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女神のスロット  作者: 七菜 渡羽
序章
1/13

#1 前世と来世

 

 異世界トリップもので、何番煎じだっ!!!って感じですが、楽しんでくれたらうれしいです。

 初投稿です。よかったら感想とかお待ちしてます。

 

 

 眩しい。ここはどこだ。真っ白な空間には、一人の人影があった。

 ここにくるまでの記憶は全くなかった。しかも一糸まとわぬ姿、いわゆるフルチ●である。

 不思議と全く恥ずかしくないし、それが当然だと思えた。


 『ねぇねぇ。君、ボクの作品を完成させるためのパーツになってくれないかな。』

 12歳前後の少年がゆっくりとこちらに近づいてくる。にこりと口角を上げたものの、その目は笑っていない。

 その少年は俺の12歳の頃と同じような、いや同じ顔をしていた。

 酷薄に笑う姿は全然子どもらしくない。自分とは別人だ、同じ顔はしていても分かった。


 『お前は誰だ。ここはどこだ。』

 少年は笑みを深めて指を鳴らした。指の先にはくるくるとまわる地球。


 『ボクはラル。いうなれば君は僕の前世の意識。ここは魂のいるべき場所。』

 全部の質問に簡潔に答えてみたけど、詳細な説明が欲しいのならしてあげてもいいよと笑う少年に背筋はぞっとした。

 本能的に分かった。こいつに逆らったら無事ではいられないと。気まぐれで、気に食わないモノをすぐに潰せるだけの力があると。


 『いい。お前の気が変わる前にこの場から退散したいところだ。俺の名前は…そのくらい知ってるか。』

 意外にも懸命な彼の態度に一瞬目を見張って見せたラルは、にやりと笑った。


 『君は賢いな。ボクの機嫌を損ねないように動こうとしてる。しかし、今回の場合それは間違いだ。

 ボクの方が頼みたいくらいだ。君にはいい役をやってもらおうと思うんだ。

 物語の3番手を担ってほしい。必要だけど、スポットライトは当たらないナレーター役。』

 ラルはじっと指先の地球を見つめた。


 『要は事情は全て知らない方がいいのか。だから多くは語らないと。』

 彼は小さな溜息をついた。彼にはラルの言うとおりナレーション役に徹するほかないのだから。


 『それはちょっと違うかな。君は全てを知っても、怒るだけだしね。でも役割は放棄しないだろうね。

 無駄なエネルギーは使うだけ無駄だからね。非効率的だとは思わないかな。』

 ウインクして、パチンともう一度指を鳴らせば、地球は小さく凝縮して消えた。その程度なら簡単にできるぞと言われた気分になった。


 『お前…いやラル、俺の生まれ変わりがラルなら、前世ということだよな。

 なぜ、俺に意識がある?というか2つ人格がある時点で少しおかしくないか?

 普通はある人格が前世の記憶を持っているという形にならないか?』

 彼は自分が助かることは諦めていた。ラルの気まぐれでどうにかなるようなら、もはやどうしようもないのだから。


 『そうだねー。そういう考え方があるのも知ってたけど、実際はそうじゃない。

 魂の器と呼ばれるモノがあって、死を迎えたとき前の魂は奥に押しやられる。』

 ラルはその場でくるくると両手を広げて周る。何もない真っ白な空間にあるのは、ラルと彼だけ。


 『何もないように見えるだろう? 今は君とボクしか見えないようにしてあるからね。

 はっきり見えるだけでも8人いるよ。見た目も中身も年齢、性別すら一致してないね。そうだ。君にも見えるようにしてあげよう。』

 ニヤリと笑ったラルがもう一回くるりとまわると、まわりには彼が分かるだけで20人足らずの人間がいた。


 幼い少女、老人、30前後と思われる若い女性、彼と同い年位の男もいた。

 顔も体型も人種さえ違う。恐ろしいことに身体のあちこちに鱗が生えていたり、薄緑の肌の者もいるくらいだ。

 共通点は全員裸で、黙っていること。目は開いていても見えてはいないようで、意思の感じられない瞳は死んでいるようだった。


 『俺と同じような奴は見当たらないな。人形みたいだ。目が死んでる。』

 説明しろと、目だけで要求する彼にラルはため息で応えた。


 『面倒だから説明はこれ以上したくないって言ったら怒られそうだね。魂はいくらでも作れるけど、器はそうじゃないんだ。

 作るときに計り知れないエネルギーが必要。だから、死んだ生き物の魂の器は使いまわされる。

 器は色んな大きさがあって、ボク達は大きいほう。種族とか役割の違う者でさえ、同じ器を使うわけ。

 お察しの通り、君とボクは全く違う種族。で、だ。あー面倒だからやめていぃ?』

 無言で彼が睨むと、がっくりと肩を落とす。


 『魂はあとからあとから入ってくる。例えるなら上から重石を乗せられるのと同じで、下にあるやつは潰れちゃうんだ。

 潰れたやつは、そうだな君の真後ろにいる老婆みたいに存在が希薄になる。で、一定時間経つと消えちゃう。

 魂は潰れるごとに悲鳴を垂れ流す。それが鋭いひとには前世の記憶として、見えたりする。

 でもね、前の魂は普通は"意識"がない状態だから、悲鳴を上げる魂は珍しい。君は悲鳴を上げる魂だったわけだ。おめでとう。』

 少年はぱちぱちと手を叩いた。顔には相変わらずのニコニコ笑顔の仮面。


 『要は悲鳴がわかる特異な人間というだけじゃないんだろう。ここに入れたというのがその証明だ。

 てめぇはご丁寧に世間の見方の間違いについて解説までしてるものな。じゃあなんなんだ。』

 一瞬真顔になるラルはさすがだと彼を誉める。


 『それは上位存在、つまり神と呼ばれる生き物だからだね。これは君たちからの見方だから、ちょっと違うんだけど。』

 もういいかなと、微笑むラルの顔にこれ以上の説明はしないと書いてあった。


 彼、つまり、藤森ふじもり 透夜とうやがこの物語の進行役に就任したのはこの時だった。

 


