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想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―  作者: ベルナルド
一章 緑等級編

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第8話 答える「想い」


 最後の試験は、最初の日と同じ場所だった。


 無機質な壁。

 高い天井。

 踏みしめると、音の響く床。


 ――ここで、俺は何もできなかった。


 あの日の記憶が、嫌でも蘇る。

 目の前が見えず、何が起きたのかも分からないまま、吹き飛ばされた。


 けれど今は。


「……ここですね」


 静かに息を整える。


「懐かしいでしょう?」


 吉沢が、部屋の中央に立っていた。

 あのときと同じ、目隠しをしたまま。


「卒業試験です」


 軽い声。

 だが、その奥にある緊張は、俺にも分かった。


「条件は変わらない。僕に拳を当てろ」


 俺は一歩、前に出る。


「……今回は、前みたいにはいかない」


 それは挑発じゃない。

 誓いだった。


 吉沢は、口元を緩める。


「やってみな、少年」


 合図はなかった。


 踏み出した瞬間、空気が変わる。


 ――速い。


 だが、前とは違う。

 体が、ついてくる。


 床を蹴る感覚。

 重心の移動。

 想力が、必要な分だけ、必要な場所へ流れていく。


 無駄がない。


 吉沢の拳が迫る。

 受け止める。


 衝撃は重い。

 それでも、耐えられる。


「……成長したね」


 短く、そう言われた。


 だが――


 当たらない。


 踏み込めば、そこにいない。

 狙えば、すでに外されている。


 分かっている。


 俺のあの技には、

 ほんのわずかな“溜め”が必要だ。


 そして、殴るという動作そのものが、隙になる。


 吉沢は、そこを逃さない。


 踏み込もうとした瞬間、懐に入られる。

 想力を集める前に、距離を潰される。


 ――届かない。


 それでも。


 胸の奥が、熱い。


 思い浮かぶのは、あの日の自分。

 何も知らず、何もできなかった俺。


 それでも、ここまで鍛えてくれた。


 逃げずに。

 投げ出さずに。

 見捨てずに。


 ――感謝している。


 だから。


 見せなきゃいけない。


「……先生」


 拳を、突き出す。


 想力を、溜めない。


 ――撃ち出す。


 衝撃が、拳先から弾丸のように飛んだ。


「……っ!」


 フィストガン。

 右腕の血管が裂けるような衝撃が流れる。

 反動で、体が後ろに流れる。

 でもそれが狙い、その勢いを、次の一歩に変える。


 止まらない。


 拳を振る。

 想力を叩き込む。


 フィストブラスト。


 一撃で終わらせない。

 続けざまに、放つ。


 隙を消す。

 動きを止めない。


「――!」


 吉沢が、一瞬だけ、判断を誤った。


 衝撃が、掠る。


 次の瞬間。


 空気が、歪んだ。


 衝撃が、弾かれる。


 ――式想。


 吉沢が、無意識に力を使っていた。


 沈黙。


 俺は、立ち尽くす。


「……」


 やがて、吉沢が笑った。


「参ったな」


 目隠しの奥で、確かにこちらを見ている気配。


「負けても、諦めなければ合格にするつもりだったのに」


 一歩、近づいてくる。


「でも……」


 肩をすくめる。


「予想以上だ。自由すぎる」


 胸の力が、抜けた。


「合格だよ、少年」


 その夜。


 吉沢は、荒木に報告した。


「彼は……凄まじい男になるかもしれません」


 少し、間を置いて。


「“想い”の使い方が、もう違う」


 電話の向こうで、荒木が笑った。


「そうか」


 短く、それだけ。


 だが、その笑いには、確かな期待が混じっていた。


 訓練場の天井を、思い出す。


 ここで、俺は答えた。


 ――鍛えた想いで。

あとがき

そういえば主人公の式想についての描写はあるんですが明確に書いていないので軽く説明を書きます。

式想:放出 想力を体外に放出する。

縛り:拳しか想力を放出できないかわりに威力と自由度を高める。

この縛りは二話で主人公が強く念じた結果生まれたものです。

他のキャラも縛りがある場合があります。

能力や縛りなんかはあとがきでちょこちょこ書いていきます!

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