002-移動
シュテンリット学院は、僕が生まれるずっと前からある、古い学校だ。
スペースコロニーそのものが学院とその設備、関係者の住居であり、このロカルファ王国における、エリート街道の登竜門ともいえる場所だ。
王族も、貴族家の面々も通っているという。
まあ、僕には関係のない話だ。文字通り僕は一般人だから。
『次は、カトエル、カトエル――――第四研究室にお越しの方は、こちらでお降りください』
車内アナウンスが僕の思考に割り込んだ。
幸いにも席は空いていて、僕は電車の中で座っていた。
そして、定期的に響くレールの音が、再び思考を学院へと戻す。
シュテンリット学院の目的は、国家を防衛する騎士を育てる事にある。
勿論、騎士にならない道もある。
ただ、僕のような将来の夢も無ければ展望もなく、ついでにコネもないような人間は、騎士を目指した方が分かりやすい。
ただ騎士と言っても、この場合は人型の機動兵器、「ナイトフルアーマー」――――通称KFAのパイロットの事だ。
『カトエル、カトエルに到着です。お出口は右側です』
そもそもの背景として、この王国は昔は戦争をしていた事もあった。
その時に活躍したのが、機動騎士達だった。
色々な種類があって、歴史書にはエースパイロット達の名が顔を出す。
「はぁ」
『ドアが閉まります』
学院は公費で運用されていて、僕みたいな養子でも問題なく通う事が出来る。
王族から平民まで、平等に。
.......とはいえ、流石に待遇の違いはあるんだが。
例えば、貴族たちは専用のKFAを持つことが出来て、外からでも見れる学院の決闘配信では、特殊仕様のKFA同士が戦っている映像がよく見られる。
流石に僕には、あんなお金ばかりかかったKFAと戦って勝てるとは思えないので、出れたとしても予選落ちだろう。
『次はラトベル、ラトベル。第十四講堂行きは当駅乗り換えです』
さっきも言った通り、この学院は別に騎士になる事がゴールではない。
文官や研究者の道もある。
王族、貴族の御用達であるという面を除けば、シュテンリット学院は普遍的な学校とそう変わらない筈だ。
『――――次はアカサイ、アカサイ。新入生の皆様は、こちらでお降りになってください』
「....来た」
その時、車内アナウンスが到着を伝える。
僕は顔を上げた。
列車は、コロニー中央部に位置する巨大な学院の本棟へと入ろうとしていた。
煉瓦造りの古風な駅が、緩やかなカーブの先に見えている。
早めに出ようと、数人が席を立つのが目に映った。
「おい、何だあれ!?」
その時、誰かが叫んだ。
全員がそちらを見ると、校舎のどこかから青白い一条の光が空に向けて飛び出していた。
すぐにそれは消える。
見れば、在校生らしき面々はそれを見ても、特に驚いていない。
これが、学院。
僕はこのシュテンリット学院で、無事に卒業認定を貰えるのだろうか.....?
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