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020-記憶に響く声

『...お前は......になるんだ......な?』


暗い場所で、僕はただ立っていた。

金属に反響したような声が響いている。

僕に向けられたものなのに、その言葉は遠く、ひどく歪んで聞こえた。


『...ぞ......』

『待ってよ!』


僕の声は、ひどく幼く聞こえた。

何故だろう?

どうして幼い声なんだろうか?


『待ってよ...』


僕は声を上げた。

すると、少しだけ声が明瞭になった。


『お前は...になるんだ...いいな?』

『誰...誰なの?』

『お前には...が...っている』

『答えてよ!』


叫ぶが、声だけが響いていた。

その時、轟音が響いた。

今までは聞いた事のない音だった。


『.........様!』

『......だ、......だけ、私の.........』

『誰なの...?』


また、聞いた事のない声が響く。

どこかで聞いた声。

誰だ?


『......様は......』

『......報! ......が低......』


どこかで、警報のような音が響く。

それが、じわりじわりと僕の心に恐怖を齎した。

思い出してはいけないような、そんな恐怖が。


『誰なの、ねえ!』

『ああ...』

『勝手に納得して! 誰...』


次の瞬間。

僕は現実に引き戻された。

全ての感覚が、戻ってきたのだ。


「はぁ...」


暫く、夢の余韻を味わうように、ただ天井を見つめた。

起き上がると、もう寝れない事に気づく。

ベッドから降りて、キッチンに向かう。

備品のマグカップに水道の水を注ぎ、飲み干した。

気付くと、汗ばんでいる事に気づく。

どうせ寝れないのだし、一風呂浴びるか。


「ふぅ」


シャワーを浴びた僕は、ベランダに出た。

室外機の上に腰掛け、空を見上げた。

コロニーに空はない、真上を見上げれば、逆さまに建つ同じような団地や住宅が見える。


「...クライムはどの辺に住んでるんだろうな」


貴族寮を希望するような人間には見えないので、意外と同じ棟かもしれないな。

そんな事を考えていると、団地の頭上を輸送船が通りかかった。

エンジン音の轟音がないので、最低限の出力で航行しているのだろう。

このコロニーでは、車両というものを殆ど見ない。

シャトルや輸送船、フロートボードが中心であり、車輪がついた乗り物は全く見ない。

鉄道がそうかと思ったが、あれはリニアモーター車であり、車輪は使われていない。


「不思議な世界だ」


何もかもが故郷と違う。

だというのに、僕はそれに適応している。

なぜ僕は、これらを初めて知ったように思えないのだろう?

あの夢が何か関係しているのだろうか?

謎を抱えたまま、眠気を覚えた僕は再び眠りに就いた。

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