不死身
雨乃が離脱してから追ってが来ることはなかった。やがて前方に基地が見えてきた。
『目標を補足したな。ウォードック、攻撃を開始しろ』
『私は右からやっていきます』
神結からの無線を受け、我々は手分けして目標の破壊を行った。敵は想定より早い襲来に混乱しているのか反撃はない。我々は順調に破壊を行ったがトラブルが発生した。
『こちらウォードック3 AWACS、残り一か所がわからない』
『残りの一か所は地下にある。トンネルから侵入し内部にある施設を破壊しろ。吹き抜けとなっている場所があるからそこから外に出られる 』
どうやら最後の一つは地下にあるようだ。内部には広い空間があり、戦闘機で行動可能だそうだ。
『そんなの自殺行為です。隊長!?』
私は機体をトンネルの入り口へと向ける。そしてそのままトンネル内に侵入した。無線はもう入らない。中はぎりぎりの幅だ。この先に目標がある。チャンスは一度。失敗すれば終わり、操作を誤れば墜落。やがて広い空間が見えてきた。同時に目標も補足した。私は発射スイッチを押した。機体から切り離されたミサイルはブースターを点火させ飛翔した。私は攻撃効果を確認する前に天井にある唯一の出口に向け上昇した。そして私はどんよりとした曇り空にでることに成功した。外に出たことで無線が聞こえるようになった。
『ミサイルサイロの機能停止を確認』
私のミサイルは命中したようだ。AWACSの声から喜びを感じられる。
『本当にやれたんだ。やったよ! やったよ!』
神結の今まで聞いたことがないような声が聞こえる。
『これで戦争が終わる。そうだ。私、どうしても隊長に伝えたいことがあるんです』
しかし、なにかを言おうとした神結の声は遮られた。
『アンノウン急速接近!ブレイク!ブレイク!』
AWACSからの警告の直後、目の前にミサイルが現れた。間に合わない。
『くっ』
だがミサイルは私にあたることはなった。私の前に現れたのは横を飛んでいた神結の機体だった。直後、彼女の機体は高度が落ち空中で爆散した。そして無線から声がした。AWACSではないがその声には聞き覚えがあった。
『まだ生きているか? 相棒』
懐かしい声だ。彼は死んではいなかった。顔は見えないがおそらく前方からやってくる見たことない機体に彼はいるのであろう。彼はAWACSとの交信に使っている周波数とは違う周波数を使ってこちらに通信してきた。
『核サイロの起動を確認。作戦続行!アンノウンは敵機と認定。ウォードック1、交戦せよ。情報を収集する。それまで持ちこたえろ』
私はAWACSの指示通り彼との格闘戦に入る。AWACSは彼が正体だと気が付いてない。再び無線が鳴る。
『戦争は殺すか、殺されるかの世界だ。その中を生き抜いたやつはいつしか自分を不死身だと思うようになる。お前のことだよ。 相棒』
彼は私との格闘戦をしながら話しかけてきた。私が彼の後方についたと思ったら彼は一瞬でわたしを引き離し、ミサイルを撃ってきた。私は直前で機体を上昇させ、フレアを巻いて回避した。お互い一歩も譲らない。
『こちらAWACS。 敵機から地上への信号を確認。やつが核の発射を握っている。』
燃料が残り少ない。だが彼を落とすことができない。ミサイルが彼を追尾しない。
『相棒、戦争はここで終わるが、世界はここから始まる。分かるな』
私の機体はハイGターンを繰り返しながら彼の後ろに張り付く
『戦争は俺やお前を苦しめた。だがな、苦しめるのは戦争だけじゃないんだ。』
レーダー上では私の機体と彼の機体は重なっている。私はまだ後ろに張り付いているがこれがいつ入れ替わってもおかしくない。
『時間だ』
地上から眩しい光が打ち上げられていく。
『まずい、ICBMの発射を確認。』
ついに核は発射されてしまった。
『惜しかったな 相棒。相棒はいま何のために戦っている?』
私は彼の問に答えることはできない私はずっと戦い生き残ってきた。私だけが生き残ってきた。何も答えられない私を無視してかそれとも答えられないことを見越してか彼は喋り続けた。
『国のためか? だが国とはなんだ?空から国境線を見たことがあるのか? 国境、人種、本当に人の間に境はいるのか?この核はそれを問い直すための兵器だ。世界をゼロに戻し、次の世代に託そう。』
彼の目的となにを想っているかは理解した。だが、私はそれを肯定することはできない。
『こちらAWACS!聞けウォードック1 敵機の情報が入った。奴の機体のコードネームは「ワイバーン」。機体はECM(電子妨害)防御で守られている。やつの弱点はレーダー類を備える前方である。正面角度から攻撃しワイバーンを撃墜せよ。やつを落とせば発射された核は自爆する。残り時間は少ない。今そこでやつを撃てるのは君だけだ。ウォードック1、幸運を祈る。』
私は彼の機体に注意を払いながら距離をとった。AWACSの報告が事実なら後方に張り付いても意味はない。
『俺とお前は鏡みたいなものだ。向かい合ったとき初めて本当の自分に気づく』
私は彼の機体の位置を確認する。彼の機体は西の方向にいた。私は機首を西に向け、速度を上げた。彼も機首をこちらに向け、一騎打ちの態勢をとる。彼を落とすチャンスではあるが彼もそれは同様である。操縦桿を握る手に力が入る。見えた。私はトリガーを引いた。しかし、機銃は彼の機体を掠めることはなかった。
だめだ外した。彼もミサイルを撃ったが近すぎたのか当たらなった。私は再度旋回し正面に彼を捉える。
『もう一度正面から』
私の中に迷いが生まれた。
私は彼を撃てるのか。
『撃て 臆病者』
私の気持ちが揺らぐ。
『撃て!』
その言葉を聞いた私は自然とトリガーを引くことができた。私の機体が彼の機体の横を通り過ぎ、私は後方に振り向いた。彼の機体は推力を失い、墜落した。それと同時に高空で爆発が起きた。私はまたこの空で一人だけになった。ただ大きな戦果はあった。それは決して世界を救ったこととかではない。私は不死身のエースではない。
『任務完了だ。さあ、帰ろう、俺たちの家へ。お前の帰りを待っている奴らがいる。』
2026年冬 大陸戦争並びにクーデター事件はこの日、終結した。中華連邦は解体され、国境が再度線引きされた。この戦争の末期に発生したクーデター事件は闇に葬られ、戦争とクーデター事件の真相や第207飛行隊については十年後のとある記者が書いた記事が出るまで表に出ることはなかった。
彼の視点の物語はこれで終わりです。
次はある記者の物語です
それが終われば本編に突入します。




