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想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―  作者: ベルナルド
四章 修行編&吉沢編

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第69話 謎めく「想い」①

 闘技場へ向かう道を、

 一人で歩いていた。


 足音だけが、やけに響く。


「あ、吉沢よしざわさん」


 声をかけられ、立ち止まる。


「今日は、どんなご用事で?」


 警備の若い職員だった。


「少しね」


 笑って答える。


「調査をしようと思って」


「調査、ですか?」


 職員は首を傾げた。


「闘技場については、もう楽座家が――」


「分かってる」


 遮るように言う。


「でもさ」


 少し間を置く。


「僕、気になると我慢できない性分でね」


「中、少し見せてもらってもいいかな」


 一瞬、迷った顔。


 それから。


「……本来はダメなんですが」


「吉沢さんなら、信頼できます」


「どうぞ」


「ありがとう」


 そう言って、闘技場に足を踏み入れた。


 内部は、静まり返っていた。


 現在、闘技場は再改造中だ。


 楽座家による、全面的な結界再設計。


 だが――


 調べれば調べるほど、

 違和感が積み重なる。


 結界の吸収量。

 回復量。


 想定以上に、自由が利く。


 操作性が、高すぎる。


 脆弱性を潰すための再設計。

 表向きは、そうだ。


 だが。


 完成してしまえば、

 “痕跡”は消える。


 証拠も、意図も。


 ――まずいな。


 闘技場で起きた“ゲーム”。


 まだ、分からないことが多すぎる。


 なぜ、彼らは侵入できた?


 なぜ、四人だった?


 秩序に近い四人。

 確かに、象徴的だ。


 だが、それなら――

 上層部を狙えばいい。


 なぜ、罪を“自覚させる”必要があった?


 考えるほど、

 疑問が増えていく。


 だから。


 僕は、独断で調査することにした。


 上層部も。

 楽座家も。


 完全には、信用できない。


 荒木さんに頼る手もある。


 だが――

 彼は、目立ちすぎる。


 まずは。


 闘技場で解決すべき謎。


 誰が。

 どうやって。

 結界を改造したのか。


 結界は、展開されれば出入りできない。


 それが、元々の設計だ。


 侵入するなら、

 観客として入るしかない。


 だが、観客なら――

 身分は残る。


 記録室に向かう。


 閲覧ログを、洗う。


 ……何もない。


 不自然なほど、きれいだ。


 そもそも、

 部外者は、この一帯に入れない。


 では。


 総会議前日の“祭り”。


 屋台。

 スタッフ。

 一時的な出入り。


 そこに紛れ込む。


 そして。


 結界展開まで、待機。


 楽座家が、最終調整に来る。


 その瞬間。


 楽座家しか通れない結界を解除。


 侵入。


 操作。


 ここまでは、筋が通る。


 だが――


 問題がある。


 楽座家がいなければ、

 “出られない”はずだ。


 ……待て。


 結界制御室へ向かう。


 扉の前。


 僕の権限では、弾かれる。


 当然だ。


 血統以外は、通れない。


 ――いや。


 思考が、繋がる。


 荒邦。


 あの男だ。


 最後の言葉が、頭をよぎる。


 壮吾は、荒邦と契約していた。


 決勝戦。


 荒木家の想力吸収量だけが、操作されていた。


 その操作は。


 最終調整“後”に、行われた。


 つまり。


 荒邦が来ることを、

 彼らは知っていた。


 だから、出られた。


「……なるほど」


 小さく、息を吐く。


 なんて、連中だ。


 だが。


 もう一つ、問題が残る。


 どうやって。


 荒邦が来ると、事前に分かった?


 噂は、あった。


 だが、

 何をするかまでは、誰も知らなかった。


 当日まで。


 それを知り得るのは――


 内部だ。


 近い位置にいる誰か。


 ……裏切り者。


 胸が、重くなる。


 身内を、疑いたくはない。


 だが。


 可能性は、否定できない。


「……くそ」


 言葉が、漏れた。


 まずは。


 鳴海家。


 そして、楽座家。


 調べるしかない。


 そう決めて、

 僕は歩き出した。


 ――真実は、まだ遠い。


 だが。


 確実に、近づいている。

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