘がこの場にいないように振る舞い、台所を出て行った。
「……当然だよな」と、コップを洗い食器棚に戻して部屋に戻る。彼女が、家族と一つ屋根の下で暮らしているのにも関わらず、独り暮らしの様な生活を送っているのは、もちろん1年前の事件が原因となっていた。
紅雀はベッドに横になり、静かに目を瞑った。「もう繰り返さない……(あの時の夢か?)あぁ……(……いまは反省している)気持ち悪いね。あんたらしくないじゃん。(悪いか?)いや……お前がそういうならいい。だが、許さない(別にいいさ)」と、再び眠りにつく。今度はもっとマシな夢を見ようと。だが、今夜は過去の出来事のフラッシュバックの連続だった。
それには、ひとつの理由があった……。
夏休み初日、犲河達は先に来ていた雨田達と、新暮町きってのデパート1階で合流した。「さて、来るべき海へ向かっての下準備だ!」と、密山が興奮したような声を出す。「青い空、青い海、水着、白い砂浜、スイカ割り、水着、シャワー、ポロリ! 夏はこうでなきゃ!」
「やめろ変態、他人のふりするぞ」冷たい視線を向ける雨田達一同。密山は興奮が抑えきれないのか、犲河と紅雀の新鮮なる私服姿を凝視した。夏の尋常ではない暑さゆえ、彼女らの私服の布地は薄く、制服よりも露出面積が広かった。
「お2人ともヘソ出しルックとは大胆な! 鍛えられた腹筋だからこそ成せるファッション、それに犲河さんはホットパンツにタンクトップに半袖のジャケット! 紅雀さんは美脚の露出は控え、引き換え上半身は大胆にも胸を開けた……」
「黙れ!!!!」
【バーニング・ブレス!!】【虎型・剛腕爪!!】【玄武甲・白熱火球拳!!】
「うぉわぎゃ!!!」3人の激しいツッコみに耐え兼ね、「う~ん、ポロリ」と、断末魔を残して床に転がる密山。周りのデパート客たちが違ったような目で彼らを傍観していた。
「暑さで頭がおかしくなったな」雨田が彼の足を掴んで引き摺る。
「……1回、溶けてしまえばいいのに……さ、ハルカさん。水着を買いに向かいましょう」
「……俺も水着~」密山は雨田の引き摺りに抵抗するように、床に爪を立てた。
「おら、俺たちはいろいろ備品を買いに行くんだろ! パラソルにサンオイル、シュノーケルなど……」
「水着!」
「もうイッパツ、喰らうか?」
朝からデパート内を騒がしくした4人であったが、無事買い物が終わり、各々が荷物を持って帰路に着く。
「さて、疲れたな……残った金をかき集めて、ファミレスでもいかないか?」雨田が提案し、3人が賛成するように手を上げる。「幾ら余った?」と、財布の中身をひっくり返し、数える。
「う~ん、4人で合計456円はきついかなぁ?」犲河が苦い表情を作り、肩を落とす。「まぁ、雨田君の家でご飯を……」
「今日、母さん、久々の外食」早口に雨田が口にすると、4人そろってため息を吐いた。「まずったなぁ~やっぱもっと貯金しておくべきだったなぁ~」と、弱音を吐きながら腰を落とす。
「行きと帰りの電車賃に、当日の飯代を考えすぎて、今日の飯を忘れるとは……間の抜けた話だな」密山が自嘲気味に笑い、肩をすくめ、頬杖をつく。
「悪い、私があまり金を持ってこれなかったから……」紅雀が珍しく落ち込んで項垂れる。すると、何かの気配に気が付いたのか、正面に鋭い眼差しを向け、殺気を放つ。「う! お、お前は!!!」
彼女らの目の前に、真夏の夕暮れに照らされる1人の男が立っていた。その者は黒髪を七三分けにし、薄い布地で出来たスーツをピシッと身に着けていた。「や、久々だね。ハルカ」その男の顔を紅雀はよく知っていた。
