008-戦闘講義2
それから数十分後。
三時限目まで延長された模擬戦を見るに、今日の授業はこれで終わりのようだ。
なので、何も気にせず戦う。
既に七人を倒し、内訳は僕が三人、クライムが四人であった。
『よし、残り三人か! 誰が残るか楽しみだな!』
「!」
『.....マジか』
僕らは七人しか倒していない以上、五十人いるパイロット科で何十人も倒した奴がいるという事だ。
気を引き締めたその時。
アラートが一瞬だけ鳴り響く。
『ど、どこだ!?』
「分からない....」
アステロイド群の奥の奥まで入り込んでしまったせいで、レーダーがうまく機能しない。
とりあえず止まるかと考えていたその時。
『ナユタァ! 上だ!』
「ちっ!」
上から光線が飛んできた。
直後に、もう一発飛んできて――――クライムの機体の右腕を引き裂いた。
「クライム!」
『大丈夫だ! それより!』
敵は僕たちを狙っている。
そう知れたからこそ、やりようがある。
「散開しよう!」
『分かった! しっかり見てろよ!』
再び散る。
敵は一人だ.....少なくとも。
どこだ.....?
「右!?」
アラートが鳴って、回避しようとしたときには当たっていた。
タッチパネルに表示された全身図の、左足が点滅している。
「敵が見えない!」
『位置が見えた! 共有する!』
「助かる!」
クライムが優秀なお陰で、なんとか戦えている。
送られてきた敵の概ねの位置にズームをかける。
「いた! 共有するぞ!」
『分かった!』
凄まじい動きの精度だ。
僕らなんかよりずっと、速い。
「耐Gスーツなしで、あの動きか!」
『俺が牽制する!』
「分かった、僕が取り付く!」
あんなのに当てられる自信がない。
なので、取り付いて当てる。
ミニガンを散発的に撃つクライムを追っている敵を、僕はアステロイドベルトに隠れながら追う。
「照準がっ! 合わない!」
距離は56km。
相当に離れているはずなのだが、相手の動きが大振りで狙いにくい。
だが、移動予測を活用して合わせる。
『ぐわっ!』
「ここだ!」
クライムがコックピットを撃ち抜かれて、脱落する。
それと同時に、僕が相手の頭部を撃ち抜いた。
「やった、勝――――」
直後。
頭部を破壊されたのに、そいつはこっちを向いて、撃った。
それが見えた時には、コックピットに当たっていた。
「く......!」
僕は悔しさで歯噛みした。
完璧に勝ったと思ったのに。
「いやぁ! 凄い戦いだったな!」
「クライムのおかげだ、ありがとう」
数分後。
僕たちはKFAを降りて、会話していた。
授業は終わり、各々が感想を話し合っていた。
「キミたちの戦いも凄かったですよ、ナユタ・カイリ。クライム・シューレン子爵殿」
その時、透き通るような声が響く。
僕らがそちらを向くと、紺色の髪の少年がこちらに向かってきていた。
後ろ髪は、水色に煌めいている。
「あなたは....?」
「私ですか? ナスカ・フォウル。キミたちが最後に戦った相手ですよ」
美青年、という他ない。
水色の瞳が、僕を見据える。
クライムは金髪に茶色の眼なので、この場では映えて見えた。
「凄い操縦技術だったな!」
「私は大会経験者ですから....予選落ちですけど」
ナスカは貴族ではないようだ。
となると、相当強いように思える。
「後ろから狙撃してきたのはどなたですか?」
「....僕だ」
「凄いですね、あの一瞬で、私の接近技術を真似るとは思いませんでした」
「見様見真似だったんだけどな」
「いえ、真似は出来ますが...私のように動くのは凄いと思います」
ナスカほどの人がそう言うなら、間違いはないと思う。
驕らず、頑張っていこう。
「腹減ったぜぇ〜...」
「どうする? ナスカ、君さえ良ければ...」
「いいでしょう、食堂に付き合います」
僕はクライムとナスカを伴って、格納庫を出る。
「友達との食事は初めてです」
「そうなのか」
「じゃあ、奢ってやるよ!」
僕らは食堂へ向かうため、本校舎行きの駅へと向かうのだった。
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