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想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―  作者: ベルナルド
四章 修行編&吉沢編

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第71話 謎めく「想い」②

 吉沢は、始点の動きを洗っていた。


 誰が。

 いつ。

 どこで、何をしていたのか。


 御前試合当日を軸に、

 時系列を一つずつ埋めていく。


 そこで――

 一人、いない者がいた。


 鳴海怜。


 想界連合本部へ向かう。


「確認したいことがある」


 受付に告げる。


「現在、鳴海怜はどの任務についている?」


 端末を操作する職員。


鳴海怜なるみれい様ですね」


「現在は、アメリカでの調査任務に就いています」


「……アメリカ?」


 思わず、眉が動いた。


「どうして、海外だ?」


「記録にない黒等級想獣が確認されまして」


「人型で、獅子の姿をしているとの報告です」


 ――獅子。


 血の気が引く。


「……くそ」


 あの時。


 自爆したように見せて、

 逃げたとしか思えない。


 完全に、見誤った。


 自分の失態に、歯を食いしばる。


 だが。


 それでも、腑に落ちない。


「……なぜ、彼女が?」


 鳴海怜は、

 戦闘専門というタイプではない。


 疑問を口にすると、

 職員は少し困った顔をした。


「ご本人が、そう仰っていまして」


「海外旅行も兼ねて、行くと」


「転神町では、ずいぶん働かされましたから、と」


 ……何も、言えなかった。


 確かに。


 彼女は、働いていた。


 表でも、裏でも。


 吉沢は、連合を出る。


 また、振り出しだ。


 裏切り者を見つけるのは、

 そう簡単ではない。


 なら。


 彼女が戻るまで、保留。


 その間に、別の線を探る。


 次の疑問。


 なぜ、あの四人だったのか。


 始点であること。


 それぞれが、罪を抱えていたこと。


 だが――


 罪など、誰でも持っている。


 それだけでは、共通点にならない。


 他に、何か。


 何か――


 思考を巡らせた、その時。


 ふと、

 天舞優華てんまいゆうかの言葉が、脳裏をよぎる。


 彼女の罪は、怠惰。


 そして。


 夕陽町。


 あの町で、ウイルスがばら撒かれた。


 確か――

 あの事件には、上層部も関わっていた。


 つまり。


 始点全員が、

 何らかの形で関与していた可能性。


 だが。


 夕陽町事件は、秘匿案件。


 資料は、吉沢の権限では開けない。


「……くそ」


 思わず、悪態が漏れる。


 だから、上層部は嫌いだ。


 吉沢は、荒木のもとを訪ねた。


「どうした?」


「お前も修行しに来たか?」


「いえ」


 首を振る。


「違います」


「じゃあ、何だ」


 荒木の視線が鋭くなる。


「……夕陽町について、聞きたいんです」


 一瞬。


 荒木の表情が、曇った。


「あの事件か」


「俺も、詳しくは知らない」


「最初から、除け者にされてた」


「反対してたからな」


 淡々と、語る。


「最初は、楽座家と鳴海家が動いた」


「だが、規模が大きすぎた」


「もう、間に合わなかった」


 そこで。


「天舞家に話が行った」


「愛華が、殲滅した」


 空気が、重くなる。


「その結果」


「想界石の修正力が、過剰に働いた」


「しばらく、人々に違和感が残った」


「上層部は、黒歴史として秘匿した」


 荒木は、そこで言葉を切る。


「俺が知ってるのは、そこまでだ」


 一拍。


「……噂だが」


「生き残りがいるって話は、あった」


「真偽は、不明だ」


 なるほど。


 点が、また一つ繋がる。


「お前が何を調べてるかは聞かない」


 荒木が言った。


「だがな」


「この事件は、やべえ匂いがする」


「上層部も、黙ってない」


「深入りすると――」


 視線が、鋭くなる。


「戻ってこれない可能性もある」


「気をつけろ」


「……もちろんです」


 吉沢は、微笑んだ。


「少し、気になっただけです」


 荒木のもとを去る。


 だが。


 一度、踏み入れた場所から、

 簡単に引き返すことはできない。


 次の日。


 吉沢は、夕陽町へ向かっていた。

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