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推しの機体をデコれるって最高では? 〜 推しには最強の機体に乗ってほしいんです! 〜  作者: 犬ガオ
第二章

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信仰ってこわいね 3


◆◇◆◇◆



「んー、やっぱり納得できないなぁ」


 私は机上にある表を見ながら、その結果に文句を言っていた。


 魔力の流れを解析した結果、神使の魔力量はそこまでないことが判明。むしろ、魔術師としては少ない方だ。

 そこから、ルツィー神が発動する強化魔法は、魔力量でいうと神使の約二◯四八倍。二倍どころじゃない、二の十一乗倍以上という破格の強化だ。


 もちろん、釣り合ってない。


 北部で終戦のきっかけとなった、ヌカハ平原の大戦で動員された神使の人数はざっと一万人。その全員がルツィー神の強化魔法を使えば、二千万人ぐらいの魔力が消費されることになる。

 これが十二日間続いたのだから、ざっと二億人分の魔力だ。

 この二億人分の魔力はこの世界の魔術師全員分の魔力を足しても足りない。文字通り、途方もない魔力量だ。

 いくら国家単位で日常的に魔力を神様に捧げているとはいえ、神と人の取引が成立しているとは思えない。


「でも、報告書を見る限り、捕虜にも副作用があるようにみえないし……一体神さまに何を求められたんだろう、ルツィー神国は」


 神と人との取引は不平等だ。

 人は神さまに求めることができるが、神さまは拒否できるし、人から遠慮なく、前触れもなく、理由もなく奪うこともできる。


 始祖王様の手記には、こう書かれている。


『この世界の神様は信仰されずとも存在できるのだから、人を必要としていない。だから、気まぐれに信者を庇護するし、欲しがったら奪うのだ。そして、信者を個として認識しないため、信者すべてから等しく奪う。だからこそ、神との取引をしないに限る。仰ぎ拝み、たまに来る恩恵に感謝するぐらいがちょうどいい』


 私も、まさしくそうだと思う。


 パラパラと、現在信仰されている神の一覧をめくり、ルツィー神の項目を見る。


 ルツィー神は、この世界でも多くの信者に信仰されている神だ。

 慈愛と正義、そして子守の神として信仰される。

 良い神さまと思われるかもしれない。しかし、神様というのはコインの裏表のように、良い側面と悪い側面がある。

 ルツィー神は、不義に対する罰を与える、冬を象徴する、という側面を持っている。

 正義を掲げ、鎌を持って罰を与えるルツィー神。

 その名の下で結婚した夫婦は不倫は許されず、離婚する際も等しく天罰が下ると言われている。

 また、冬というのは季節だけでなく、停滞を招くという意味もある。

 冬の安寧を願う先としては良いのだが、かつてルツィー神が冬による罰を行った時、世界が凍ったとも言われる。今は慈愛の神で本当良かったよ。


 ん……? 奪う、子守、不義、停滞……?


 答えへのワードが揃った気がした。

 かの神は信者から代わりに何を奪っているの?


 人が持っているもの、奪われても気づかない、でも、人として大切なもの。


 嫌な予感がする。いや、これは直感。


 その直感から一つの仮説にたどり着いた私は、早速、連絡を取る。


「あ、ちい姉さま? ちょっと調べてほしいんですけど。ええ、王国内にいるルツィー神の信者について……」


 これは、ルツィー神国、やらかしてるかも。



◆◇◆◇◆



 俺は日課である走り込みと素振り、そして型の反復練習を終え、刃をつぶした片手剣を地面に刺した。

 ふう、と息をつき、右拳を握る。

 そして、北部であの仮面どもと戦った感触を思い出す。


 久しぶりの完敗だった。


 あの戦闘を思い出して、アゼル殿下が言った『北部の現実』を痛感する。

 南部と北部だと、違うジャンルの戦争をしていたことが分かった。


 南部は力がないとそもそも立ち回れなかった。一対多の戦いには精度よりも破壊力が求められたからだ。

 しかし、神使は少数、しかし精鋭。その上、的としてもフォロワーからすると小さい。


 力任せでは戦えない。野球のバッターのように、投手の球を打ち返す精度が求められる。

 延長十三回は当たり前、向こうの強化魔術の時間切れを狙う耐久力が求められる。

 力よりも技が重要な戦い。瞬発力よりも耐えきることが重要な戦場。


 神使一人が拳を突き上げれば外装は歪み、手刀を腕に当てればフレームが悲鳴を上げ、避けようとしてもその速度で回り込まれる。

 特に跳躍したあとの、上空から蹴りを放つ一撃は両手で防御をしても黒い腕が折れるくらいの破壊力だった。

 

 あの戦いを想像しながら、片手剣を地面から抜き取り構える。あの速度の突進に、この剣でカウンターができれば、拳をいなすことができれば、蹴りを回避できれば、と想像しながら剣を振り、構え方を変える。


 戦場では類感同期がうまくできていない、という言い訳は通用しない。自分の手にあるものを最大限に使えなければ、生き残ることはできない。


 そう思うと、彼女の前では甘えたことを言ったな、と改めて……いや、どうしてここで上の下着がなかったことを思い出すんだやめろ。


 頭を振り、雑念を払う。はあ、一旦休憩しよう。

 そう思い、後ろを向くと、タオルと薄い箱型魔導機を持ったエレニア様がいた。


「カロ様」


 はい、とタオルが手の上に置かれる。


「エレニア様? どうしたんです」


「エレンでいいですよ」


「流石にそれは……」


 ヴェルサリア伯爵家のお嬢様を愛称で呼べるほど、俺の心臓に毛は生えていない。


「そうですか……これは、セレスティア様から、差し入れです」


 エレニア様が魔導具を俺に渡す。


「これは?」


「大破したホブゴブリンからサルベージした、戦闘録画とのこと」


 エレニア様が魔導具の蓋部分を上げると、ディスプレイが見えた。


「録画していたのか……」


 王女殿下の用意周到さに驚く。同時に、あの詰問はなんだったんだ? という疑問も湧いた。


「テスト機予定でしたからね」


 エレニア様が左眉を上げてこちらを見る。


「うっ、その、すまないと思っているんだ」


 テスト機予定の機体を、改修する前にボロボロにしたのは自分だ。

 エレニア様や彼女が怒るのも無理はない。


「――まあ、きっとあの機体も生き返らせてくれるでしょう。セレスティア様なら」


「信頼しているんだな」


「それはもう、尊敬する主様です」


「そうか、うらやましいな」


 俺には、尊敬する人はもういない。盟友、戦友、同志はいるが、全部南に置いていった。


「あなたも、直にそうなります」


「そうかな?」


「ええ。私もそう望んでいますから」


 そう言ってエレニア様は微笑んだ。





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