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019-帰寮、その2

夜。

僕は寮に帰って、夕食を作っていた。

と言っても、僕に作れるのは煮たり焼いたりの料理だけである。

今夜の献立は冷凍ハンバーグとコンソメベースの野菜スープ。

あとは買ってきた長いパンだ。

既にラウルは夕食を終え、今は風呂に入っている。

『絶対に入るな』と言われているので、僕は浴室には近づかずにいた。


「そうか、放送局が違うのか」


僕は携帯端末でビデオ放送を見るが、放送局が違うらしく、政府系の番組ばかりだった。

僕がいた場所では、アングラな雰囲気のビデオ番組がいくつも放送されていたが、ここでは結構真面目なようだ。

仕方ないのでニュース番組を見ながら食事を続ける。


『本日未明、マティウス座六番惑星ラメトで内乱が発生しました。政府は騎士先遣隊を送り、避難を進める方針を発表しました』


プロモッド帝国を滅ぼしたロカルファ王国だが、結局内乱や反乱は起きる。

外敵がいないので、より利益を得るために混乱を引き起こすからだ。

そんな時に活躍するのが騎士。

数十機のKFAを前にすれば、数千規模の艦隊など案山子でしかない。

それを知らないか、知っての慢心か。

それでも混乱を起こす人間は絶えない。


『ロカルファ王国工業部門が、昨日既存のKFAのニューモデルとしてバドックⅣの開発開始を発表しました』


バドックⅣか。

まだⅡしか使ってないが、Ⅲよりも高性能となるともう想像がつかないな。

映像に表示された画面の中で、広報担当者らしき人間がバドックⅣの性能について語っていた。


「ああ、バドックⅣか、ついに...というわけだな」


その時、後ろから声が届く。

振り返ると、タオルを首に掛けたラウルが立っていた。

視線はニュース番組へ向けられている。


「知ってるんですか?」

「ああ。俺のじっ...俺が前から気になってたプロジェクトだからな」

「へぇ...」


バドックⅢは二十年ほど前の機体なので、バドックⅣは文字通りの最新鋭機なのだろう。


「何が違うんですか?」

「イカイドⅢから得たデータを元に、より細かい動作を可能とする万能機...がコンセプトらしい」


それは...つまり、ミユキ・カナタのようなことができると言うことだろうか。

だが、それだけではないだろう。

技術の発達で、もっと複雑な動きが出来るようになったからこそ、機体を一新する必要が出てきたのかもしれない。


「しかし...何だか悪い気がしてきた」


二時間後、僕はお風呂に入っていた。

石鹸類を持ってきていないので、ラウルのものを借りていた。

彼は綺麗好きなのか、シャンプー、リンス、ボディソープと他によくわからないスキンケア関連のものが風呂場の棚に並んでおり、僕はそれを少しだけ借りて髪を洗い、シャワーで流した。

コロニー内とはいえ、学生なので水は潤沢に使える。

ヘッドドライヤーを使い、髪の水分を落として風呂から出る。


「買わないとな...」


早めにアルバイトを見つけないと、手持ちが尽きる。

奨学金の中に含まれているのは食費だけだ。

教室清掃のアルバイトでもするか...

風呂から出ると、リビング・ダイニングの明かりは消え、非常灯が小さく光っていた。

僕は自室の扉を開けて、なるべく静かに閉めた。

何もない部屋だ。

備え付けのベッドと、ベッドシーツと布団、そして同じく備え付けの机と椅子だけだ。

荷物はまだ箱の中、僕は寝巻きに着替えるのも億劫で、そのままベッドに倒れ込むのだった。

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