「誰? 知り合い?」訝しげな表情で問う犲河。
「知らない! こんなヤツ、知らない!」紅雀は明らかに取り乱していた。どんな暑さに照らされても汗ひとつ掻かなかった彼女が、今やぐっしょりと全身を汗で濡らし、小刻みに震える。
明らかに怯えている紅雀の様子を見た3人は、臨戦態勢になり、相手を睨んだ。「おたく、誰よ?」密山が問いかける。
すると、スーツの男はひょうきんな表情を作りお辞儀した。「あ、申し遅れました! 俺は『菜門寺剛』と言います。そちらにいる紅雀さんの元カレで~す」このセリフに3人は声を揃えた。
「んなぁにぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
驚く3人をよそに、菜門寺と名乗る男は紅雀を優しげな表情で眺めた。「久しぶりだね」
「帰れ!! 2度とこの街に足を踏み入れるな!! お前にだけは会いたくなかった!!」
「つれないなぁ、どんなキツイ別れ話になったのか、ここで話せって言うの?」と、困惑した表情を向けるが、この言葉に一番弱った表情を見せたのは紅雀だった。
「え? どんな痴話喧嘩をしたんだ?! 気になるなぁ~」密山が興味津々で一歩踏み出す。すると、隣の犲河の腹が鳴る。
「お? 夕飯はまだなのかな?」菜門寺が音に気付き、財布を取り出す。「立ち話もなんだし、一緒に夕食はどう? 俺が奢ろう。ただし、安いとこにしてくれよ?」
「じゃあ、そこのレストランで!」と、雨田と犲河が揃って近場のファミレスに指を向ける。
「奢ってもらう気満々か……」表情を真っ青にした紅雀が今にも泣きそうな顔になり、足を震わせる。3人が足並みそろえてレストランへ向かう中、彼女だけ足取りが重かった。そんな背後から菜門寺が近づく。「ひっ」
「大丈夫、今の生活をぶち壊すような事は言わないからさ」と、優しく笑いかける。「俺は、償いに来たんだ」
レストランでノリノリの3人は、菜門寺が言うとおりに遠慮なく食べたいものを好きなだけ頼み、がっついた。「はは、まるで欠食児童だな。てか、本当に手加減なしだね」感心するように口にし、彼らの食べっぷりを眺める。
紅雀はそんな彼を怪しむような目で睨み付けていた。「……何が目的?」唸る様に言うが、声全体が震える。まるで怯えを隠しながら威嚇する犬の様だった。
「だから、償いに来たんだ。たとえ許してもらえなくても構わない」優しげな目を向け、歯を見せて笑う。
「……変わったね」彼女の知っている菜門寺剛は、まさに破壊の暴君だった。昔から手の付けられない不良であり、暴走族ですら顔色を窺うほどの存在だった。そんな彼が、無縁だったスーツを着て、就職をしたと口にし、さらに気前よく飯を奢ってきたのだった。彼女から見れば、まさに別人だった。「なにがあったの?」
「不毛な暴力に、嫌気がさして……改心したって感じかな」少々落ち込むように俯き、弱々しく笑う。「いつまでもヤンチャな生活は出来ないし、暴力からは何も生まれないって悟った……今の君みたいにさ。穏やかになったね、ハルカ」
「きっ気安く呼ばないでよ! ……でも、本気でそう考えるようになったんだ……すごいな」実際、暴力を捨てきれていない紅雀は、菜門寺を疑ったことを反省し、笑いかけた。「でも、1年前のあの事件……そんな改心くらいじゃあ、償えないよね」
「そうそう!」雨田がスパゲッティを頬張りながら顔を上げる。「その事件ってなんなの? そんな大規模な別れ話をしたわけ?」水を一口飲んで口の周りを拭く。
「うっ」自分の過去を彼らには知られたくないが、この話を解決しておきたい、というジレンマに頭を悩ませる紅雀。
