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女神のスロット  作者: 七菜 渡羽
序章
8/13

#8 ベッカーの講義

 

 ほとんど説明です。

 

 

 真名についてのやり取りだけで、サキには全く常識というものがないことが分かったベッカーは幼い子に世界について教えてやるような心づもりで講義を始めた。


 「まず始めに人間は大人から子供まで全員が魔力というものを体内に持っている。獣のなかにも魔力ある奴はいるし、魔人ってのもいるがこれは次回にしよう。

 一般的には魔力量の多い人間が強いとされてて、そういう奴は軍や騎士団に入る。お前の魔力は…測ってやるから俺の荷物の袋取ってくれ。」

 沙姫はほとんど重さを感じないサンタの背負う袋ほどの麻袋をベッドの上のベッカーに渡した。サキのわずかな表情の変化が分かったらしい。


 「この袋には重さを感じなくなる魔法がかかっている。商人や冒険者の必需品だ。大きい街なら必ず売っている。

 で…だ。行商は大体持ってるのがこの手のひら大の石だ。魔力はちょっとした町なら騎士団の詰め所でわずかな金で測ることが可能だ。

 しかし辺鄙な場所だと魔力を測る器具は置いてないことが多い。そこにあるクローゼットと同じくらいの大きさだ。

 運ぶのも大変だし、なにより結構高価なモノだからな。そこで活躍するのがこの簡易測定器だ。

 正確な測定はできないが、生まれた村で一生を過ごす奴もざらだ。日常生活レベルの魔法がどれくらい使えるのかでいいんだよ。

 だからこれで十分なんだ。行商は食事や寝床をタダで提供してもらう代わりに、この測定器で魔力を測ってやるのさ。」


 「ベッカーは優しいんだね。辺境に住んでる人には測定器の価値がわからないだろうし、ぼったくってもよさそうだけど。」


 魔力の測定は測る対象となる人物が石を握り、測定者が簡単な呪文を唱えるとすぐにわかる。ちなみに数値は測定者にしかわからない。


 「やっぱりな…お前の魔力量はゼロだ。魔法は使えない。普通は日常生活に使えるくらいは持ってるもんだがな。

 さっき人間はすべからく魔力を持ってると話したが、例外は存在する。つまり、お前みたいなやつだな。

 魔力量が多い人間は貴族に多い。が、魔力量の多いもの同士の子でも、両親と同じように魔力が多いってことはあんまりないんだ。

 でも95%の確率で親と同じかそれ以上の子どもが生まれる組み合わせがある。それが魔力なしと高魔力保持者の組み合わせだ。

 貴族の中にも魔力なしはいないわけじゃないが、ほとんどいない。平民の子の方が多いんだ。」


 「えっ!ってことは……」


 「あぁ。魔力なしの若い奴隷、特に20歳くらいまでの女の奴隷は相当高値がつく。お前も人さらいには気をつけろよ。

 行商の中には辺鄙の土地を渡り歩いて、魔力なしの子どもを集めてるやつもいる。魔力の数値が測定者にしかわからないのをいいことにな。

 親には、『妻は子ができない体質なので養女にしたい。』とかってうまく騙して連れていくんだよ。

 胸糞悪い話だ。相手は田舎の人間だ。素直に娘を差し出す。商人の方が金持ちで娘が良いとこに嫁げるとか、自分達ならまた子供が出来るとか思うんだ。」


 『貴族に買われた奴でも家に閉じ込められて、生殖の為だけの生き物になるかもな。

 正妻を設けて、子供は本人から取り上げられる。妊娠適齢期が去れば、闇に葬られる。とかありそうだな。』


 「確かに、そういうこともあると噂に聞いた。って……"リザベラの使い"っ!お前喋れるのか!」


 「リザベラ?あぁ、そうなんです…じゃなかった…そうなの。しかも、中身が"透夜"っていう私の幼なじみ。……不慮の事故で死んでしまったん…だけど。

 私がここへ来た日は四十九日しじゅうくにち、私たちの宗教では死者を弔う行事があって。」

 サキは珍妙生物を撫で、少し沈んだ目をベッカーに向けた。


 『確かに肉体は死んだけど、精神は死んでない。というかヤツに起こされたんだよ。でも、身体がシェーバーになってた時は絶句した。』

 不遜にベッカーに対峙し、沙姫には丁寧に説明するという器用な態度をとれるなんて器用だなと我ながら思う。 


 「中身は人でも肉体は"リザベラの使い"だから、直接思考伝達しかできないんだな。

 ってリザベラもわからないんだな。お前らは。リザベラはこの国、ミスルギの国の国教アッシラ教の神の中でも有名な女神だ。

 リザベラの使いは神に代わって、人々と交わり女神の信託を伝えるとされる伝説の神使だ。」

 お前らの常識のなさには本当に困るな、と苦笑するベッカーを透夜が睨む。


 『仕方ないだろ。多分俺と沙姫は遠くから来たんだ。こっちではその年齢でシェーバーが分からない奴なんていない。』

 透夜は鼻を鳴らして、さげすんだ目でベッカーを見る。またベッカーと透夜の間でバチバチと火花が散る。


 沙姫は二人の雰囲気など気にもせず続ける。

 「直接思考伝達っていうのは?」


 1人と1匹はそろってため息をつく。良くも悪くも空気を読む気が全くないのがサキなのだ。

 「これは俺が悪いな。俺の友人に魔法の研究者がいてそいつが作った呼称だ。

 間接思考伝達は言葉を口にして相手に伝えたり、文字つまり手紙で相手に物事を伝える手段だ。

 これに対して直接思考伝達は、頭に直接話しかけることだ。お互いの間に音も文字もない。媒介がないということだ。

 おいおい話していく。あてがないのはわかってる。よかったら俺について来いよ。そうすれば無知による危険は俺が弾いてやる。

 改めて自己紹介すると、俺はベッカー・ミドレッシ。行商をして各国を回りながら、生き別れの兄を探している。

 命を救って貰ったお礼と言ってはなんだが、よかったら俺の旅について来ないか。」


 

 サキが主人公のくせに一番動かしにくい。

 必要な性格なので我慢するほかありません。

 徐々に感情が表に出てくる予定です。

 


 注)大幅改定しました。3月27日に。

 透夜の性格が大幅に変わりました。

 その他は情報の出し方と順番を変えただけで同じ話です。

 


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