003-決闘
学院内部にて。
そこでは、二機の人型兵器が、互いに睨み合っていた。
片方は、レーザーライフルを両手に持ち、もう片方はレーザーライフルと巨大な盾で武装している。
最初に動いたのは、両手持ちの方であった。
動きを誘うように、レーザーライフルを乱射し、防御か回避かのどちらかの選択肢を与えた。
盾持ちはその攻撃を見て、正確な動きで射線から退避する。
それに合わせて、両手持ちは二つの銃の焦点を盾持ちにしっかりと合わせた。
その瞬間。
盾持ちの持つ盾が、力場を展開してレーザーを防いだ。
両手持ちはレーザーライフルをオーバーロードさせて連射するが、盾の力場を圧倒することはできない。
ゆっくりと近づく盾持ちに怯えたのか、先に動いたのは...いや、動いてしまったのは両手持ちであった。
跳躍し、スラスターで加速して盾持ちの側面に回り込む。
だが、当然盾持ちのパイロットはその動きを予測していた。
停止する位置に合わせて撃たれた射撃は、正確に両手持ちの頭部を貫いていた。
頭から湯気を上げながら、両手持ちは地面に落ちた。
『勝者:ミユキ カナタ』
無機質なアナウンスが、その場に響き渡った。
盾持ちはそれを聞くや否や、格納庫の方へと戻っていくのだった。
「す、すげぇえええ!」
「アレがミユキ・カナタか!」
学院に入った僕たちだったものの、正門前で足止めを喰らっていた。
突如校庭が「決闘場」に指定されて、そこでミユキ・カナタという学生とザモール・コブスという学生の決闘が始まった。
この学院では、騎士同士の決闘が二十四時間、いつでもどこでも許可されているそうだ。
専門の決闘場もあり、基本的にはそこが利用されているらしいが。
「頭部を一撃、目もくれないんだな...やっぱエースって凄えわ...」
勝負のルールとして、当然ながら双方の負傷・致死的なものは禁止となる。
だから、頭部(頭部にコックピットがある場合は動力炉)の破壊がルールとなっているのだ。
当然、頭部を破壊するのは難しい。
頭・胴体・足で一番狙いにくい部位だ。
決闘において「綺麗な勝ち方」とは、泥臭い勝ち方に指定される、動けなくして頭部をグサリ、ではなく、相手のKFAを破壊、もしくは頭部を華麗に破壊して勝利することをいう訳である。
決闘の勝利数で、ランキングが付けられているらしく、さっきの盾持ちのパイロットは「エース」。
『防護フィールドを解除します』
僕たちの進路上に立ちはだかっていたフィールドが消え去って、通行できるようになった。
決闘がどこでも許可されてるのは、このフィールドがあるかららしい。
フィールドが消え去ると、先ほどは戦闘の方が気になって見えなかった校庭が露わになった。
とても広く、中央には噴水もある。
色とりどりのタイルで舗装された庭を歩きながら、僕たちは本校舎へと入っていく。
その際に、別の取り巻きが目に入った。
その中央には、プラチナブロンドの髪の少女がいた。
「あ、アレって、ミユキ様じゃない?!」
「本当だ! ミユキ様!」
その時、前を歩いていた女子組が黄色い声を上げて立ち止まった。
僕はそれをかわすように歩く。
アレがミユキ・カナタか。
まあ、僕には関係ない。
天上の人だ。
だって彼女は、カナタ、つまりはカナタ伯爵家の生まれということ。
エースで伯爵令嬢、平民にとっては言葉を交わすことすら奇跡のような存在だ。
僕は集まりを無視して、校舎内に足を踏み入れた。
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