表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推しの機体をデコれるって最高では? 〜 推しには最強の機体に乗ってほしいんです! 〜  作者: 犬ガオ
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/25

推し、来る。



 所長室で、私は机に座る所長の横に立ち、彼を待っていた。


「君は、いつもの格好なのだな」

「仕事場にはこの服と決めていますので」


 所長が私の姿を見る。

 いつものTシャツと作業ズボン、上から白衣のスタイル。

 おめかしをしようか考えたのだけど、結局はこの服装にした。理由は唯一つ、推しバレを防ぐため!

 これまで何度かエレンと推しバレしないために作戦を練った結果、研究所で仕事仲間として接することに務める、『職場の同僚作戦』が出来上がった。

 いつもの服、いつもの職場、いつもの仕事で過ごすことで、カロ様に会っても大丈夫な精神を養う。完璧な作戦だ。


「……まあいい。今更だな」


 所長は目を伏せる。そして、ついにその時が来た。


 コン、コン、と扉からノックの音が聞こえた。


「入りたまえ」


『失礼します』


 扉の向こうで男の人の声が聞こえ、扉が開く。


 黒い詰め襟の軍装に身を包んだ、黒髪の青年がそこに立っていた。

 清潔感がある短髪の黒髪、すっとした鼻筋、細い顎と、写真で見た彼のままだった。

 多分慣れていないだろう軍帽を浅く被り、こちらに金色の瞳を向けている。


「魔導科学研究所分局F.M.先進技術研究室付、魔導歩兵試験機操縦士を拝命いたしました、カロ・デ・フォンターレ大尉です。

本日より着任いたします。

以後、与えられた職務に全力で取り組む所存です。

ご指導ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願い申し上げます」


「室長を務めているグラディウス=アウルネ=ヴェルグラナだ。本研究室の目的は、魔導科学の発展と魔導歩兵の世代更新。そのためには君のような現場を知る者の意見は貴重だ。今後ともよろしく頼む」


「ヴェルグラナ公でございましたか。御高名はかねがね」


「固くならずともいい。私はここではただの責任者だ。室長と呼んでくれたまえ」


「はっ!」


「そして、隣にいるのは」


 室長に差し手を出され、私は自分の名前を伝える。


「セレスてゅア=ヴェリタ=ルキアルクです」


 うん……噛んだ――――――――!


 しかし、私とて一応王女として教育を受けた身。完璧なカーテシーを白衣の裾で決める。リカバーは完璧!


 眼の前のカロ様は「セレテュ…ヴェリタ…?」とつぶやき、少し考えてから姿勢を正した。


「セレスティア第三王女殿下でございましたか」


「は、はい」


 推しが私の名前を覚えてくれてた! いや、私、王女でした。覚えてても不思議はないね。


「彼女はここの首席研究員だ。試作機の基礎研究を主な研究課題としているので、君は彼女の専任操縦士になる。二人で協力して王国の発展に貢献するように」


「はっ!」


 これは前から室長から聞いていた話だ。このせいで『職場の同僚作戦』を実施せざるを得なくなったとも。

 だけど、ずっと推しに見られているこの状況は、非常に危ない。恥ずかしさで死んでしまいそう。


「早速だが、彼女が君の仕事として第四世代発展型といえる機体を開発した。セレスティア君、先に行って準備しておきたまえ」


「あ……はいっ」


 た、助かった――――!! ありがとう室長!!!


