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想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―  作者: ベルナルド
八章 最終決戦編

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第129話 巡り合う「想い」

「見るな!!」


 相馬さんの叫びが響く。


 だが、遅かった。


 俺たちは全員、ノイズの目を見てしまっていた。


 次の瞬間――


「がっ……!」


 頭の奥に、灼けるような痛みが走る。


 視界が歪む。

 耳鳴りがする。

 思考がぐちゃぐちゃにかき回される。


 俺は思わず頭を押さえ、その場に膝をついた。


「頭が……焼けそうだ……!」


 隣では号も、燈真も、相馬さんでさえ地面に手をついている。


「ぐぁああああっ……!」


 ノイズの笑い声が、広間に響いた。


「あははははは!」


 嘲るように。

 見下すように。


「僕には誰も勝てないんだ」


 黒い目が、ぎらりと光る。


「僕の力は不協。相手の心に雑音を入れる能力だよ」


 ゆっくりと、楽しむように語る。


「式想は心に基づく力。なら、心に雑音が入れば能力は発動できない」


 俺たちは歯を食いしばる。


 想力を練ろうとしても、うまくまとまらない。

 意識が散る。

 形にならない。


「今の君たちは、ただの人間だ」


 ノイズの声が低くなる。


「脆くて、醜くて、何もできない」


「……うるせぇ」


 最初に立ち上がったのは、相馬さんだった。


 膝を震わせながら、それでも刀を握る。


「それだけで……止められると思うなよ……!」


 ノイズが目を細める。


「へえ?」


「たとえトラウマを抉られようが……関係ねぇ」


 相馬さんは口元の血を拭う。


「これくらいで折れてたら、想界師なんてやってねぇんだよ」


 その言葉に、俺も歯を食いしばって立ち上がる。


 足が重い。

 頭が割れそうだ。

 でも、倒れたままじゃ終われない。


 号も刀を支えに立ち上がる。


「……弟の言う通りだ」


 声は掠れていたが、目は死んでいなかった。


「想界師は……諦めない」


 燈真さんも拳を握る。


「こんなもんで止まるほど、軽い想いでここまで来てねぇんだよ」


 ノイズの表情が、露骨に歪んだ。


「……イラつくな」


 低い声。


「本当に、イラつくよ。お前ら」


 次の瞬間、ノイズの姿がぶれた。


 相馬さんの身体が吹き飛ぶ。


「がっ!?」


 壁に叩きつけられる。


「言っておくけど」


 ノイズは冷たく笑った。


「僕は落葉松様に育てられたんだ。あまり舐めないほうがいい」


 ただ能力が厄介なだけじゃない。


 こいつ自身も強い。


 想力を封じられた今、その差が重くのしかかる。


 それでも、俺たちは前を見る。


 能力が使えない。

 想力の制御もままならない。

 でも、それで引く理由にはならない。


 俺は拳を握る。


「まだ……終わってねぇ」


「きもいんだよ」


 ノイズが吐き捨てた。


「何が諦めない、だ」


 一歩、また一歩とこちらへ近づいてくる。


「貴様らは、僕を見捨てたくせに」


 その言葉に、空気が変わった。


 怒り。


 憎しみ。


 ただの殺意じゃない。

 もっと深く、古い傷から噴き出す感情だった。


「都合がいいんだよ……」


 ノイズの声が震える。


「今さら正義ぶるな。今さら救う側の顔をするな」


 俺は眉をひそめる。


「……何の話だ」


 ノイズの目が、俺たちを射抜いた。


「忘れたとは言わせないぞ」


 その声には、確かな恨みがあった。


「僕の町は、まだ救えたかもしれない」


 ぎり、と歯を食いしばる。


「なのに全部壊した」


 夕陽町。


 その名前が脳裏をよぎる。


「忘れたとは言わせない」


 ノイズの声が、広間に重く落ちる。


「夕陽町の事件を」


 俺の喉が、無意識に鳴った。


 あの事件。


 多くの犠牲。

 多くの隠蔽。

 多くの後悔。


 そして、俺たちがまだ知らない真実。


 ノイズは拳を握る。


「僕は忘れない」


 黒い想力が、その身から滲み出る。


「あの日のことを」


 その一言には、怒りだけじゃなかった。


 絶望。

 喪失。

 見捨てられた痛み。


 全部が混ざっていた。


 俺は息を呑む。


 こいつはただ落葉松に従う敵じゃない。


 あの日から、ずっと壊れたままここまで来たんだ。


 ノイズはそんな俺たちを睨みつける。


「だから僕は許さない」


 静かに、けれど確かに言い切る。


「夕陽町を見捨てた想界師たちを」


 広間の空気が、さらに重く沈んだ。


 最終決戦の前に立っているのは、

 ただの門番じゃない。


 過去そのものだった。

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