表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
京葉文化大学美術サークル及び株式会社スラストーン美術課活動報告書  作者: 荒間文寧


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/42

5-7

五智の『作品』なら瀬良は見えること。そして五智があの女性を作って瀬良に見せたこと。オフィスに設置された立派な机を挟んで、荒木は巡に今回の顛末を語った。満足げにそれを聞く巡を見て、荒木も鼻高々である。

「で、あの女性が誰か分かったんですか?」

「はい、瀬良さんの母親でした」

「え? 違いますよ?」

「え?」

 自信満々で答えた荒木を、巡はあっさり否定する。一体なにが違うというのか。瀬良が母だと言ったのだから違うわけがないだろう。

「ほら、写真残ってますから」

 荒木も知っている、あの部屋にある肖像画。あれは巡の祖父である。写真にはその絵が映し出されていた。その横には油画そっくりの祖父と、その横で緊張した面持ちの子供、そしてさらにその横に女性が映っている。

「子供が瀬良さんで、隣がお母さんです」

 塩顔でまっすぐな黒髪は肩の辺りで切りそろえられている。あの絵にも、そして五智が作った彫刻とも乖離している。

「……どういうことですか?」

「聞きたいのは僕の方なんですけど」

 完全にやり遂げたと思い込んでいた荒木は絶句する。しかし己が成果を挙げたことは間違いない、と巡に再度対峙した。

「まあほら、なんにせよ、五智さんが作って見せてくれたわけですから。誰であれ瀬良さんに描かせることはできるじゃないですか」

「できませんよ? あの人、自分が描いてる絵も人間だと認識した瞬間に見えなくなるんですから」

 覚えてないんですか、昔あの人が描いてた人物画。と巡は続ける。荒木の脳内は子供の落書きのようなハチャメチャな絵を思い起こした。完全に失念していた。荒木は反論が思いつかない。何も言えずにいると巡はふっと表情を崩した。

「でもあとちょっとですね。じゃあ引き続き頑張ってください」

 あれが誰なのかも分からず、瀬良に描かせることもできない。つまり己はまだあの画家の面倒を続けなければいけない。

 転職しようかな、と荒木は思った。しかし流石に行動に移すまでには至らなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