 私はそそくさと室長室から立ち去ったのだった。



◆◇◆◇◆



「さて、カロ大尉」


「なんでしょうか、ヴェルグラナ室長」


「室長だけでいい。君が配属された理由は聞いているか?」


「いえ、しかし先程、その足がかりは得たかと」


「君の想像どおりだ。ここにはクセの強い者が……非常にクセが強い者がいる。どうかその者を守ってやってほしい」


「承知いたしました」



◆◇◆◇◆



「ここがハンガーですか」


 私が第四世代発展型の準備作業をしていたところ、頭の上から声が聞こえた。


「か、かろたいいっ」


 私はすぐさま飛び退く。あ、魔導板を床に置いたままにしちゃった。

 カロ様はその挙動に少し驚いていたが、「はい、お邪魔でしたでしょうか」と尋ねたので、私は顔をブンブンと振る。


「そういえば、王女殿下、でよろしいですか?」


「へ、あ、はい、好きなように呼んでください。あと、わたし、堅い言葉は苦手で。かしこまらなくてもいいですよ」


 円滑なコミュニケーションには遠慮があってはいけません、とはエレンの意見だ。『職場の同僚作戦』は継続中です。


「それは助かる。俺も南の辺境出身だから、堅い言葉は苦手なんだ」


「よかった、そう言ってもらえて」


 はい、推しの笑顔を頂きました! カメラ! カメラどこ!


「ところで、あれが例の第四世代発展型か?」


 カロ様が指で指し示した先には、二本角の兜とカイトシールドが連なっている塊があった。魔力肢が出ていないので異様に見えるかもしれないけど、あれはれっきとした第四世代発展型の姿です。変な形は彼女の意見を反映した結果なので、私のせいではない。


「ちょっとイモムシっぽいですけど、あれが第四世代発展型です。私たちは『オーガ』って呼んでます」


「オーガ?」


「ええ、今回の魔力肢のモデルにオーガを採用したんですよ」


 私は魔導板を拾い、予想完成図を見せる。

 二本角の兜を被り、カイトシールド状の背負いものをつけた浅黒い偉丈夫の姿だ。二の腕、太ももに輪っかがあることも特徴だ。


 今回、魔力肢で再現する魔物の体であるオーガ種は、頭に生えた二本角が特徴の中級上位に位置する魔物で、高い膂力と高身長、高い身体レベルで追い回してくる、体力オバケみたいな連中だ。


「あのオーガを……なかなか厄介なやつを」


 軍部の魔物狩りで戦ったりしたのか、カロ様が眉を寄せる。


「ええ、かなり調整に苦労した、と研究員が」


 魔物の遺伝子である魔体子から、魔力肢に必要な要素を取り出し、魔物化を防ぐ調整を行う人工魔体子設計は、非常に高度なスキルと忍耐力が必要になる。

 アルト研究員、きみはよくやってくれた。今度焼き肉を奢ってあげよう。


「早速乗ってみますか? まだ魔力肢展開試験をしていないので」


「初仕事、ということだな。分かった」


「じゃあお願いします。アルト研究員ー!」


 新機体ということで、あのカロ様も少し楽しそうなご様子。

 うーん、尊い。

 私は近くにいたアルト研究員を呼び出した。


「なんすかー、セレさまー」


「カロ大尉をオーガのコックピットに案内してあげて」


「お、南部の英雄様っすね! 後でサインください! じゃあこちらへ〜」


「あ、ああ」


 アルト研究員の奔放っぷりに戸惑いつつ、カロ様はオーガへ向かった。

 ハッチを開き、操縦席に入るカロ様。かっこいい……。脳内のアルバムに保存しないと。

 魔導板を操作して、各種パラメータをチェックする。

 さて、そろそろ起動するかしら。魔力肢がちゃんと発動するか確認を……あれ? カロ様が操縦席から出てきた?


 まっすぐこちらに向かってくる?

 なんだかすごく慌てているカロ様。

 そして、カロ様は私に向かってこう言った。


「王女殿下……これ、俺の機体ですよね」



 なななななな、なんでバレたの――――――!




──◆◇◆◇◆ 次回予告 ◆◇◆◇◆──


 どうして推しの機体を改造したことがバレたの!

 そこから推しの現実を知り動揺するセレスティア。

 いや、それよりも推し活社会的死が迫っている。

 セレスティアはカロを説得できるのか?

 次回、『推しバレ、せ、せーーーーふ!(セーフではない)』



楽しんでいただけたら、応援やブクマで“推し”ていただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