第24話 灯る「想い」
――目を開けると。
知らない天井があった。
視界が、ゆっくりと焦点を結ぶ。
体は重い。息をするだけで、胸が軋んだ。
「起きたようだね、少年」
低い声。
顔を向ける。
そこにいたのは――安室 仁だった。
「……派手に、やられたな」
苦笑しながら言う。
「あれが、餓楽の秘密兵器ってわけか」
記憶が、繋がる。
歪な想獣。
兄弟。
届かなかった一撃。
「……見てたのか」
俺が言うと、安室は肩をすくめた。
「この町で、私の知らないことはない」
一拍。
「おかげで――」
「君たちを、助けることができた」
胸の奥が、少しだけ緩む。
「……号は」
「先に起きてる」
即答だった。
「君の方が、怪我が大きかったからな」
拳を、握る。
「町を救うって……約束したのに」
声が、低くなる。
「負けてしまった」
安室は、しばらく黙っていた。
やがて、静かに言う。
「最初からな」
意外な言葉。
「正直に言うと」
「君らに、大した期待はしてなかった」
目を逸らさず、続ける。
「何か手がかりを掴めれば、それでいい」
「そう思ってた」
でも、と。
「君たちは」
「私たちを、町を救うために――本気で動いた」
声が、少しだけ変わる。
「町は、感謝してる」
「私たちもだ」
一歩、近づく。
「だからこそ――」
視線が、鋭くなる。
「子供にばかり任せてちゃ」
「男が廃る」
短く、笑う。
「……正直な話」
「魅せられちまったのさ、君たちにね」
一拍。
「少年」
手を差し出した。
「ド派手な、祭りをしないか」
拳を握る。
その奥に、別の色が混じる。
「――あいつらにな」
俺も、手を伸ばした。
強く、握る。
「……俺も」
息を吸う。
「借りがある」
安室は、満足そうに頷いた。
差し出された安室の手は、至る所に古傷があり、皮が厚くなっていた。それは、かつて彼が「熱」を持っていた頃の、戦う男の名残だった。大地はその手を握り、彼の「想い」が自分へと流れ込むのを感じた。
部屋を出る。
「ようやく起きたか」
声。
号が、壁にもたれて立っていた。
「……やられちまったな」
俺は、苦笑する。
「次は」
号が、真っ直ぐ見る。
「二度は、やられない」
一拍。
「勝つぞ、大地」
俺は、頷いた。
「もちろんだ、号」
「瑠偉や花崎も――必ず、連れ戻す」
火は、消えていない。
むしろ――
灯された。
場面が、変わる。
――足音。
会議室のドアが、開く。
「どうしたんですか?」
吉沢が、振り向いた。
そこに立っていたのは。
――ボロボロの、花崎と瑠偉だった。
血の気の引いた顔。
服は裂け、想力の残滓がまだ消えていない。
それでも、二人とも立っている。
瑠偉が、一歩前に出た。
「……あの町の問題は」
一拍。
喉を鳴らし、はっきりと言う。
「黒等級事案よ」




