Last Hope
基地へと帰還した我々は上官から状況からして彼の生存は低いと判断しKIA(戦闘中行方不明)認定されたことを告げられた。神結は泣き叫び、雨乃は悔し涙を流しながら拳を壁に叩きつけた。ただそれからの二人は戦争終結の決意を改にした。ウォードック隊に欠員がでたが次の作戦までに補填されることはなかった。我々はそれからも次々と作戦に投入されたが戦果は挙げ続けた。そしてついに
「ブリーフィングを始める。作戦は最終段階に入った。中華連邦の中央まで制圧した今、首都を押え、講和のテーブルに着かせる。この作戦の成否は諸君らの奮闘にかかっている。では作戦を通達する。――――
基地から出撃した我々は友軍機とともに首都に向け飛行している。他の基地からも来た航空機で空はいっぱいだった。
『ついにここまで来ましたね。これでやっと』
『まだ、気が早くはないか?浮足たってじゃ・・・・・死ぬぜ』
神結に対して諫めるような言葉をかけているが雨乃も同じ気持ちだろう。三柱がいなくなってからの二人は彼に報いるかのように頑張ってきたと思う。彼がここにいたらなんと言うのだろうか。すると無線から緊迫した声が流れてきた。
『AWACSから各機!作戦中止!中華連邦内で連邦軍同士の撃ち合いが始まった。情報も錯綜している。全機針路をー』
その時前方に強い光と同時に衝撃が機体と体を襲った。無線から混乱した音が聞こえる。やがて衝撃がある程度収まり、見えてきた世界はいくつものキノコ雲だった。
『なんなのあれ・・・・・・』
『まさか核!?』
『AWACSからウォードック、貴隊らは針路を北西にとれ。今動けるのは君らだけだ。』
『こちらウォードック4!どういうことだ 何が起こっている?』
雨乃の困惑した声が聞こえる。普段は冷静沈着な管制官が慌てているということは状況が目まぐるしく変化しているということか。
『現在、情報を収集中だが、あの爆発が起きる前のHQ(作戦本部)からの通信を伝える。先ほど中華連邦は停戦の打診と同時に軍の一部が離反したことを伝えてきた。彼らは北西にある基地に集結している。HQは彼らの目論見がなんであれそれを阻止しろということだ。』
『まさかクーデター?』
『阻止ってなにしろって言うんだ!』
『とにかく、今、通信障害でHQと他飛行隊と連絡が取れない。奇跡的に通信できる君たちだけが頼りだ』
二人の混乱はさらに深まった。だがそれはAWACSも同じだろう。ただそれでも命令を履行しようとしている。言葉にはしていないが無線越しにそれを感じる。私たちは状況が呑み込めないまま北西に向けて飛ぶ。しばらく飛行を続けたのち再び無線が鳴る。
『こちらAWACS。先ほどHQとの通信が回復した。そして新たな情報も入った。先の爆発はやはり核兵器によるものだった。数は不明。さらに悪い知らせだ。離反した連邦軍は最後の戦争を行うことを宣言した。そしてクーデター軍が集結している基地は核兵器発射施設である。彼らがそこで何をしようとしているのか言うまでもないだろう。」
なんてやつらだ。自国内で核を使うなんて。それでも飽き足らないということなのか。今度は雨乃の声が聞こえる。
『それで俺たちになにができる?』
『君らには発射施設にあるコントロール設備を破壊してもらいたい。それさえ潰せれば核発射は不可能になる。AAMでも破壊可能だ。ただ通常の使い方ではない上に地上誘導装備もない。君たちの技量にかかっている。」
私たちに課せられた任務は今までの何よりも重く厳しいものだった。だが神結と雨乃は覚悟を決めたようだ。
『やるしかないですよ』
『そうだな やってやるぞ』
それからさらに敵基地に接近しているとレーダーに新たな機影を確認した。
『こちらAWACS 敵機急速接近 機数3!』
まずい。このままでは時間をとられてしまう。
『こちらウォードック4 おれが敵機を引き付ける。隊長たちはそのまま行け』
雨乃の機体は旋回し離れていく。
『私も一緒に―』
『だめだ。お前は隊長を守れ。このあと何があるかわからない。いくら隊長でも負担が大きい。いいな』
雨乃についていこうとした神結に対して彼はそれを止めた。それに彼女は一言
『基地で会いましょう』
雨乃はなにも答えなかった。だがそれは彼が決して死を覚悟しているからではないと感じた。なぜそう感じたかはわからない。




