第23話 届かない「想い」
――空間に、線が走った。
三本。
はっきりと見える、歪んだ線。
次の瞬間。
大男が、俺の目の前にいた。
「――っ!?」
反射的に、身構える。
同時に、号の姿が視界の端で浮いた。
吹き飛ばされた。
空中へ。
号を見る暇は、なかった。
大男の拳が、迫る。
重い。
ただそれだけで分かる。
一発も、もらえない。
だが。
――長期戦は、もっと不利だ。
俺は、踏み込んだ。
「フィスト――」
想力を、一点に集める。
「ブラスト!!」
直撃。
衝撃が、確かな手応えを残す。
……だが。
「なぁ」
低い声。
「その程度か」
大男が、にやりと笑った。
次の瞬間。
拳が、振るわれる。
「――ドライブシンバル」
防御に回した両腕の骨が、悲鳴を上げる暇もなく軋んだ。打撃の『音』が遅れてやってくる。鼓膜を突き破らんばかりの金属的な衝撃波が、俺の質量を無視して後方へと弾き飛ばした
視界が、回転する。
「……っ、がは……」
背中から、地面に叩きつけられる。
一瞬、意識が――飛んだ。
――だめだ。
立ち上がろうとする。
だが、体が言うことを聞かない。
ダメージが、重すぎる。
――号視点。
いきなり、空に放り出された。
上下の感覚が消える。重力が、一拍遅れて追いかけてきた。敵がどこにいるかすら、分からない。
「……っ!」
やつの能力か。
建物の壁を蹴り、
無理やり、着地する。
次の瞬間。
線が――体を貫いた。
視界が、引きずられる。
壁。
叩きつけられる。
息が、詰まる。
また、線。
今度は――地面。
「……っ、くそ……!」
近づけない。
やつは、座標ごと動かしている。
そのとき。
――ドンッ。
爆発音。
この想力。
「……大地か」
一瞬。
敵の動きが、止まった。
――今だ。
迷うな。
渋ったら、死ぬ。
号は、想力を解放した。
「紫電――」
雷が、体を包む。
「纏雷」
抜刀。
「月輪」
最速の斬撃。
空気が、裂ける。
――当たった。
だが。
致命には、届かない。
「……くそ」
やりきれなかった。
その瞬間。
大男が、向きを変えた。
――大地じゃない。
狙われているのは。
俺だ。
「逃げろ!!」
大地の叫びが、耳に刺さる。
だが。
俺は、もう動けなかった。
紫電は使い切った。
体は、地面に縫い止められたまま。
指先一つ、動かない。
出し切った。
そのとき。
大男は、俺を無視した。
切り裂かれた――
細い男に、近づく。
抱きかかえる。
そして。
消えた。
「……なぜ……」
その疑問を抱いたまま。
号の意識は、闇に沈んだ。




