魔石が欲しい、大量に。 by 先進研室長 2
◆◇◆◇◆
「ひどい、ひどすぎる……ただみんなに『レッドキャップに最高の武器を持たせたいよね!』って言い回っただけなのに……」
室長室から自分の研究室に帰った私は、研究室の資料を片付けながら文句を言う。
掃除をしているのは、室長から「謹慎する前に資料を片付けたまえ。流石に見るに耐えない」と命令されたから。
うう、研究できないのに片付けるとか、なんなの、この苦行は!
「むしろそれだけでこんなことになったのか……」
カロ様も一緒に床に散らばった本をまとめてくれていた。
「カロ様、先進研はそういうところなのです」
エレンも私と一緒に紙の資料をバインダーにまとめてくれている。
ただ、私が掃除を止めて資料を読み込もうとすると、ぺしん、と手を叩いてくる。
ぐぬぬ、大叔父様め……!
「どんなところだよ……」
呆れた声のカロ様。
「王国最高峰の頭脳を、性格などを鑑みず集めた結果がここです」
王国最高峰どころか世界最高峰の頭脳が集まってると思うけどね。
というかエレンさん、それだとマイナスイメージに聞こえるのですが?
「それは組織としていろいろ崩壊してないか!? いやそんな気はしてたが……」
え、何が崩壊しているの? 先進研はいつも楽しいところですよ?
「そして、我が主は……そういう人を焚きつけるのがお上手なのです」
「王国最高峰の頭脳を籠絡するな……」
「あのキラキラした瞳でたらしこんだ人は数しれず」
「そんな人を悪女みたいに言わないでくれます?!」
エレンからの風評被害に、私は流石に文句を言う。
たらしこんだつもりは全然ないです。ただ、『興味を持ちそうだな』というツボが何となく分かるだけですぅ―。
「室長が言った傾国の美女とはいい例えだな」
カロ様も、エレンの言葉を肯定するようなことを言う。
ひどい……! 私は反論しようとしたが、
「ええ、室長はセレ様をよく分かってます。美女というより美少女ですが。そうですよね、カロ様」
「ん? 確かに王女殿下は可愛い方だと思うが」
エレンとカロ様の会話を聞いて、身体が熱くなった。
この感じ、さっき気を失ったときに感じた熱さだ。
「セレ様、どうなされました?」
エレンが私の様子を見て聞いてくる。
目を細めて微笑むカロ様。
至近距離で見つめてくるカロ様。
気を失う前の記憶が鮮明に蘇る。
顔を手で挟んで固定して強制的に見つめ合う状態になったあの時、正直に言うと、心臓が高鳴りすぎて止まる気がしたことを思い出す。
「ななな、なんでもない」
「大丈夫か、王女殿下。熱でもあるのか?」
カロ様が近づいてきて、私の額に手を重ねる。
「ひへっ」
私は後ろに飛び下がり、本棚に激突した。
その衝撃で、本棚の上から平積みだった資料本が、私に向かって落ちてきた。
あっ、と思ったときには遅かった。私は回避も出来ず、本が頭に――
「――いや、何やってるんだ、姫様」
当たる前に、カロ様が私に覆いかぶさっていた。
「大丈夫ですか、セレ様、カロ様」
エレンが近寄り、落ちてきた本を片付ける。
背中に本が当たったカロ様は、何事もなかったように背中の埃をぱん、と手で払った。
「ああ、大丈夫だ。王女殿下も大事無いな?」
カロ様が私の手を取り、立たせてくれる。
「は、はい」
その場に立ち尽くす私の顔を覗き込むカロ様。
「なら良かった」
ぐう、推しの笑顔が眩しすぎる! そして近すぎる!
ガチ恋距離は反則ですって、死んでしまいます!
「しかし、熱もあるし顔が赤いな。風邪か?」
そしてまたカロ様が手を私の額に重ねる。
大きな手で、剣を振っているからか、タコが無数にあった。
軍人の手だ。
「ここはエレニア様と俺でやっておくから先に帰ったほうがいいぞ」
「そ、そうします……」
また気を失いそうなので、私は研究所から退散することにした。
◆◇◆◇◆
「ふふふふ、真っ赤になるセレ様も可愛い。カメラを持ってくるべきでしたね」
「エレニア様、どうしました?」
「いえ、なんでもありません。ああ、その本は奥の本棚で一番右の上から二段目にお願い致します」
「了解です」
「……さて、こちらからの焚き付けはどうなるでしょうね」
──◆◇◆◇◆ 次回予告 ◆◇◆◇◆──
研究開発が封じられたセレスティア。
どうせなら、と戦争中に行けなかったリコ樹国に行くことをエレンから提案される。
久しぶりのリコ樹国、そこには、ルキアルク王国の始祖王を知る者が居た。
次回、『リコ樹国へ』
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