表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/41

004-ガイダンス

九時ちょうど。

なんとか間に合った僕は、指定された椅子に飛び乗るように座った。

場所は中央校舎大講堂。

三万人が入れるスペースらしい。

一学年一万人程度と考えるなら、全学年の全員が入れるんだろう。


『在校生、それから新入生の皆様、こんにちは!』


その時。

開場のベルと共に、スピーカーから声が響く。

全員がそちらを向くと、そこには若い女の人がいた。


『私の名前はユラウス・リトナー、二年生主席です! 今日はこの新入生説明会の司会を担当させて頂きます!』


ここからだと紫の髪だということしかわからないものの、マイク越しとはいえよく通る声だ。


『まず最初に、校長の挨拶なのですが...残念なことに、本日急遽謁見の用事が入ってしまったため、私が代わりに挨拶を担当いたします!』


ロカルファ王国の首都惑星まで、このコロニーからだと六時間程度の位置にある。

だから、戻ってこれないのだろう。

ユラウスの挨拶は、別に特別なことは言わなかった。

僕たちの健全な学びを願っている事、平等な学舎の実現に協力してほしい事、騎士を志す者は騎士であることの誇りを学び、力を振り翳すことなく正道へと進め、そういう話だった。


『新入生の皆様は、様々な事由でこの学院に入ったと思われます。けれど、それらの事由とこの学院は分けて考えて欲しいのです。全ての人間が一学徒として、ここまで学ぶ権利があります』


僕はよく知らないけれど、ロカルファ王国は貴族の横暴が強い国でもある。

特に、戦功を上げて陞爵した騎士爵や、お金で爵位を買ったと言われるような法衣貴族。

彼等は自らの強さと爵位を振り翳し、平民に迷惑をかけているという。

僕の故郷では、厳格な伯爵が統治を行なっていたからか、そういう話はなかったけれど。


『平民の皆様は、貴族だけが受けられる特権待遇に対して思うところはあるかもしれませんが、全てが同じ、というのは都合が悪いことも理解して頂きます』


学ぶ権利は平等だが、生活は平等ではない。

そういうことだろう。

例えば食堂などは、さっき案内を見たのだが二階は貴族専用。

他にも貴族専用スペースや、貴族専用の学科や講義があるらしい。

推薦を受ければ学生でも利用・受講できるものだが、これが学院の格差の一つでもあった。

我慢して欲しい、というのが校長の言い分だが、納得していない生徒もいるんだろう。


『要らぬ諍いは避けよ、それが貴族連合からのお達しですので、その協力の一環としてこの格差があります。心苦しい限りですが、どうかご容赦くださいとのことです』


勿論、納得しない奴はそれでも納得しないだろうとは思うけど。

僕は多少歪んだ考えでその言葉を受け取る。

その後は、学院の説明が続いた。

僕らは事前に決めたカリキュラムで講義を受け、騎士志望の学院生はそれにパイロット訓練が加わる。

僕は入学前にあったパイロット訓練でB評価をもらっているので、上級クラスに入れるのだが、下級クラスの者はまずはKFAの講義を受けなければならない。

免許みたいなものはないが、それで人を傷つけたらまずいとの配慮なんだろう。


『貴族の学院生の皆様には、希望すれば貴族学級の受講や、リモート、通信教育なども利用できます』


僕たち平民と違って貴族は余計なことで忙しいと聞いている。

そのための制度なんだと思う。

貴族学級は、聞いたところによればプライドの高い貴族のために訓練された教師がいる学級らしい。

平民の講師に教わるなど、我慢がならないというのもいるのだろう。


『寮をご利用の学院生にお伝えしておきます、基本的には相部屋制ですが、もし問題があるようでしたら部屋を変えることも可能ですので、各寮母までお知らせください。貴族の学院生の方は、希望すれば一般寮に入ることも可能ですので、一週間後までに事務所に書類を提出願います』


一番大きいのは、この学院は全寮制ということだ。

僕がここを選んだのも、そこが理由だ。

三食出るし、衣食住のうち食住は自分で確保できる。

衣は学院制服、予備含めて二着で賄えるし、私服も一応持ってきている。

三年の学院生活を耐え切るなら十分なはず。


『では、長いお話で疲れたでしょうが、シュテンリット学院の入学式・説明会を終わらせて頂きます』


ようやく終わった。

だが、これからが本番だ。


『皆様お疲れかとは思いますが、一時間後に授業開始となります。在校生の方は新入生に恥じぬように、新入生の方たちは無理だけはせず勉学に励んでいただきましょう!』


拍手と共に、入学式は終わりを告げた。

僕は案内があるまで立ってはいけないと知っているので、ぞろぞろと出ていく貴族学院生たちを横目に、じっと座っていた。


↓小説家になろう 勝手にランキング投票お願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