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女神のスロット  作者: 七菜 渡羽
要塞都市 ジズラス
13/13

#13 ジズラスとデューク

 

 説明がほとんどです。

 新章スタートです(^ー^)

 


 

 ジズラスは人口5万人のこの世界でいう大都市に相当する大きな街である。

 ちなみに千代田区の人口が5万弱くらいで、中規模都市と同じくらいである。


 国境に程近いこの都市は要塞都市であり、軍事的にも経済的にも政治的にも要地だ。


 教会を中心に楕円状に広がり、外側は城壁で囲まれている。真ん中から一の郭、二の郭、三の郭と塀に囲まれて三つの階層に分かれている。

 一の郭は教会の周りに商店や本屋、魔法屋が立ち並ぶ市場が。

 二の郭には問屋街や旅人が利用する宿、富裕層が住む住宅街が。 

 三の郭は貧困層や中流階級の住む住宅街、門前市場が広がる。

 このようにすみわけがしっかりしており、治安は中心から離れるごとに悪くなる。

 しかし領主の館は城壁に非常に近い三の郭にある。それは一番人通りの多い北門が近く、出入りする人間の情報管理が楽だからだ。

 門は他に南と東、西、北西にあるものの許可状がないと出入り出来ず実質外部の人間が出入りできるのは北門のみである。


 領主の館入り口……


 「ベッカー・ミドレッシだ。デューク・ベルドラインにお目通り叶いたい。」

 ベッカーは普段のフランクさを引っ込めた厳めしい顔つきで門番をしている騎士団員に話し掛ける。


 「ベッカー殿はお通し出来ますが、そちらの女性は……」

 ベッカーを見下ろす程長身で屈強な男が訝しげにサキを見遣る。


 「妻だ。彼女を紹介したくて寄った。」

 サキは突然の発言にあんぐり口を開けてほうけているが、反射的に鞄から出ようとした透夜を掴んで止めた。




 「先に言っといてよ。そしたら覚悟できて、こんなに驚かなくて済んだのに。」

 サキが頬を膨らませている。怒っているのではなく、口いっぱいに頬張っているからだった。


 「お前そんだけ口に入っててよく喋れるよな……」


 今ベッカーとサキがいるのは彼らの泊まっている宿に併設されたレストランである。旅人御用達の人気の宿で、レストランもほとんどの席が埋まっている。

 騒ぎになるのは明らかなので、透夜は部屋で留守番だ。透夜には後でスタッフにサンドイッチでも作ってもらうことにした。


 「ああ言っておいた方が無難だからな。はっきり言って、年頃の男女が一緒に旅してるのに夫婦じゃない方が不自然だ。

 しかし、一旦出直して下さいと言われたのは初めてだったな。何か事情でもあるのだろうか。

 門番の様子もいつもと違っていたようだったが、まあ明日にでもデュークに聞けばいい。……ってお前話聞いてないだろう。」

 サキはもぐもぐ口を動かし、まだ肉の残っているベッカーの皿をじぃっと見ている。

 サキの皿はというと、空っぽになってソースすら残っていない。というかどうやったら、そんなにきれいに食べられるのだろうというレベルである。


 「聞いてる聞いてる。ここの宿は食事がおいしいから旅人に人気でなかなか飛び込みで入れないけど、ベッカーの人脈で泊まれたんでしょう?

 流石ベッカー。アリガトウゴザイマスー。っていうかその肉いらないなら食べていい?冷めたらおいしさ半減だよ?」

 即座にサキの頭にチョップが入る。そして俺の肉はやらん、これはドンロンっていう高級な金魚豚の肉で滅多に食べられんからなと言ってフォークで突き刺して一口で食べてしまった。


 あー私のにくぅーとサキが泣きそうになったのは別の話だ。

 金魚豚が豚の身体に金魚の頭とひれが付いたきっしょい生き物と知って絶叫するサキが注目を集めてしまい2人は急いでレストランを後にした。



 コンコンという音に一番最初に目を覚ましたのは透夜である。

 サキを突っついて起こした後、ベッカーの顎を蹴って起こしたのでまたケンカが勃発しそうになったのはいつものことだ。

 透夜はそもそもベッカーとサキが同じ部屋に泊まるのには反対だった。

 シングルが二つ空いていなかった上、サキの身元を証明しなくても泊まれる方法が夫婦としてツインかダブルに泊まる他なかった。

 で仕方なくツインにして、ベッドを2つのベッドを壁につけるということでお互い譲歩したのだ。ちなみにダブルの方が安かったのでベッカーはそちらにしたかったようだ。


 「……おい!開けてくれ。ここは2階だけど落ちたくないんだ。手が限界だ。」

 窓のふちに掴まっていたのは、赤茶の髪に茶色い瞳と丸メガネ、そばかすの散った男デュークだった。

 サキとベッカーに引き上げられたデュークはひょろひょろしてやせ細り、眼は充血し、身体のあちこちに真新しい傷がついていた。


 「お…お前どうしたんだ。大丈夫か?痩せてはいてもここまでじゃなかったし、身なりもきちんとして気にするタイプだったろう。

 この傷…マクベル氏の目が黒いうちはこんなこと天地がひっくりかえっても起こらないはずだ。」

 ベッカーの言うとおりひどいありさまだ。頬は痩せこけ、服は着たきり、ひげは伸び放題。

 特筆すべきはその身体の傷だった。服から覗く皮膚にはごてを押し当てられた跡や鞭打たれたと思われる跡が生々しい。


 「説明してる時間はない。とにかく逃げてくれ。明日のこのこ領主の館に行ったら捕まる。

 明日の朝にはお前に見張りが付くだろう。もし、俺の命で脅されたらベッカーなら自分から捕まりに行くだろう?

 だからお願いだ逃げてくれ。三の郭の南西占い師サーシャに頼めばここから逃げられるはずだ。

 俺の名を出せば秘密の抜け穴を使わせてくれるはずだ。」

 それだけ言うと窓から飛び降りて走って去ってしまった。しばし固まっていたが最低限の荷物だけ手に持つと、サキを抱えて窓から飛び降りた。机の上に宿のスタッフへの伝言と少し色をつけた宿泊代金を置いて。


 その日、太陽が昇る前にサキとベッカーは要塞都市ジズラスから脱出した。

 

 

 頑張って書いてます。

 でもしばらく更新遅くなります。

 



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