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014-歴史講義3

「やはり、大戦当時、コロニー内での戦闘などで、一般的ではないものの利用されていた、ストロングワーカーによる機動戦術。これにより、開発されたナイトフルアーマーの普及。これが戦場を変えた、ということになるな」


その言葉が、教室に響く。

ここからが、皆が両親から御伽話のように聞かされる、最終戦争の話だ。

第二次プロモッド戦争の終戦後、二十年の停戦期間を経て、再び戦争が開始された。

だが、ナイトフルアーマーを十全に配備した王国群を前にして、プロモッド帝国は瞬く間に敗北を喫して行った。


「だが、一番大きいのは、開戦から三十年後に現れたエースの存在だ」


プロモッド帝国もナイトフルアーマーに似た兵器を開発したため、完全な優位を取れるというわけではなくなった頃。

秘匿開発の新型ナイトフルアーマーに乗った伝説のパイロットが、颯爽と現れた...そうだ。


「皆も知っての通り、ラパエルとそのパイロット、クラマ・ドランの獅子奮迅の活躍によって、最終戦争は勝利に導かれた」


プロモッド帝国は領土の99%を喪失。

皇帝直轄領だけを残して、完全降伏した。

それと共に、不利な条約を大量に結ばされ、徐々に弱体化されて行ったという。


「英雄たちの時代はこれで終わりだ、ここで質疑応答といこうか。...そうだな、クラマ・ドランの出自がどこか、知っている人はいるか?」


それは僕も知らない。

というか、物好きでないと調べないような気もするが...


「はい」


複数の人物が手を上げた。

その中で、一際目立ったらしい生徒を、先生は指名した。


「ナスカ・フォウル。答えてくれ」

「惑星トランベル、開拓惑星の出身です」


そうなのか。

僕と同じ出自なんだな。

勿論惑星は違うが、開拓惑星、という点でだ。


「その通り。クラマ・ドランは開拓惑星トランベルの出身だが、たまたま戦闘で損傷し、修理中だった母艦の艦長に拾われる形で宇宙軍に入隊した。もっとも、この場で知らない者はいないだろうがな」


僕は知らないのだが...

しかし、僕はかなり特殊な立ち位置なので、知らなくても仕方ない。


「彼の機体、ラパエルについては残念だが、歴史の講師として言える確かなことは何もない、技術学科なら、当時の整備士のお弟子さんが勤めているから、何か話は聞けるかもしれないな」


その言葉に、クラスは一気に騒がしくなる。

過去の時代の生き証人が、確かに生きているのだと。

しかし、思えば終戦から二百年も経っているらしいので、お弟子さんと言ってもその弟子とかだろう。

騒ぐ程の話でもない。


「はい、はい。そこまで。自由時間に尋ねることもできるだろう」


先生が手を叩いたので、皆黙る。

貴族の生徒もいるはずなのに、お行儀が良いことこの上ない。

イレギュラーはクライムくらいなのか、やはり。


「映像は記録室で閲覧できるので、興味がある生徒はそちらで見るのも良いだろう」


先生はそう言ったあと、白板を切り替えた。

そこには、「KFAにおける武装の発展」と書かれていた。


「さて、皆が興味のなさそうな話をしよう。残念なことにテストに出るので、寝るのは推奨しない」


どうやら、ここからが本番らしい。

授業の終わりまで30分。

先生はスライドを切り替え、そこに表示されたのは、見慣れない形状の銃だった。


「KFAにおける武器は、ストロングワーカーからの発展だった当時は、ただ大型化しただけの実体弾ライフルが主流だった。他には、散弾銃やバズーカなども使われていた」


まだ当時はビーム兵器は主流ではなかったらしい。

ガトリングガンも使用されていたようで、エネルギー兵器と違って内蔵電力以外の電力を使わないため、重宝されていたようだ。


「ビーム兵器が実用化されたのは、開戦から二十年後の413年頃だ、両手持ちのビームライフルが使用され始め、それなりの戦果を上げた」


戦艦用のビーム砲を小型化したものらしく、当時としてはロドス機関をフルパワーで回して充填に5分、砲身の冷却に30分と酷い有様だったそうだ。

その十年後、ラパエルが現れるまでにビーム兵器の小型化は進んで行ったそうだが...


「結局、ラパエルの使用していたギガビームライフルが当時としては最先端で、六発しか撃てないかわりに戦艦並みの威力を持っていたらしい」


エネルギー弾倉の交換式で、戦闘しながら少しずつ使用&充電。

エネルギーが切れたら弾倉を交換、そんな戦法を取っていたらしい。


「ラパエルについては、不可解な点も多いが...基本的にはギガビームライフルの戦術的有利によるものだと思って良いだろうな」


噂では、ラパエルは王国の隠された技術を使用して作られたらしい。

なので、何か特別な力とかがあってもおかしくはないかもしれない。


「この時使用されたギガビームライフルだが、過剰な威力を持っていた他、精度が少し悪かったそうだ。現行のメガライフルは、これを元にして連射性能、精度が高められているというわけだ」


あとは整備性もだと思う。

一点もののギガビームライフルを修理するのは大変だっただろう。


「戦後はビームソードやレイピアのような、ビームを利用した近接戦装備の開発も開始された。こちらは強力な威力を持つが、エネルギー消費が異常に激しかった。近年は改良されているな」


鍔迫り合いの時だけ発動するのが主流だったようで、グラスプスイッチ式のものが流行ったという。


「...そろそろ授業は終わりだな、課題を出しておくので、次の授業までに提出するように!」


大変興味深い授業だったのだが、チャイムが鳴り響く。

これで授業は終わりであった。

先生は淡白な様子で、礼をすると教室から出て行った。

静寂が破られ、教室にざわめきが満ちる。


「よし」


僕は席を立ち、クライムとナスカを誘うことにする。

記録室で、ラパエルの映像を見るために。

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