彼女が重々しく口を開こうとした瞬間、菜門寺が自分の口の前に人差指を置き、雨田達の方へ顔を向けた。「実は俺、1年前にとても酷いマネをしてしまったんだ……」
「酷い?」ハンバーグを噛みながら犲河が首を傾げる。
「俺、1年前まで不良をやっててさ……その時、暴力っていう麻薬に、病気に侵されていたんだ。そう、あと先考えずに暴れて、危害を加え……最低な野郎だったんだ」
「うん、最低だねぇ」密山が頷くと、雨田と犲河が彼の後頭部を思い切り引っ叩いた。
「だろ? で、俺……仲間と一緒にある学校の文化祭を滅茶苦茶にしちまったんだ……その時、付き合っていた紅雀が止めに入ってくれたんだが、回りの見えていなかった俺は彼女まで傷つけてしまったんだ」と、一筋の涙を流す。
「文化祭……」密山が興味深そうに呟き、何かを思い出す様に天井を見上げる。
「で、大怪我を負った彼女は、当時通っていた学校を辞め、君たちのいる学園に来たんだ。ハルカ……本当に悪かった……」と、テーブルに手をつき、頭を下げる菜門寺。
その姿を見た紅雀は目を瞑り、俯いてただ黙りこくった。
「許してあげたら?」犲河が彼女の肩を叩く。
「そうだよ。男が頭を下げるって、なかなか出来ないぜ?」雨田も頷きながら口にする。
「1年前……」密山は腕を組み、頭の中でパズルを組み立てるように唸った。
「……私こそ、ごめん……本当に、ありがとう……」目に涙を溜め、肩を震わす紅雀。菜門寺が心から謝ってくれたこと、さらに紅雀に都合の悪い部分を、友人である3人に隠してくれた事に感激し、彼女も心から謝り、礼を口にした。
「さて、湿っぽいのもここまでだ。じゃんじゃん食べてくれ。君たちにはびた一文払わせないから安心してくれたまえ!」菜門寺が手を叩き、ウェイトレスを呼び雨田達に追加注文をさせた。そんな中、密山だけが訝しげな表情を隠しながら菜門寺の瞳の奥を見つめた。
レストランから出ると、雨田達は揃って「ゴチになりやした~!」と、菜門寺に礼を言った。「俺、ただ飯は食べない主義なんで、明日あたり礼をさせてください! まだこの街にいるんでしょ?!」
「あぁ、あと数日はいるつもりだ」にこやかに答える。
「じゃあ、また明日会いましょうね! 頼れるお兄さん!」犲河も、彼を気に入った様子で、笑顔で手を振り帰路に着いた。
密山も雨田達の後を追ったが、去り際に携帯電話を光らせ、何かを検索するように画面に素早く触れた。「……1年前、文化祭……菜門寺」
「……私って卑怯者だね……あなただけ悪者にしてさ……」残った紅雀だけ落ち込みながらその場で立ち尽くしていた。「でも、怖い……告白して、また大切な人を失うのは、いやだ!」彼女は例の事件後、加害者側ではなく被害者側として病院へ搬送された。この時までは家族も彼女の安否に気をかけ、つきっきりで看病をした。だが、居ても立ってもいられなかった彼女は真実を家族に告白し、勘当されてしまったのだった。
泣き出しそうになる紅雀を見て、菜門寺は厚い胸板に彼女の頭を優しく押し付けた。「……俺だけで十分だ、悪者は……」そのセリフを耳にした紅雀は、今まで溜まったいたものを瞳からポロポロと吐き出し、声を上げてむせび泣いた。
紅雀と別れた後、菜門寺は真っ暗闇の町中を独り歩き、路地裏へ入った。彼はクンクンと鼻を動かし、口を歪ませた。すると、彼が予想していた者が行く手を阻んだ。
