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想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―  作者: ベルナルド
二章 歓楽街転神町編

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第35話 断たれた「想い」

 ――そんな、馬鹿な。


 倒したはずだった。


 確かに、刺した。

 確かに、殺した。


 なのに。


 二人を飲み込み、

 黒い霧がうねり――


 怪物は、再び立ち上がった。


 姿は、ほとんど変わらない。


 だが。


 気配が、違う。


 濃い。

 重い。

 邪悪という言葉ですら、生温い。


 俺の身体は、もう動かない。

 戦う気力も、残っていない。


 それでも――


 怪物の背中が、歪んだ。


 人の腕。

 人の手。


 それらが絡み合い、

 翼の形を作る。


 次の瞬間。


 掴まれた。


「――ぐっ!?」


 首。


 指が、食い込む。


「やめ……ろ……」

「はな……せ……」


 抵抗しても、

 力が違いすぎる。


 視界が、暗くなる。


 怪物は、

 俺を掴んだまま――


 飛んだ。


 俺が開けた天井の穴を、

 さらに引き裂きながら。


 瓦礫が崩れ、

 夜風が叩きつける。


 地上。


 次の瞬間。


 叩きつけられた。


「――がっ……!!」


 全身に、衝撃。


 骨が、鳴る。


 何本か――

 確実に、折れた。


 息が、できない。


 視界の端で、

 怪物が、建物に向かう。


 腕を振り上げる。


 ――まずい。


 あんなものが、

 地上で暴れたら。


 町は、壊れる。


 人が、死ぬ。


 約束が――

 果たせない。


「……くそ……」


 指一本、

 動かない。


 ――ここまで、なのか。


 そのとき。


 斬撃が、飛んだ。


 空気が、裂ける。


 怪物の身体に、

 深い線が刻まれる。


「――GYAAAAA!!」


 咆哮。


 そして。


「おいおい」


 低く、愉快そうな声。


「祭りに遅れたと思ったら」

「俺のために、こんなサプライズとはな」


 足音。


 瓦礫を踏み越え、

 歩いてくる影。


 刀を肩に担いだ、

 大男。


「まだ生きてるじゃねえか」


 俺を見る。


「よかったぜ」

「先に死なれたら、困るからな」


 声が、腹に響く。


「あんた……誰だ……」


 かすれた声。


 男は、鼻で笑った。

 彼はボロボロの俺の襟首を、まるで仔猫でも運ぶように無造作に掴んで安全な場所へ放り出した。


「命の恩人の名前も知らねえとは」

「失礼な坊主だな」


 一歩、前に出る。


「俺の名は――」


 刀を軽く持ち直す。


荒木 相馬(あらきそうま)


 一拍。


「一応、号の師匠で」

「学校で、お前を助けた男だ」


 理解が、追いつかない。


「……荒木……」

「黒等級の……?」


 男は、即答した。


「さん、つけろ」

「馬鹿野郎」


 そして、怪物を見る。


 口角が、歪む。


「……最高だ」


「ここまでのサプライズ」

「最高のごちそうじゃねえか」


「荒木さん……!」


 必死に声を絞る。


「あいつ……再生持ちです……」

「それも、強化されてる……!」


 荒木は、振り返らない。


「だから、最高なんだろ」


 肩を鳴らす。


「たくさん」

「遊べる」


 次の瞬間。


 荒木は――

 消えた。


 いや。


 踏み込んだ。


 斬る。


 一閃。


 怪物の身体が、

 細切れになる。


 血が、噴き上がる。


「GYAAAAAA!!」


 再生。


 肉が、戻る。


「うるせえぞ」


 荒木の声。


「肉片」


 さらに、斬る。


 止まらない。


 連続する斬撃。


 怪物は、叫び続ける。


 荒木は、笑っている。


「もっとだ」

「もっと遊ぼうぜ」


 だが。


 突然。


 荒木が、止まった。


「……ちっ」


 舌打ち。


「忘れてた」


 空を見上げる。


「上層部が来ちまうんだったな」


 肩をすくめる。


「仕方ねえ」


 刀を、怪物に向ける。


「遊びは――」


 静かに。


「終わりだ」


 刀を、天に掲げる。


 その瞬間。


 覇気が、溢れた。


 想力が、噴き上がる。


 天へ。

 雲を裂くほどに。


 怪物が、吼える。


「GYAAAAA!!」


 荒木が、叫ぶ。


「いくぞ」


「重装――千本桜」


 刃が、舞う。


 無数の斬撃。


 怪物の身体を、

 完全に包み込む。


 次の瞬間。


 荒木は、

 刀を収めた。


 ――カン。


「これにて」

「幕引きだ」


 怪物から、

 血が噴き出す。


 崩れ落ちる。


 再生は、起きない。


 黒い霧が立ち、

 夜空へと、散っていく。

 霧が消える最後の一瞬、俺の目には、満足そうに微笑む満さんの幻が見えた気がした。地獄のような連鎖から解き放たれ、彼はようやく、愛する家族の元へ還っていったのだ。


 静寂。


 町は――

 まだ、立っていた。


 俺は、空を見上げた。


 ――終わった。

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