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ノルン  作者: 不知火桜
逐った先に
9/13

逃避行

 少年はいつものように店で働いていた。しかし、その日は少し様子が違っていた。街の人は荷造りをし遠くに行こうとする人で溢れていた。どうやら敵軍が本格的に侵攻してくるとのことだった。少年は叔父さんの家に急いで戻ったが、叔父さんと少年の稼いだお金は消えていた。結局、叔父さんの姿をみることはなかった。今もどこにいるのかはわかっていない。少年は何もない家から使えそうなもの持って男がいるところに向かった。前の家に着くと男は状況がわかっているようで荷造りをしていた。少年は街を出ることを伝えると男は一緒に行こうと言ってくれた。少年たちは西に向かって移動を始めた。

少年たちは野宿をしながら徒歩で安全なところを目指していた。しかし、戦争の足音は徐々に近づいていた。銃声や爆発音が遠くない距離から聞こえる。少年たちは安全と思われる場所で野宿することにした。男はあまり自分のことは話さなかったが友人の話をすることが多かった。

その日の夜も男は友人の話をしていた。

「あいつは恋愛経験がないのか鈍感なのか知らないが普通気づくだろ? あんなに女の子が熱い視線を送っているのに。で、女の方もどうしたらいいですか?とか何が好きですかね?とか聞いてくるから告白しろと言ったら顔真っ赤にして首がもげるくらい横に首を振るんだよ。坊主はそういうのないのか?」

少年はいないと答えた。

「これから先、そういう子が現れてくれるよ。まあ、気づけないと意味ないがな」

男は笑顔で少年に言った。

そんな他愛のない話をしていたが男は突然、黙り込んだ。目つきも先ほどまでの優しい眼から何かを警戒する鋭いものに変わった。そして、男はバッグから黒いものを取り出した。あのバッグは少年が初めて会ったときから持っていたものだ。少年はその中身は知らなかったが男が取り出したものは知っていた。

拳銃。

男はそれを暗闇の森に向けて構えていた。少年は困惑していた。するとその暗闇から人影が現れる。一人じゃない。複数の影。その影はこちらに近づき、月の光に照らされその姿をはっきりと認識する。彼らの服装は連邦軍の軍服で手には自動小銃があった。連邦軍の将校と思われる男が声をかける。

「貴様、帝国軍の人間だな? なぜ、ここにいる?」

軍人は男に尋ねた。男は構えた拳銃を下すことなく答える。

「この子を守るためだ。そっちこそ何でここにいる? ここは連邦軍が展開する地域ではないはずだ。あんたらどこの所属だ?」

「こちらに尋ねるとは。君、立場をわかっているのか? だが敵国の人間と一緒にいるとは。 とりあえず、一緒に来てもらおう。」

軍人は男にそう告げた。少年は危機的状況にあると分かっていたため男と逃げる心構えをしていたが男は銃を下した。

「この子を安全なところに連れて行ってくれるか?」

軍人は男の提案に怪訝そうな反応をしたが了承する返事をした。

少年と男の旅は終わりを告げた。少年は他の軍人に連れられトラックに乗せられた。男は別のトラックに乗せられ東へと向かった。少年を乗せたトラックはしばらくしたのちに反対の西へと動き出した。少年はこのままではあの男と二度と話せない気がした。そう思った少年はトラックから飛び降り闇の中へと消えた。

 


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