「おにぃさん、お金の匂いがするんだけど、気のせいかなぁ?」ダブついた服装をし、フードで頭をスッポリ隠した若者が、ナイフ片手に現れる。「こんな夜中に出歩いちゃだめでしょう?」「そそ、俺たちみたいな猛獣がここらをうろついているんだからさ」「さ、財布を出しな。まぁ出そうが出すまいが、オチは同じなんだけどねぇ」3人が菜門寺の周りを囲み、気安く彼のポケットに手を突っ込む。
「う~ん、安っぽい匂いだ」菜門寺はクスクス笑いながら、正面の不良の顔を見る。「お前らじゃ、ちと喰い足りないかもな……仲間を呼ぶなら今の内だぜ?」
「あ? 頭ぁワいてるのか?」財布を抜き取り、金を数えるもう1人の不良。「おいおい、こんなにキャッシュ持ち歩いちゃだめだよぉ~感心だけどね」
「俺もお前らに感謝するよ……」七三分けの髪型がゆらりと崩れ、軽く逆立つ。「よく俺に喧嘩ぁ売ってくれたな!」今まで優しげな赤子の様な手が一回り大きくなり、拳に無数につけられた傷が浮かび上がった。
次の瞬間、闇夜に若者たちの悲鳴が静かに響いた。
次の日、紅雀は一足先に菜門寺と合流し、待ち合わせ場所である新暮町の駅前に来ていた。「昨日はありがとうね……色々と」
「なぁに、お安い御用さ」と、軽くガッツポーズをとる。
「……昨日、よく考えたんだけどね……その、聞いてくれる?」紅雀は珍しく体をもじもじとさせ、頬を赤らめた。
「なに?」
「……あなたの事を一生許さないって言ったし、思っていたけど……撤回させて。私、あなたを許すわ……」
驚いた表情を作る菜門寺。「本当?」彼女の正面に立ち、彼女の両腕を少し強く握る。
「うん! いい友達でいよう……ね?」彼女が微笑もうとした瞬間、菜門寺の手が、彼女の胸の下に深々と入り込む。「……え?」何が起きたのか理解できぬまま、不気味な笑みを作る彼の表情を瞳に映す。
「本当に、ほんとぉぉぉぉぉに、ありがとう……ハルカぁ」目の奥から、隠していた彼の本来のオーラを滲ませ、腕を更に深く挿し込む。「お前が俺に、心を許してくれるのを待ってたぜぇ……まさかこんなに早く許してくれるたぁ、お前も甘ちゃんだなぁ」
「……1年前と同じ口調……同じ匂い、同じ……ぐぅ!!」と、彼の腕を掴み、引き抜こうとするが、彼女の力ではどうすることもできなかった。「何が目的だ!!」
「1年前の続きだ」肩を揺らしながら笑い、更に奥へ奥へと腕を突き入れ、何かを探る。「あの時、そう校舎を破壊し始めた辺りで、お前は『このまま暴れたい』という人格と『止めなくては』という人格に別れ、結局は俺と共に暴れた。そうだな?」
「……(そうだったな)」
「だが、その周辺地域を破壊し始めた辺りから、今のおまえが現れ、俺を妨害した。そこからだ……俺の本調子が崩れたのは。そう、俺が本気で、本気以上で暴れるにはお前が必要なんだ! お前と俺はシンクロして初めて最強になれるんだ!」
「それが目的で最初から?」
「そこまで計画的ではなかったが……ここ数か月はお前に許してもらい、また2人で暴れる事だけを考えてきた」楽しくて仕方ないのか、声を上げて笑う。駅周辺の人たちは、何が起こっているのか理解できないのか、首を傾げながら2人に注目していた。
「誰がお前に協力するものか!」
「お前はもう用済みだ。欲しいのは、お前の力の源……これと俺が1つになる時、1年前の再現が、いやそれ以上の破壊が可能になる!!!」と、紅雀の体内から、真紅色に光る光の玉を引き摺り出し、掲げる。「今から俺は、最強だ!!!」
「あ、あ……あぁ(なんてこったよ……)」力が抜け、今までの気迫に満ちた瞳は色を消し、地面にしゃがみこんだ。
