013-歴史講義2
「まず、教科書を開いてもらおう。3ページを開いてくれ」
僕らは電子教科書の3ページを開く。
そこには、ロカルファ王国の勃興についてのページがあった。
「生物史、旧人類史についてはこの授業ではやらないから、そこは気を付けてくれたまえ」
つまり、ロカルファ王国首都惑星「ラクナス」には着目せず、宇宙に進出してから300年後のロカルファ王国設立からの歴史を学ぶ、ということだろう。
「ロカルファ王国は、ロカルファ首都星系“ハルファ”における最初の遭遇、プラタ人との戦争において、ロカルファが勝利して惑星プラタを植民地としてから始まった、この大宇宙を征服するべく、初代国王ラハール・ジン・バラル・クライン・ロカルファは既にあった旧ロカルファ王国を、ロカルファ宇宙王国として昇華した訳だ」
ラハール・ジン・バラル・クライン・ロカルファ。
この国の初代国王だが、ラハール様と呼ばなくとも、ラハール・ジン・バラル・クライン・ロカルファと呼べばそれで敬称として成立するらしい。
苗字には隠された意味があるらしいが、それは秘匿されており王族しか知らないとかなんとか。
行きでやることもなく動画ばかり見ていたが、意外なところで役に立つ。
「その後は平和と技術革新が続き、王国新暦145年に第一次ラテア戦争が勃発した」
惑星ラテアと衛星ラゴスを生存圏とするラテア人に対して、王国は最初は交渉を持ちかけたものの決裂、食糧危機にあったラテアを攻め滅ぼしたそうだ。
なんとなく勝者の歴史、というにおいはするが...
「皆も知る通り、ラテアは現在は資源惑星として使われている」
食料はないが資源はあったそうだ。
ハルファ第四惑星ラテアを攻略した王国は、更なる外縁部を目指して領土の拡大を開始したという。
「結局、王国新暦221年にまでわたる捜索の結果、ハルファと隣接する恒星系二つに、生命体は存在しなかった。だが、事態はそこから三十年後に急展開を迎える事になる」
王国新暦251年。
突如、所属不明の艦隊が、当時の王国の最前線だった開拓惑星「ジオス」を襲撃。
瞬く間に王国の防衛戦力を撃滅し、当時王国が保有していた十二の恒星系のうち八を強奪。
ここから王国が反撃に出た事で...
「王国新暦283年、“最終戦争”に繋がる、第一次プロモッド戦争が始まる」
当時はプロモッド帝国については知られておらず、所属不明の艦隊に乗っ取られた恒星系を奪還する目的で動いていたそうだ。
だが、戦争を続けるうちに敵の正体を知り、技術を奪いながら恒星系を二つ奪還。
一度の急戦と交渉を挟み、
「299年、ついに第二次プロモッド戦争が始まった。さて、ここで質問を出そう」
先生はそう言うと、一度言葉を切る。
そして、今の今まで使っていなかった白板に何かを表示させた。
それは、見たこともない人物の写真だった。
誰かと肩を組んでいるようだが、見切れていた。
「この人物は、戦争を大きく変えた。知っている者はいるか?」
「はい!」
その時。
元気よく手を上げた者がいた。
...クライムだ。
「ロドス・フラーゲン博士です! ロドス・ドライブとその周辺技術の基礎となった理論を完成させたんですよね!?」
「正解だ、流石に知っているようだな」
ロドス博士...知らなかった。
ロドス機関は、今やKFAのメイン機関として幅広く使われている。
ロドス粒子を燃焼させて、小さい燃料タンクのまま長時間活動できる。
「ロドス機関が広く普及したことで、戦場は大きく変化した。艦載機や戦闘艦が長時間の活動が可能になったことで、本来普及していた三式融合炉から換装した艦や戦闘機が普及し、その後の百年続いた戦争を有利に導いた」
だが、当然ながら新技術を導入すれば...敵も真似してくる。
プロモッド帝国も、クレアザーム式機関という、核融合を利用した機関を利用していたが、サスラム機関という、ロドス機関と同じ原理を利用したものを使い始めたらしい。
「結局、この戦争は...おっと」
先生が言葉を切った。
半チャイムが鳴ったためだ。
「続けよう、この戦争は正確には七十年後...363年頃から、互いの戦力が拮抗したことで膠着状態に陥った」
ここらは僕も知っている。
互いの技術ツリーが全く同じになったことで、戦略や戦術が重視され始めた。
だが、それだけで勝ち続け、防衛し続けることは難しくなった。
「それでも、亜光速航行理論の開発やコロニーの建造などその間にあった進歩は計り知れない。しかし、一番大きかったのは...」
間違いない。
アレが来る。
「やはり、大戦当時、コロニー内での戦闘などで、一般的ではないものの利用されていた、ストロングワーカーによる機動戦術。これにより、開発されたナイトフルアーマーの普及。これが戦場を変えた、ということになるな」
と、先生はそう言い切ったのだった。
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