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想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―  作者: ベルナルド
三章 始点総会議編 前編

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第41話 潜む「想い」

「ハハハ! ようやく来たぜ!」


 やたらと通る声が、ロビーに響く。


「この俺が来たからには、もう大丈夫だ!」

「全員蹴散らして――妹に褒めてもらうぞぉ!」


「ガハハハハ!」


 ……うるさい。


「ん?」


 翔が、こちらに気づいた。


「おおっ!」

「そこにいるのは、恩人たちじゃないか!」


 勢いよく駆け寄ってくる。


「会いたかったぜぇ!」


 抱きつこうとした瞬間。


 俺と号は、同時に一歩ずれる。


「ぐはっ!」


 盛大に、転んだ。


「な、なぜ避ける!?」


 すぐに立ち上がり、勝手に納得する。


「そうか……」

「照れてるんだな?」


「ハハハ!」

「素直じゃないやつらめ!」


 一人で完結している。


 俺と号は、無言で顔を見合わせた。


 ――そのとき。


「翔」


 澄んだ声。


「人様に、迷惑をかけてはだめでしょう」


 振り向く。


 そこには、

 凛とした美しさをまとった女性が立っていた。


 その後ろに、

 少し控えめな女性。


「す、すまない……優華様」


 翔は、急に姿勢を正す。


「この二人は」

「転神町で、俺を救ってくれた恩人なんだ」


「それで」

「つい、興奮してしまって……」


「そう」


 女性は、微笑んだ。


「それは、失礼しました」


 一歩、前に出る。


「うちの翔を救っていただき」

「ありがとうございます」


 俺たちは、慌てて頭を下げた。


「い、いえ」

「こちらこそ、助けられました」


 すると。


「ちょっと」


 今度は、後ろの少女が声を出す。


「お兄ちゃん」


 瑠偉だった。


「号さまに」

「迷惑かけちゃ、だめでしょ」


 ……号を見ないようにしながら、

 ちゃんと号に向けて言っている。


「お兄ちゃんでも」

「号さまに迷惑かけたら」


「嫌いになっちゃうよ?」


 翔の顔が、凍りついた。


「え」


「え?」


「えぇぇぇ……」


 世界の終わりみたいな顔。


「ごめんよ瑠偉ぃぃ!」

「もう迷惑かけないから!」


「嫌いにならないでぇぇ!」


 泣きつく。


 号は、慌てて手を振った。


「ち、違う」

「迷惑だとは、思ってない」


「号さまが」

「そう言うなら……」


 瑠偉は、こくりと頷く。


「じゃあ」

「お兄ちゃんのこと、嫌いにならないわ」


「ありがとう号くぅん!」

「恩人だぁぁ!」


 ……相変わらず、騒がしい。


 でも。


 不思議と、空気が軽くなった。


 その様子を、

 優華は静かに見ていた。


「そういえば」


 ふと、こちらを見る。


「自己紹介が、まだでしたね」


 一礼。


天舞 優華(てんまい ゆうか)と申します」

「どうか、よろしくお願いします」


 ――天舞。


 胸が、跳ねた。


 つまり。


「……本家」


 思わず、声に出る。


「はい」


 微笑みは、崩れない。


 俺が名乗ろうとした、その瞬間。


「近藤大地さん、ですよね」


「……え?」


 驚いていると、

 優華は申し訳なさそうに言う。


「翔につられてしまいましたが」

「今のあなた」


「かなり、噂になっています」


「……噂?」


 聞き返すより早く。


 別の扉が、音もなく開いた。


「ちっと」

「静かにできないのかね」


 低く、不機嫌な声。


「うるさい連中だ、まったく」


「にぎやかで」

「いいじゃないですか」


 別の声が、応じる。


 そこにいたのは。


 荒々しい雰囲気の男と、

 背が高く、物腰の柔らかそうな男。


 場の空気が、

 また一段、張りつめた。

 

 優華は、その様子を見て、

 ほんの一瞬だけ――

 影の中に、視線を落とした。


 足元。


 彼女の影が、

 わずかに揺れる。


 けれど。


 すぐに、何もなかったように戻る。


 優華は、また“完璧な微笑み”を浮かべた。

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