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想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―  作者: ベルナルド
八章 最終決戦編

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第127話 照らし合う「想い」

 朝が来た。


 激動の一日を終えた俺たちは、転神町の地下で身を休めていた。

 外は崩壊した東京。

 だが、ここだけは不思議と静かだった。


 少しだけ眠っただけなのに、体は驚くほど軽くなっていた。

 それでも、心の奥ではずっと火が燃えている。


 落葉松を止める。


 その想いだけは、誰の中でも消えていなかった。


「さて――」


 相馬さんが立ち上がる。


「ゆっくり寝たことだし、作戦会議といこうぜ」


 その一言で、みなが一か所に集まった。


 俺たちは輪になるように座る。

 顔ぶれを見れば、ここまで戦い抜いてきた仲間たちが全員そろっていた。


 号、吉沢さん、瑠偉、花崎、優華、翔、勝吾さん、烈、安室さん、ハワード。

 そして俺。


 ここに来るまで、誰が欠けてもたどり着けなかった。


「まずは情報を整理しよう」


 そう切り出したのは俺だった。


「楽座落葉松は、俺たちを裏切った」


 場の空気が静まる。


「実の父である国重さんを殺して、想界石を奪った。そして、自分自身を想界石に付与した」


 その言葉の重さに、誰も軽口を叩かない。


「それだけじゃない。あいつは、この世界の人間すべてに式想を与えた。しかも、想界石の修正力を利用して、偽りの記憶まで植え付けたんだ」


 俺は拳を握る。


「式想があるのが当たり前の世界。そう思い込ませた」


「さらに、東京の大結界がある御沁を奪って、空へ上げた」


 号が続ける。


「現状、奴は想界石の力そのものを使っている」


 静かだが、よく通る声だった。


「あれに自身を付与した以上、もう他のものに付与することはできないはずだ。……まあ、それが弱点になるかどうかは分からないがな」


 そこまで聞いて、相馬さんが腕を組んだ。


「で、ここからどうする?」


 視線が号に向く。


 号は短く答えた。


「荒木家には、御沁に続く転移の扉がある」


 その言葉に、何人かが顔を上げた。


「あれを使えば、空に浮かぶ島に直接入れる」


「なら話は早いじゃねえか」


 翔が言う。


 だが、号は首を横に振った。


「問題は、その前だ。島の周囲には大量の想獣がいる。それだけじゃない。荒木家の屋敷周辺には、黒等級の想獣が集中している。簡単には近づけない」


「だからこそ、私たちがいる」


 安室さんが静かに口を開いた。


 その表情に迷いはない。


「そういうことだ」


 俺が頷く。


「転移の扉を使うためには、まず荒木家の屋敷までたどり着かないといけない。そのために、外で想獣を引きつける戦力が必要になる」


 そこで勝吾さんが口を開いた。


「質問なんじゃが」


 低い声が響く。


「なぜわしらも周辺と戦う必要がある? 全員まとめて転移させればよいのではないか?」


 それに答えたのは号だった。


「荒木家の転移は四人しか運べない」


 一瞬の沈黙。


 そして、みんなの視線が一斉に相馬さんへ向いた。


「……なんだよ」


「相馬さんがケチったからな」


 号がさらっと言う。


「おい」


「うちは兄貴がいないと貧乏なんだよ!」


 相馬さんが開き直るように叫ぶと、全員がなんとも言えない顔になった。


 呆れ。


 ため息。


 諦め。


 そんな空気が一斉に流れる。


「いや、威張るところじゃないでしょ……」


 花崎が小さく突っ込む。


 少しだけ空気が緩んだ。


「なら、誰が行くんじゃ?」


 勝吾さんの問いに、相馬さんが真っ先に手を挙げた。


「俺たちだ」


 相馬さんの顔には、迷いが一切ない。


「御前試合で勝ったのは誰だったか、忘れてねえだろ? 一番強いのは俺たちだ」


 どや顔だった。


 勝吾さんは露骨に眉をひそめたが、すぐに鼻を鳴らす。


「……まあ、妥当かのう」


 そして俺を見る。


「だが、どうやって落葉松を倒すつもりじゃ、小僧」


 全員の視線が集まる。


 俺は一度深く息を吸った。


「やつを、想界石に近づける」


「……それで?」


「あとは俺がやる」


 言い切る。


 勝吾さんの鋭い目が俺を射抜いた。


「できるのか?」


 その問いに、俺は迷わなかった。


「できる」


 拳を握る。


「いや、やる。俺に任せてくれ」


 一瞬の沈黙。


 それから勝吾さんは口元をゆがめた。


「……生意気なやつじゃ」


 けれど、その目にはわずかに熱があった。


「任せたわい」


 その隣で、勝吾さん自身も拳を鳴らす。


「なら、わしらは外で大騒ぎしてやるかのう」


 血が滾っているのが、見ていて分かった。


 その時だった。


 地下室の扉が、ゆっくりと開いた。


「私たちも協力するわ」


 その声に、みなが一斉に振り返る。


「姉さん……!」


 そこに立っていたのは怜さんだった。


 その後ろには、クレッシェとノクターンの姿もある。


「来てくれたのか」


 号が言うと、怜さんは肩をすくめた。


「ええ。約束は守る主義よ」


 クレッシェはにこにこと笑っているが、その目の奥は読めない。

 ノクターンは相変わらず無表情に近かった。


 二人を見た瞬間、瑠偉が顔をしかめた。


「……あいつら、なんでここにいるのよ」


 それは当然の反応だった。


 相馬さんも、すぐに目を細める。


「おいおい。なんでファズエットがここにいる」


 ぴり、と空気が張り詰める。


 ノクターンが一歩前に出た。


「あなた方だけではないんですよ。カデン――いや、落葉松に裏切られたのは」


 低い声。


「奴はファズエットも裏切った。そして、ノイズ様を連れ去った」


 その言葉に、場の空気がさらに重くなる。


「報いを受けさせる」


 ノクターンの目には、はっきりとした殺意があった。


「殺すなら、そのあとにしてください」


 相馬さんは鼻で笑う。


「もちろん、そうさせてもらう」


 一歩踏み出す。


「裏切ってみろ。即刻殺すぞ」


 ノクターンも引かない。


「君たちもね」


 その笑みは薄く、冷たい。


 一触即発。


 そんな空気だった。


 だが、俺は立ち上がった。


「もういい」


 みんながこちらを見る。


「今は、落葉松を倒すことだけを考えるべきだ」


 俺はノクターンたちを見る。


「信じるわけじゃない。でも、利用し合うくらいはできる」


 そして仲間たちを見る。


「ここで争ってる暇はない。今だけは全員、同じ敵を見よう」


 しばらく沈黙が落ちたあと、相馬さんが舌打ちした。


「……ちっ。分かったよ」


 ノクターンも肩をすくめる。


「こちらもそのつもりです」


「戦力は、これで全部だな」


 俺はみんなの顔を見る。


 これが今、俺たちにできる全力。


 足りないかもしれない。


 でも、足りないならぶつけるしかない。


「みんな、行こう」


 立ち上がる。


「荒木家の屋敷に向かうぞ」


 その声に、全員が動き出した。


 もう迷いはない。


 最終決戦が、始まる。

 

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