南部の英雄、北部で一方的に暴れる 2
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『俺』は大地に立った。
正しくは、俺と感覚がリンクしているフォロワー、レッドキャップが大地に立っていた。
俺の体とレッドキャップが、骨とフレーム、筋肉と魔導流動筋肉、それらに接続された神経と魔力導線という相似を経て、類感同調を果たす。
足が、自分の想定した高さまで上がる。自分の速さで足が動く。
デザートスプリガンでも感じていた機体との一体感。
――いや、それ以上だ。
第四世代を超えた一体感。最初にこのレッドキャップに乗った時、俺は衝撃を覚えた。
マギア・アクチュエータ・フレームを自分の身体だと錯覚したのだ。
今までなかった感覚だった。
デザートスプリガンで行っていた類感同調は、他人の身体に自分が乗り移る感覚が近かった。
自分と機体を相似すると言っても、所詮は自分ではないモノ。しかもスプリガンという魔物の身体なので、人間と多くの差異があった。
だが、マギア・アクチュエータ・フレームは、人の身体を元にして設計されている。身体の構成物は違うが、形と機能が似ている。
そこに、血管と神経を司る魔力導線を張り巡らせる。
魔力導線は魔力肢と同じで魔導核から出ている。
普通なら、魔導回路に最初から組まれた決まったパターンどおりに、導線を伸ばすだけだが……。
あの姫様は、俺の神経と血管パターンを計測し、魔導回路にパターン化した。
しかも、フレームや魔導流動筋肉のバランスも、俺と同じ比率になるように調整し、姿勢パターンさえも俺の戦闘データから作りだし、このレッドキャップに叩き込んだ。
その結果、戦争終盤で感じた人機一体の境地を、今は常に感じている。
はっきり言おう、フォロワーに関して彼女は最高だ。
たとえデザートスプリガンの戦闘データや俺の医療データがあったとしても、普通にできることじゃない。
フォロワーに心血と魂を注ぎ込めるやつが至れる境地を、俺は文字通り全身で感じている。
眼の前の門の向こう、前に戦った神官たちが見える。
まだ新しい機能を使っていないが……どうせ相手は神使にはなれない。このまま突っ込もう。
イメージと完全一致の、筋肉に力を貯めて一気に爆発させ、精密な足運びで、彼らとの距離を一気に詰める。
彼らは即座に魔力を練り、金色や黄色のオーラを身体に纏う。おそらく普通の強化魔術か障壁魔術だ。
関係ない、と俺は回し蹴りを神官たちに放った。
鉄靴の蹴りが神官に当たり、パリンパリンと障壁が砕ける音が聞こえ、数名の神官が飛んでいった。
黄金のオーラ(おそらく強化魔術)を纏った神官たちはギリギリ回避に間に合ったようだ。神使を使えなくても、強化魔術の扱いは上手らしい。
結構速度を出したんだけどな、と俺は呟く。
やはり、あれを使わないと当たらないか。
あの大敗以来、俺は自分の体をイメージ通りに、精密に動かすように鍛錬した。
ホブゴブリンでその動きを再現する鍛錬もした。
だけど、敵との距離を測る感覚が一致することはなかった。
その悩みを王女殿下に相談したところ、「追加予定の新しい機能が解決してくれるはず!」と紹介してくれたのが――
「エンチャントスキン、発動」
ダークブラウンの布が首から現れ、マギア・アクチュエータ・フレームの全体を覆うように展開される。金属と樹脂が剥き出しだったフレームの上に皮膚が現れた。
極細の魔力導線で編まれたそれは、俺の皮膚にある神経終末を再現したものだ。
俺の皮膚上にある、触覚、痛覚、温冷覚、圧覚の神経終末のすべてをマッピングして、魔力導線の布に再現する。
もう一度言おう。
彼女は最高だ。
「魔力肢からマギア・アクチュエータ・フレームから引き算すると残るのは皮膚なんですよ! カロ大尉が指摘した皮膚感覚がないっていうのは、ドンピシャで大当たりだったんです!」
嬉々として教えてくれる王女殿下の顔が頭に浮かび、少し苦笑した。
こうして皮膚を得た俺は、この機体と人機同体となった。
俺がこの世界のどこにいるかが分かる。
風が、大地が、武器の握り手の感触と重さが、俺の存在を教えてくれる。
そして、俺は完全に神官たちとの距離を捉えた。
彼らの感情、思考、行動を捉えた。
すなわち――神官たちの未来を捕らえた。
あとは、鍛錬通りに剣を振る。
刃を立てず、剣の腹で神官たちをフルスイング。
神官たちは勢いを殺せず、集落の防壁に激突し、崩れた。
俺は倒した神官すべてが立ち上がらないことを確認し、操縦席の通信装置を起動させる。
「集落内のルツィー神国残党の主力を制圧。魔術師の拘束を急げ」
『了解。すぐそちらに向か……! 西の森から、高速でこちらに向かう高魔力存在を複数感知! おそらく神使です! 数は……十!?』
「早いな……指揮官は優秀だったようだ。わかった、こちらで引き受ける。君たちは神官の確保と集落の防衛に専念してくれ」
『わかりました、ご武運を』
俺は通信を切る。
さて、相手は前に大敗した神使十名。
人は違うが、状況は同じ。
リベンジマッチと行こうじゃないか。
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