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想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―  作者: ベルナルド
一章 緑等級編

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第7話 鍛える「想い」

訓練は、毎日続いた。


 走る。

 殴られる。

 立ち上がる。


 同じことの繰り返しのはずなのに、体は確実に変わっていった。

 筋肉がついた、という単純な話ではない。


 ――感覚が、研ぎ澄まされていく。


 拳を振る前。

 足を踏み出す前。

 胸の奥で、何かが揺れる。


 それを、吉沢は見逃さなかった。


「今のだ」


 訓練の合間、吉沢が言う。


「今、君は“想い”を動かした」


「……想い?」


「そう。想力の元だ」


 床に腰を下ろしながら、彼は続けた。


「想獣ってのはな、人々の想いが歪んで固まったものなんだ」


 俺は、あの夜の化け物を思い出す。


「怒りとか、悲しみとか……?」


「それだけじゃない。願いも、未練も、後悔も」


 吉沢は指を鳴らす。


「想界と現世の距離が近づくと、そういう“塊”は現れやすくなる」


「距離……?」


「完全に別の世界ってわけじゃないってことさ」


 それが、想界。


 吉沢の言葉は簡潔だった。


「人々の魂が集まる場所だ。

 本来、生きてる人間は触れられない」


 そこで、俺を見る。


「でも、式を持つ者は別だ」


「式……」


「想力を顕現させる“器”。ごく一部の人間しか持たない」


 俺は、無意識に拳を握っていた。


「式に、自分の意志――色を込めたものが式想だ」


「色……」


「能力の個性、って考えていい」


 吉沢は軽く笑う。


「つまり、君の拳は“君自身”ってこと」


 その言葉は、不思議と胸に残った。


 休憩の時間、別の話も聞かされた。


「最初に想界師になった人間が、四人いる」


 楽座、鳴海、荒木、天舞。


「その血を引く家系を、名家って呼ぶ」


 鳴海の名を聞き、思い出す。


「……号という青年も?」


「そう。鳴海家だ」


 吉沢は少し間を置いてから続けた。


「鳴海家は、御生万って城を守ってる。

 想界石がある場所だ」


 想界石。

 詳しい説明はなかったが、重要なものだということは分かった。


「で、その鳴海家の問題児が――鳴海 号」


 問題児、という言葉に少し驚く。


「式想は纏雷。雷を纏う能力だ」


 だが、と吉沢は続ける。


「消耗が激しすぎる」


 だから、縛りを設けた。


「チャージ動作を入れて、一撃にすべてを賭ける」


「本人の想力じゃ、扱いきれないからね」


「才能はあるのに、鳴海家じゃ評価されなかった」


 それを変えたのが――


「僕の上司だ」


 荒木 相馬。


「式想は重装。

 “重ねる”能力だ」


 一度でダメなら十度。

 十がダメなら百。


「切れるまで、重ねればいい」


「……強すぎません?」


「黒等級だしね」


 あっさり言われた。


「性格は割と適当ですよ。

 号を弟子にした理由も、金持ちそうだったからですし」


 思わず、変な笑いが出た。


 他にも、南 良々という医者の話を聞いた。


「式想は万粘。万能なスライムを使う支援型だ」


 治すことしかできない。

 その代わり、完璧に治す。


「戦えない、って縛りがありますからね」


 あのギャルが、そんなすごい人だったとは。


 話を聞くほど、世界は広がっていった。


 同時に、思う。


 ――自分は、まだ何も知らない。


 だが。


 拳を振ると、以前よりも想力が自然に流れる。

 溜める時間も、少しずつ短くなっている。


「いい感じですね」


 ある日、吉沢が言った。


「そろそろ、卒業試験といこうか」


「……卒業?」


「一か月の締めくくりさ」


 彼は、いつもの軽い笑みを浮かべる。


「ルールは簡単」


 俺を見る。


「僕に一発、当ててみろ」


 胸の奥が、静かに熱を持った。


 ――鍛えた想いは、

 もう、逃げない。

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