「もう、お前に用はねぇよ、絞りカス。そこで見ていろ……最高の破壊ってもんをなぁ!!!」彼はそう口にするや否や、紅雀から奪い取った力の源を己の胸に押し付け、蹲った。「ぐ……ふふふ、融合だ……力が、1000の力と1000の力が掛け合わさり、ふはははははは!! 今にも爆発しそうだぜぇぇぇぇぇ!!!!」彼の七三分けが昨日と同様に逆立ち、黒のヘアカラーが彼から発せられる異常な熱で消し飛び、元の色が露わになる。
すると、遠くから雨田達3人が駆け寄ってくる。「紅雀さん! そいつから離れて! 猫被ってたんだ、そいつ!!!」犲河が大声を出し、急いで紅雀の前に立ち、構える。
「この野郎、今の今まで暴力事件を数十、数百と重ねてきた凶悪犯だ! 有害人物指定(世に出たら青少年たちに悪影響を及ぼしかねない危険人物)を受けたいたんだ! 手配書には『関わるな』の文字。悪魔だ、そいつは!!」雨田は密山から聞いた情報を、まるで自分が調べたように口にした。
呆れた様な表情になる密山。そのあと、紅雀に一瞥をくれ、憐れむような眼差しをむける。「紅雀さん……」1年前の事件を事細かに調べた彼は、紅雀が共犯である事を割り出したが、この事実は雨田達には伏せていた。
「くふふふふ、いいだろう……ハルカぁぁ、1年前に俺の夢を中断してくれた礼だ! この3人をお前の目の前で悲鳴を上げさせ、犬の様に殺してやる! そしてお前は、この街が真っ平になった後で、ゆっくりと嬲り殺してやらぁ!!!」目をカッと開くと、周囲に巨大な衝撃波を放つ。たまらず4人は吹き飛ばされた。力なく飛ばされた紅雀を密山が受け止める。
「これが終わった後、貴女の口から真実を聞きますから」優しく彼女を地面に座らせ、菜門寺の方へ駆ける。
その頃、菜門寺の体に大きな異変が起きていた。彼の体は風船のように膨らみ、ジャケットとワイシャツが内側から破け、筋骨隆々な肉体が姿を現す。それでも筋肉の膨張は止まらず、ぐんぐんとデカくなる。彼の異変が止まると、身長が軽く3メートルを超えていた。上半身は見事な逆三角形になり、体中、過去に受けた傷がいくつも浮き上がる。破けたワイシャツが腰で垂れ下がり、まるで剣闘士の腰巻の様になっていた。
そんな化け物を目の当たりにした3人は、口をあんぐりと開け、目を丸くし、膝を震わせた。「……で、でかい」雨田は唾を飲み込み、目を擦った。
「こいつと、喧嘩するわけ? あたしたち」犲河は恐怖を通り越して、感心するようにため息を吐いた。「逞しいお体……」
「……金髪のマッチョって言葉にしたらしょぼいけど、実際目の当たりにすると……」絶望的すぎる現実に笑い出す密山。「ははっ、いやはや……言葉にならん」
体中から煙の様な真っ白い蒸気を吹き出しながら、これから自分ができる事を予想し、大声で笑う菜門寺。「さぁ! 始めようかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
いいところで終了! つづきます。次回はバリバリの戦闘なのでお楽しみ♪
では解説~
サブタイは吾輩最近のお気に入りSkilletより。彼らはいいサウンドを奏でまっせぇ~ 邦題はテケトー
キャラ解説~ 菜門寺剛! 出ましたね……こういうキャラを一度は書いてみたかった。皆さま色々漫画やアニメを見たのであれば、「こいつを参考にしたな?」「こいつのパクリか?」など思うでしょうが、ズバリ言いましょう。全体的にイエス! マッチョな怪力キャラを私の頭の中でミキサーにかけ、出来上がったのがこいつです。次回、大暴れするのでご期待ください!!
そういえば密山のヤツぁどんどん陰険になっていくなぁ……
密山「陰険?! 縁の下の力持ちと呼んでほしいな!」
いやいや……ではまた次回!!