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想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―  作者: ベルナルド
二章 歓楽街転神町編

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第29話 叫ぶ「想い」

 地下は、異様に静かだった。


 満腹亭の喧騒が嘘みたいに遠い。

 水の滴る音と、機械の低い唸りだけが、耳に残る。


「……ここから先」


 怜が、指で合図する。


「できるだけ、戦闘は避ける」

「見つかれば、その時点で最悪」


 花崎が、喉を鳴らして頷いた。


 瑠偉は、何も言わない。

 ただ、奥だけを見ている。


 鉄格子。

 鎖。

 檻。


 ――捕らわれた場所は、近い。


 そのとき。


 ぬちゃり、と。


 嫌な音が、天井裏から落ちた。


「……っ!」


 歪んだ影が、這い出てくる。


 骨格が定まらない想獣。

 人の腕のようなものが、腹から生えている。


「――来る!」


 怜が、即座に前に出た。


「足止めする!」


 衝撃。

 想力がぶつかる音。


 その隙を縫うように、別の気配が立ち上がる。


「おい……誰かいるぞ」


 想魁者。


 怯えと興奮が混じった声。


 花崎が、一瞬、足を止めた。


 震える。

 それでも。


「……瑠偉さん」


 声が、掠れる。


「お兄さんのところへ」

「僕が……行きます」


「花崎……!」


 返事はなかった。


 花崎は、前に出た。


 恐怖を押し殺して、拳を握る。


「来い……!」


 その瞬間。


 瑠偉は、走り出していた。


 檻の奥。


 そこに――見えた。


 鎖に繋がれた兄。

 そして。


 兄の顔に、口を開ける歪な想獣。


 それを、笑いながら見ている想魁者たち。


 瑠偉の視界が、赤く染まる。


「――どけ」


 声が、低い。


「その……汚らしい口を」


 一歩。


「――どけぇぇぇ!!」


 想力が、爆発した。


「あたしの大好きなお兄ちゃんに」

「触れるなぁぁぁ!!」


 全開の想い。


 理屈も、恐怖も、全部吹き飛ばして。

 瑠偉は、想獣へ突っ込んだ。


 一方。


 破壊チームは、真逆に進んでいた。


「派手に行くぞ」


 吉沢が笑う。


 壁を破壊。

 装置を叩き壊す。


「こっちだぞー」

「来いよ」


 わざと、目立つ。


 救出チームに敵を行かせないために。


 そして。


 最奥の扉。


 そこに――二人の男が立っていた。


「よう、待ってたぜ」


 大男が、笑う。


「よくも兄貴に怪我させてくれたなぁ」


 拳を鳴らす。


「絶対、許さねぇ」


 細い男が、口を歪める。


「でもよ」

「兄貴は、自分の手でやりたいらしい」


 大男が、吠えた。


「始めようぜ!!」

「殺し合いだァァ!!」


 ――瞬間。


 空間が、歪む。


 号が、吹き飛ばされた。


「……っ!」


 細い男が、即座に号へ。


 同時に、大男が大地へ踏み込む。


 だが。


 ぱぁん、と乾いた音。


 吉沢が、前に出ていた。


「僕を無視するなんて」

「礼儀がなってないね」


 軽い声。


「先生が、教えてあげるよ」


「邪魔すんなァァ!!」


 大男が、咆哮する。


 吉沢は、ちらりと大地を見る。


「行け」


「……!」


「扉の奥だ」

「ここは、僕が持つ」


 迷いはなかった。


 大地は、歯を食いしばり、扉を開けた。


「ようこそ」


 部屋の中央。


 幸田零士が、手で顔を覆っていた。


「困ったものだよ」

「この町を……いや、世界を取ろうとしていたのに」


 指の隙間から、目が覗く。


「君たちのせいで、台無しだ」


 大地は、息を止める。


「本当はね」

「君を、直接殺したかった」


 だが、と。


「残念ながら」

「僕には、式想がない」


 指を鳴らす。


「だから――これだ」


 床が、割れる。


 現れたもの。


 獣。

 だが。


 胴に、人の顔。

 腕の途中に、人の手。

 無数の“人”が、歪に融合した存在。


「ヒューマター零式」


 幸田が、誇らしげに言う。


「人工想獣の」

「最高傑作だ」

 その怪物の胴に埋め込まれた「顔」のひとつが、苦悶に歪みながら、掠れた声で「……たす……けて……」と囁いた。


 邪悪な気配。


 吐き気が、込み上げる。


 大地の膝が、震えた。


 ――怖い。


 それでも。


 思い出す。


 任せてくれた背中。

 信じてくれた声。

 託された想い。


 大地は、震える手を――握りしめた。


 後悔しないために。


 町を、救うために。


 大地は、前を向いた。


 戦いは――

 もう、引き返せない場所まで来ている。

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