040-To be continued...?
それから数日後。
皆でカフェテリアに集まり、僕は皆に新入生大会の説明を一通りした。
この場にいるメンバーの中で、それについて知っているのは上級生のミユキだけだ。
「へぇ、面白そうじゃね?」
「ですが...問題も多いですよ。我々は確かに、実力はそこそこですが...パイロット科のクラスは一つじゃないでしょう」
そうなのだ。
時間割が違うだけで、パイロット科はもっとクラス数がある。
まだ見ぬ強敵もいるかも知れないのに、わざわざ嘲笑の的になるために出るのも...というのが、ナスカの懸念だろう。
「別に、勝つのも負けるのも、関係ないですわよ」
その時、ミユキが割り込んでくる。
公の場なので、いつもの口調だ。
「新入生大会はチームデュエル、つまりどう戦うかは自由ですわ。協力して一人ずつ倒すも良し。各個撃破を狙うも良し。どんな手段で...当然、ルールはあります。...どんな手段を用いて勝っても、またはどんな理由で負けようと、それにケチを付ける人なんていませんわよ」
「そうは言いますけれど、実際に戦うのは貴方じゃないのでしょう?」
「...そうですけれど」
僕、クライム、ナスカ、ロラン、フウカの五人チームで組むとして、顧問は上級生の条件を満たすミユキに、メカニックはラウルに頼めばいいと思っている。
ただ、問題は他にもある。
「ミユキは顧問として引っ張りだこだろうし、僕らのチームを応援して負けたら、家名に傷がつくんじゃないだろうか...」
「舐めないでくださいまし。負けは負け、戦場でもない場所での負けで、カナタ伯爵家の名が穢される等、決してありませんわ」
「そうか...ならいいんだが」
問題がないなら構わないのだが...
となると、好戦ムードの皆はいいとして...
「ロラン」
「...な、何ですか」
「一緒に戦ってくれないか?」
「私に聞いてるんですか? だったら、大丈夫です」
「いいのか? 他に所属したいチームとか...」
「足手纏いだっていうなら、抜けますけど...」
「ああ、そんなわけないだろ。足手纏いだって言うなら、むしろ僕の方だからな」
トゥルーブルーに乗っている時だけ、僕は誰かを圧倒できていた。
だが、それ以外の時はそうではない。
むしろ、ロランより弱い可能性もあるんだからな。
「そんな足手纏いをリーダーにする情けねぇチームに所属したいってんなら、歓迎だぜ?」
後ろから声が響く。
見れば、クライムが身を乗り出してフォローに出てきてくれていた。
「確かに、あなたの言うようにあなたは戦力の上では頼りにならないのかもしれませんが、少なくとも、この素人集団の中では、実力など無いも同然でしょう。足手纏いというより、全員が足を引っ張りあっているようなものです」
フォローになっていないフォローを突き刺すナスカ。
それを見て、僕は苦笑を浮かべる。
ロランは笑っているのかそうではないのかよく分からない笑みを浮かべて、頷いた。
数時間後。
皆と別れた僕は、ミユキと二人で会っていた。
彼女が、話があると言ってきたからだ。
「それで、話って何ですか?」
「簡単よ、貴方の...というより、貴方のチーム専用の格納庫を借りたのよ」
「えっ」
僕のためにそこまでしてくれなくても...と、恋人のような事を思ってみるが、少し考えればわかる事だ。
これは彼女なりの「お礼」であり、ビジネスだ。
僕らはシャトルに乗り、そこへ向かう。
学生寮や貴族街とも離れた場所に、そこはあった。
「公に支援することは出来ないけれど、私が支援するならそれなりのものでないとならないわ」
「なるほど...これは」
格納庫...ではあった。
だが、もう使われていないようで、格納庫自体は綺麗に保たれていたが、併設された管理棟はボロボロだった。
「ここはあくまで、僕たちを哀れんでミユキ・カナタが貸し与えた、半分廃墟の格納庫...そういうことですね?」
「よく分かってるじゃないの、貴族になれるわよ」
貴族も大変だな...
ポーズばかりで、肩が凝りそうだ。
だがそれ以上に、管理棟の様相がひどい。
五人で頑張って片付けするしかないが、これは...貴族をやるより肩が凝る。
「ありがとうございます」
「いいわ...それより...勝ちなさいよ」
「はい」
ミユキが去った後、僕は暫く管理棟と格納庫を見つめていた。
そして、ふと上を見上げる。
そこに、映像の中で見たような青い空はない。
けれど、肌を撫でる風はある。
「良し」
明日から忙しくなる。
そんな、懸念とも期待とも、希望とも取れる想いを胸に。
僕は格納庫を後にした。
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