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想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―  作者: ベルナルド
三章 始点総会議編 前編

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第51話 託された「想い」

「続く次鋒!」


 司会の声が、闘技場に響く。


「眼帯を付けながら、すべてを見抜く男!」

「金等級最強――吉沢 源!」


 観客がざわめく。


「対するは――」

「その眼はまさに鷹の目!」

「同じく、すべてを見抜く男!」

「鳴海 壮吾(なるみ そうご)!」


 静かに、二人が向かい合った。


「――試合、はじめぇ」


 ◆


 動かない。


 吉沢も、壮吾も、

 互いの間合いを探るように、ゆっくりと歩く。


 足音だけが、闘技場に響く。


 観客は、息を呑んだ。


「……きりがないな」


 先に動いたのは、吉沢だった。


 回し蹴り。


 鋭く、速い。


 だが――


 壮吾は、紙一重で避ける。


 避けながら、

 死角から刀を振るった。


 ――が。


 吉沢は、まるで見えているかのようにかわす。


 そして。


 踏み込む。


「――蹴破衝撃(ショットインパクト)」


 足から、強烈な衝撃。


「残念だけどね」


 吉沢は、笑った。


「僕、そもそも見えないから」

「死角も何もないんだ」


 壮吾は回避する。


 だが、蹴りそのものではなく――

 込められた衝撃が、放たれる。


「……っ!」


 足を擦らせながら、

 壮吾は後方へ吹き飛ばされた。


「なるほど……」


 壮吾が、口角を上げる。


「厄介な体だ」


「それは君もさ」


 吉沢は、軽く息を整える。


(あの眼……)


 すべてを、正確に視認している。


(見えすぎる、か)


「皮肉な対決だね」


 大振りは当たらない。


 近づけば、避けられる。


(万事休す……?)


 だが。


 それは、相手も同じだった。


「……なら」


 吉沢の声が、低くなる。


「荒木家らしく、やらせてもらう」


 拳を、地面へ。


「――震破衝撃(グラードインパクト)!」


 轟音。


 衝撃が地面を走り、

 闘技場の中央に亀裂が走る。


 ひび割れ、

 崩れ落ちるステージ。


「なっ……!」


 壮吾が、体勢を崩す。


 そのまま、

 崩れた足場の下へ落ちかける。


「これで――」


 吉沢は、壊れた足場を軽々と飛び移り、

 距離を詰めようとした。


 ――その瞬間。


「……っ!」


 吉沢の体が、ぐらりと揺れる。


(まずい……!)


 瓦礫を掴む。


(……!?)


 想力が――

 異常な速度で、奪われていく。


(結界……!?)


 破壊すれば、吸われるのは分かっていた。


 だが。


(これは……想定外だ)


 立て直した壮吾が、不敵に笑った。


「やはり、貴様は強い」


「だから」

「準備しておいて正解だったよ」


「……まさか」


 吉沢が、睨む。


「結界を、いじったのか」

「君たちの信念はどこにいった」


「信念?」


 壮吾は、鼻で笑う。


「もちろん、あるさ」


「――勝者こそが、正義だ」


「おとなしく」

「自分の技で死ね」


(……っ)


 想力が、尽きかけている。


(このままじゃ……)


 吉沢は、歯を食いしばった。


「……なら」


 最後の力を振り絞り、

 壮吾へ飛び込む。


「君も、落ちろ!」


 抱きつき、

 衝撃を流す。


「ぐはっ!」


「離せ――!」


 二人は、

 崩れたステージの下へ落ちていく。


 ――だが。


 先に、

 ステージへ這い上がったのは。


 壮吾だった。


「……なんということだ!」


 司会の声が、震える。


「吉沢 源、敗北!」

「次鋒は、鳴海家の勝利!」


 ◆


「吉沢さん!!」


 大地と号は、

 試合終了と同時に駆け出した。


 崩れた瓦礫。


「どこだ……!」


(……まさか)


(死んだ……?)


 その瞬間。


 ――手が、動いた。


「いた!」


 二人で石をどける。


 そこにいたのは――

 いつもの吉沢だった。


「……面目ない」


 申し訳なさそうに、笑う。


「一体、何が……!」


 支えながら、ベンチへ運ぶ。


「自爆したわけじゃないよ」


 吉沢は、静かに言った。


「技を打った直後に」

「凄まじい勢いで、想力が奪われた」


「ステージ破壊で吸われるのは想定内だった」

「でも……あれは異常だ」


「多分」

「奴ら、細工した」


「そんな……」


 大地が、息を呑む。


「でもね」


 吉沢は、目を伏せる。


「僕が油断してたのも事実だ」


「結界の細工なら」

「楽座家も関わってるだろう」


「今さら、何を言っても無駄だ」


「……くそっ!」


 号が、壁を殴る。


「どこまで卑怯なんだ……!」


 吉沢は、号を見る。


「結果的に」

「君にバトンを渡す形になった」


「烈は、君より何倍も強い」

「それに……仕掛けもある」


 一拍。


「でもね」


 穏やかに、続ける。


「烈の精神は、どこまでも一人だ」


「だけど君は違う」


「僕たち」

「荒木さん」

「そして、もっと多くの人と関わってきた」


「君は、一人じゃない」


 拳を、突き出す。


「だから」

「あとは、任せた」


「頑張れ、号」


 大地も、拳を出した。


「俺も」

「お前を信じる」


 拳が、重なる。


 号の胸に、

 何かが、溶けていく。


 長く、凍りついていたものが――

 解けていく感覚。


「……はい」


 夕暮れ。


 闘技場が、赤く染まる。


「なんという闘いだ……!」


 司会が、声を張り上げる。


「まさかの結末!」

「ステージ破損により、少々時間を要しましたが――」


「これが、最後です!」


「すべての想いは」

「大将戦に、託された!」


 歓声。


「荒木家に入ってから」

「突如、才覚を現した男!」


「その成長は、止まらない!」


「鳴海 号!!」


 対するは――


「凶暴すぎる男!」

「その力は、黒等級にも届きうる!」


「鳴海 烈!!」


 烈が、嗤う。


「逃げるなら」

「今が最後だぞ、弱虫」


 号は、真っ直ぐに睨み返す。


「悪いな、兄さん」


「あんたらの作戦通りには」

「いかない」


「俺は――」


 拳を、握る。


「みんなの想いを、背負ってる」


「負けるわけにはいかない」


「……何の話かは知らんが」


 烈が、肩を鳴らす。


「そこまで死にたいなら」

「かかってこい」


「――試合、はじめぇ!!」


 号は、目を閉じる。


(必ず、勝つ)


 その瞬間。


 過去最大の雷鳴が――

 号の全身から、迸った。


あとがき

鳴海 壮吾

式想 俯瞰

特徴 自身の眼を強化して鷹の目のようにすることで相手の技や動きを見抜く。

基本的には剣術を用いる。


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