 

 俺藤森 透夜はその辺によくいる男子高校生だった。普通、平凡。容姿から中身まで全てが中くらいなのだ。

 ただひとつ普通じゃない幼馴染がいる以外は。

 幼馴染の名前は島田しまだ 沙姫さき、性別女。透夜の1歳年上の高校2年生。


 綺麗で、美人で、無表情を崩さないクールビューティ。同じことを三回言った気がするが、気にしないでくれ。

 成績はいいし、運動もできる。無口で聞き役に徹するタイプなので、初対面ではとっつきにくいかもしれない。

 心を許した人間には優しいという一面もある。俺に優しかったことは一度たりともないが。

 その全ての特徴を凌駕するのが変人ぐあいだ。影で残念美人と呼ばれているくらいだ。

 一定の期間ごとに変なモノを愛でる。そのためには友人を害しようとかまわない。

 沙姫の親友は慣れっこだと笑うし、大体の人は分かっていて止めない。

 が、流石に人に迷惑をかけると、叱られるのは世の常だ。

 そこで沙姫ではなく、透夜が監督不行き届きのお叱りを受けるのは理解できないのは普通のことだと思うのだ!!!

 そのことで友人にはからかわれるし、知りもしない先輩方に好奇の目で見られるのは耐えられない。


 でも当然透夜の味方になってくれたような人もいたわけで。当時の彼女だけは透夜の境遇に対して一緒に怒ってくれた。

 『ホントありえない。なんで透夜くんが怒られないといけないの?先生とか何考えてるんだろうねっ!』

 怒り心頭な彼女の様子を見て普通はこう考えるよな、とうんうんと頷きながら聞いていた。


 『でも一番むかつくのは、島田 沙姫だね。あの人が変な行動起こさなきゃいいんだし。

 だいたい、男子はクールビューティとかって崇めてるけど、実際ただの変人じゃん。

 男子ってほんと見た目だけしか見てないよね。あの人いつも一人で友達もいないのにね。』

 バチーンと乾いた音が響いた。後にも先にもそれが女を殴ったのはその一回だけだった。

 自分でも自分が分からなかった。でも沙姫を何も知らない奴に悪口を言われるのだけはゆるせなかった。

 彼女とはその時別れた。いい子だったと思うが、今にしてみればなぜ付き合っていたのかは謎だ。


 そのとき沙姫の起こした事件というのが、駐輪場事件だ。あれは凄惨せいさんな事件だった、ある意味。


 沙姫が自転車の空気入れに凝ってた中学2年生の9月の"駐輪場事件"。言わずもがな俺は中1だった。

 部活は終わってすぐだった。ちなみに沙姫はバトミントン部、俺は剣道部。

 俺らの中学には第1体育館と第2体育館があった。部活によって分かれているが、沙姫も透夜も同じ第2体育館が活動場所だった。

 大会も近かったし、夜6時過ぎまで練習だった。『暗い夜道を女の子が1人で帰ってくるのは危ないから』と当時隣に住んでいたこともあり、一緒に帰宅するのが常だった。

 沙姫は少し早く終わって、第2体育館で部活をする人専用の駐輪場で透夜を待っていた。その暇な時間こそが悲劇を起こした。


 駐輪場にあった自転車の空気入れのゴムのキャップが外され、空気が出たタイヤで自転車はのきなみ使えなくなった。

 沙姫のしたことってわかって、俺まで地べたに正座させられておこられたのだ。なんで沙姫から目を離したんだってさ。意味が分からない。

 その頃にはもう沙姫のことなら透夜に任せとけばいいって認識ができていた。不本意ながら、自分でもそれを許容してたとこがある。

 当然だが全ての自転車が使えるようになるまで帰らせてなどもらえなかった。

 全員の自転車の空気が入れ終わって自宅に帰れたのは7時30分ごろだった。あれは鮮明の覚えている。

 当時は隣に住んでたから俺の両親も、沙姫の両親もみんなで玄関の外で待っていた。鬼の形相ってやつだった。

 で8割がた俺の両親が怒鳴っていて、怒られた配分も俺8:沙姫2っていう。なんだそれ納得できねぇって感じだよホント。

 

 藤森透夜は甘んじて沙姫の御守りを引き受けてはいたが、それに納得していたわけではなかった。

 それももう過去のことだと思っていた。藤森透夜は死んだ。豪雨の夜に車に轢かれて。

 最期に意識を手放す瞬間すら明確に覚えている。死ぬんだと分かった。あの時"藤森 透夜"としての人生は終わった。

 生暖かい水の中にいるような感覚があって、気づいたらここにいた。この真っ白な空間に。

 そして俺は今度は自分の生まれ変わり?に振り回されることが決定した。

 

 

 更新は、亀のスピードですぅ~(泣)

 よかったら続きにもおつきあいくださいませ。

 注)大幅改定しました。3月27日に。

 多少前と透夜の性格が変わってますが……

 他は情報を出す順番を変えただけです。

 



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