旅の終着点
トラックから逃げ出し、暗闇の森を抜け、やがて朝になり東へと歩みを続ける少年はそれからさらに数日が経過していた。逃げ出したときに一緒に持っていたバッグにあった食料や水はその数を減らしていた。少年は疲労していたが歩みを止めなかった。
歩みを続ける少年は後方に強い光が現れていたことに気が付いた。距離はとても遠いところではあったがその姿ははっきりとその目で捉えていた。いくつもの大きなキノコ雲。その日少年は歴史的瞬間を目撃していた。この世界の終わりが訪れたような気がした。だが少年はそれでも歩き続けた。やがて大きな湖と無機質な建物が乱立する場所にでた。しかし、とても穏やかな雰囲気ではなかった。鳴り響く警報音、爆発。そして戦闘機の轟音。空に二機の戦闘機が見えた。その一機のうちの翼にはオレンジ色。オレンジの機体は高度を下げトンネルに突っ込んだ。しばらくして地面から空に出るオレンジを見た。その後、もう一機が合流し並んで飛行していたがオレンジの横の機が突如その機の前にでて爆発した。その機体は下へと落ちていき空中で爆散した。それと同時にもう一機、雲の中から現れた。オレンジの機体と対峙するように。
私は中東のある国、今紛争が発生している国の国境線の街に来た。その人物は傭兵として現地で戦闘に参加していた。私が取材を申し込んだところ了承してくれた。その人物は元日本帝国空軍コールサインウォードック2。三柱高原「彼」の元同僚にして相棒だった男。そして、
「久しぶりだな。坊主。」
あの日、少年が 私がその男と別れて以来の再会となった。
「質問される前に先に質問していいか? 何で殺さなかった?」
私は気づいていた。この男を路地裏で見つけたときから。男はその時、パイロットスーツを着ており肩に日本の国旗があったからだ。そして肩にはもう一つマークがあった。そのマークは空で見た戦闘機にあったものと同じ。つまり私の両親が死ぬ原因、仇である。
最初、私は男を殺すつもりだった。だが、彼と交流を繰り返すことで気づいてしまった。相手はどこにでもいる人間だった。街にいるような大人と変わらない。
私の想いを聞いた彼はあの時と同じように笑顔でそうかと言ってくれた。
「聞きたいことも聞けたから質問に答えよう。どこから話をすればいい?」
俺が第207飛行隊に配属されてあいつの相棒になってからしばらくの時が経ったとき大陸派遣の辞令が来た。大陸に派遣されても俺たちはなにも変わらなった。ただ、相棒には変わってもらいたかった。相棒は連邦軍の日本侵攻時からずっと戦ってきた。その度に一人帰還してきた。それがつらかっただろう。俺が相棒と一緒に出撃して気づいた。周りからも言われていたこともあっただろうがいつしか相棒も周りも不死身だと思うようになった。相棒は死にたがっていたというよりかは過激な度胸試しみたいなもんだったのだろう。どこまで行けば死ねるのだろうとな。だから、俺はいつも生き残るぞと相棒に声を掛けてきた。そして帰還したら生き残れたなと声を掛けた。不死身のエースってのは戦場で長く生き延びたやつの過信だ。相棒が生き残って来れたのはそれなりの理由があるからだ。だから、俺は相棒に付いていった。あいつに付いていけば生き残れる。
俺はあの日、いつも通りに出撃した。だがいつも通りではなかった。市街地上空での戦闘だったから神経を尖らせていた。だからか、俺が撃墜した戦闘機が民家に落ちたときはすごく動揺した。そして、俺自身も落とされた。だが、俺は生き残った。敵地のしかも攻撃した街にいた。俺はここで死ぬのだと思った。そこに少年が現れた。少年は俺を救ってくれた。しかし、少年が案内したところはあの民家の跡地だった。俺はこの少年に殺されると思った。結局、俺の予想は外れた。街に戦火が近づいていたとき少年が街を脱出する決意したとき俺はこの少年を守ろうと思った。守ることができるのは俺だけだ。だから、あの森で連邦軍に拘束されたときその役目は潰えたと考えた。
拘束され移送されるトラックの中で正面に座る将校が俺に声を掛けてきた。
「君は、敵国の少年を守った。そんな君は戦争の当事者としてこの戦争をどう見る?」
「この戦争で俺たちが正しくてお前たちが悪だとは考えていない。この戦争では誰もが被害者で誰もが加害者だ。」
俺はその将校にそう言ってやった。向こうはこっちが悪いとでも言うのだろうと思っていたが俺の予想はまたもや外れる。
「そうだ。この戦争に正義なんてない。開戦なんて国民の後押しで始まったようなものだ。だが政府も軍も勢いでどうにかしようとした。祖国はもうすぐ降伏する。連合軍の進駐が始まり、世界は再び次の戦争に備える。」
やはり、戦争の終結は近いようだ。将校は話を続けた。
「だから、我々は蜂起する。だが、その蜂起は軍上層部に対するものではない。戦争による悲劇をおこさないためのものだ。我々は核を使い、全ての国境線を吹き飛ばし、国という縛りから解き放つ。」
俺はとんでもない計画を聞いた。だが、俺はその考えを否定することができなかった。
「君も気づいているだろう? 争いの火種が何か。世界は一度リセットされるべきだ。」
「それを俺に話してどうするつもりだ?」
「君には戦闘機に乗ってもらいたい。この戦いに賛同してくれる同志は多いが戦闘機パイロットが少ない。もし発射施設が攻撃を受けた場合は特別機からのコントロールを行う。君はあのオレンジの部隊の仲間だろ?君に希望を託したい。」
俺は悩んだ。これからやることは大虐殺だ。その汚れ役。だが、大きなことを成すには大きな代償が伴う。
「いいだろう。その希望を引き受けよう。ただし、私は賭けにでるつもりだ。もし明日に未来に希望を抱くものが現れたときは諦めるんだな。」
俺は何となくだがこの計画を阻止しにあいつが来るのではないかと思った。俺は簡単に負けるつもりはない。もしあいつが明日を見ていなかったらあいつは死ぬ。あいつの意思に最後は賭けてみようと思った。
「結果、あいつは生き残った。本当なら俺はあそこで死んでるはずだった。だが生きている。せっかくだから世界を見てみようと思った。相棒が救った世界を。俺がここにいるのは国境線の意味を知りたくてね。」
彼はそう言って国境線のある方向を向いていた。
結局、オレンジの「彼」の核心に迫ることはできなかった。「彼」は戦争で生き残ることを実際はどう考えていたのか。相棒だった男と敵として再会し戦い何を想い考えたのか。ただ、「彼」の正体は恐怖や畏怖の対象、英雄と呼ばれるような人物とは違ったものだった。「彼」に関する物語はここで終わる。だが戦争は終わっていない。大陸戦争は世界に大きな波を作り、それは今も広がり続けている。「彼」は自身が守った世界をどう見ているのだろうか。
私は最後に何かあるか聞いてみた。
「そうだな、・・・・・もし、あいつに会えたら伝えてくれ。
よお、相棒。 まだ生きているか。」
この話を読んで気づいたと思われますが、エスコンゼロと4の合わせみたいになっています。最後とかはゼロそのままですが、設定や登場人物については本家とは違います。私の大好きな作品であり、それっぽいのを作ろうと思っていたらフレーズとかを使ってしまいました。
次回から本編なのでここまでは遊びということで




