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お弁当の橋渡し

作者: ごはん

朝の台所には、トントントン、と野菜を刻む音が響いていました。

おじいちゃんは少し曲がった背中で、真剣な顔つき。にんじんを花の形にくり抜き、卵焼きはふんわりと黄色く焼き上げます。


――「これで、今日も元気に過ごせるかな」


そう心の中でつぶやきながら、孫のためにお弁当箱を彩っていきます。


娘であるお母さんは、毎朝早くから働きに出なければならず、どうしても余裕がありませんでした。最初は「申し訳ない」と何度も謝っていたけれど、おじいちゃんはただ笑って首を振るばかり。


「おまえが働けるのは大事なことだ。弁当ぐらい、じいちゃんに任せとけ」


そう言って、毎日台所に立つようになったのです。


やがて朝の時間。孫が眠そうな目をこすりながらやってきます。

「おはよう、おじいちゃん」

「おう、おはよう。今日のお弁当はな、からあげ入りだぞ」


ランドセルにお弁当を大事にしまう孫の姿に、おじいちゃんの目尻も自然と下がります。


学校から帰った夕方、孫は嬉しそうに話しました。

「今日ね、お弁当見せたら、友だちが“かわいい!”って言ってた!」


その一言に、おじいちゃんの心はじんわり温まりました。

――孫が元気でいてくれること。それが何よりのごちそう。


その夜、帰宅したお母さんに、孫が誇らしげにお弁当箱を見せます。

「ほら、おじいちゃんが作ってくれたんだよ!」


お母さんはその場で涙ぐみながら、お父さんに頭を下げました。

「ありがとう、お父さん。あなたがいてくれるから、私は頑張れるよ」


おじいちゃんは、照れくさそうに笑いながらも、心の奥では温かい火が静かに灯っていました。


――お弁当は、家族の気持ちをつなぐ橋。

その橋を、明日もそっとかけ続けるのです。


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