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想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―  作者: ベルナルド
二章 歓楽街転神町編

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第36話 残された「想い」

 ――その後は、驚くほどあっさりと終わった。


 あれほど激しかった戦いが嘘のように、

 転神町には、夜明け前の静けさが戻っていた。


 俺たちは、なんとか逃げ延びた人たちと合流した。


「……おじさん……」


 瑠偉が、辺りを見回す。


 その目は、必死だった。


「来枝さんは……?」


 誰も、すぐに答えられなかった。


 沈黙の中で、俺が、口を開いた。


「……仇は、討った」


 一瞬、瑠偉は理解できていないようだった。


「……え?」


「来枝さんは」

「自分の役目を果たして……死んだ」


 瑠偉の膝が、崩れ落ちた。


「……約束したのに……」


 震える声。


「一緒に、生きて帰るって……」


 拳で地面を叩く。


「……ばか……」

「おじさんの……ばか……」


 泣き崩れる背中を、

 誰も、すぐには抱き寄せられなかった。


 そこへ。


「……おーい、生きてるかー」


 間の抜けた声。


 振り返ると、吉沢がいた。

 その横で、号が担がれている。


「……号!」


「おー……死んでねぇよ……」


 力の抜けた声。


「……荒木さん、来てくれたんですね」


 吉沢が言う。


「あたりめぇだろ」


 刀を肩に担いだ男が、鼻で笑う。


「かわいい弟子が死にかけてんだ」

「来ねぇ理由がねぇ」


「どうせ」

「強いやつとやりたかっただけでしょ」


 号がぼそっと言う。


「……まったく」

「かわいくねぇ弟子だな」


 荒木は嘆くように肩をすくめた。


 そのとき。


「よう、少年」


 低い声。


 振り向くと、安室が立っていた。

 全身、ボロボロだが、立っている。


「生きてたか」


「……あんたもな」


 俺が言うと、安室は小さく笑った。


「お前らのおかげで」

「この町は、守られた」


 一拍。


「だがな」


 拳を握る。


「この町は、俺の町だ」

「今度は――」


 視線が、強くなる。


「俺の命が尽きるまで」

「守り切ってみせる」


 俺は、拳を突き出した。


 ――コツン。


 二つの拳が、ぶつかる。


 その瞬間。


「なんじゃ」

「もう終わりおったか」


 どこからともなく、老人の声が響いた。


「荒木」

「貴様、わしの獲物を取ったな」


 荒木は、露骨にうっとうしそうな顔をする。


「残念だな、じじい」

「もうこの事案は片付けた」


 刀を担ぎ直す。


「後始末は」

「お前ら上層部がやれ」


「俺らは、帰る」


「なんじゃと……!」


 老人の声が、震える。


「儂からごちそうを奪い」

「なおかつ、片付けろじゃと……!」


「早い者勝ちだろ」


「ぐぬぬぬぬ……!」


 悔しそうな唸り声。


「……よい」

「ここは譲ってやろう」


 老人が、杖を鳴らす。


「出ろ」

「片付けろ」


 その合図で、

 黒装束の者たちが、影から一斉に現れた。


 死体も、瓦礫も、

 “なかったこと”にするように。


「……よし」


 荒木が言う。


「帰るぞ」

「飯だ、飯」


「……先に飯!?」


 数時間後。


 俺たちは、想界連合・関東東京支部で治療を受けていた。


「ちょっと!!」


 ギャル口調の女医――良々が、怒鳴る。


「なにしたらこんな怪我になるのよ!!」

「馬鹿じゃないの!?」


 俺たち全員、正座。


「それに」

「なんで先に飯行ってんのよ!!」


 このときが、一番怖かった。


 治療は、時間がかかった。


 俺も、号も、重傷だった。


 身体は、治った。


 ……けれど。


 怪物になった人を、

 元に戻す方法は、見つからなかった。


 もしかしたら、

 何か方法があったのかもしれない。


 そんな考えが、

 頭から離れない。


 全員を救うことは、できない。


 分かっている。


 それでも。


 瑠偉の涙と、

 来枝の、あの最後の笑顔は――

 心に、深く残った。


 ――その頃。


「任務、ご苦労だったよ」


 低い声が、響く。


 クラッシュとミュートの前に、男が立っていた。


「君たちのおかげで」

「実験の結果が見られた」


 一拍。


「人工想獣は、失敗だね」

「不安定すぎる」


 だが、と。


「戯眼は、成功だ」


 口元が、歪む。


「計画は」

「次の段階に進める」


 振り返る。


「そろそろ」

「上でふんぞり返っている連中に」


 静かに、言う。


「僕らの存在を」

「教えてあげようじゃないか」


 その場には。


 円卓。


 十三の席。


 そこに座る十人が、

 それぞれ、笑みを浮かべていた。


 ――戦いは、始まったばかりであった。

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