ある男の記憶
前日単的なものです
分厚く暗い雲。この雲の上には青空が広がっているのだろう。正面にはアンノウンが一機。こちらは先ほどまでは僚機が一機残っていたが今、目の前にいるやつに撃ち落された。AWACSからの警告が聞こえた直後であった。無線から声が聞こえる。AWACSからじゃない。
「まだ生きているか? 相棒」
―六か月前―
第二次世界大戦が終結後、急速に力をつけ、ソ連やアメリカに並ぶ国力と広い国土を持っていた中華連邦。だが二〇一〇年から始まった経済不況による財政難に陥っていた中華連邦は、各地方の独立を許した。そんな中、大量の原油が発見された日本海に目を付けた中華連邦はかつての栄えある連邦を取り戻すことをスローガンに二〇二六年、独立した大陸沿岸諸国と東南アジアにある国々だけに収まらず油田の利権を持っていた日本帝国に宣戦布告。それと同時に各方面に侵攻を開始した。連邦による電撃作戦により各国は混乱し、敗走と敗北、占領された。開戦からひと月で戦線は日本にまで及んだ。そしてついに連邦軍が北九州に上陸。一時的に占領されてしまう。連邦が中国地方にまで侵攻してきたため首都京都の手前に帝国軍、在日米軍、侵攻された各国がようやく足並みを揃え、残党軍で結成した自由アジア連合軍の三軍共同の絶対防衛線を構築していた。世界はこのまま、中華連邦の勝利に終わると思われていた。だが、そんな暗雲を切り裂く飛行隊が現れた。彼らは連邦軍機を次々と撃ち落し、敗走に追い込んだ。連邦軍は勢いを失い、連合軍は反撃へと移り、西日本を奪還、日本帝国軍並びにISAFは大陸に上陸、沿岸地域にあった国を取り戻した。そこでも活躍した飛行隊がいた。それが、
「我ら、ウォードック!!」
そう長々と話し、まるで英雄譚のように語る男は、最後にそう締めた。
「話が長い。」
たしかに長い。彼女、三番機の神結陽七少尉の言葉に内心同意した。彼女は軍人らしくない清楚なお嬢様のような女性だ。彼女の長く黒いしなやかな髪はそのイメージにとても似合う。そんな風に思い見ていたところ彼女と目が合った。だがすぐにそらされた。ほんのり頬が赤く見える。彼女とはよく目が合うが気のせいだろうか。
「だってよぉ、暇なんだよ」
長々と話した上に不満を言う男は雨乃武少尉。彼は神結少尉とエレメントを組み、四番機に乗っている。彼はあまり素行が良いとは言えない。彼にはパイロットよりも頭に「ヤ」がつく仕事にいる方がしっくりくる。ただ中身はとてもやさしい。見た目のわりにおばちゃん子とはよく言えたものだ。
「でも、我らというよりかはほとんどの戦果は隊長のおかげですよね。」
神結はそう言ってこっちを見てきた。なぜ、こっちに話を振る。そんな笑顔でこっちを見るな。
「おいおい、俺も活躍してたじゃねぇか。」
「なにを言っているのですか?あの時だってーーー」
二人がどうでもいい言い争いを始めている中、私の向かいに座る男はその光景を面白そうに眺めていた。私は彼こそがこの飛行隊のエースだと思っている。私とエレメントを組んでいる二番機であるため空戦では私の動きに合わせてカバーをしてくれる。立ち回りが上手い。そう思いながら彼を見ているとこっちに気が付いた彼は私に話しかけてきた。
「相変わらず愉快だな。 相棒 」




