CASE8.「古本の中のメモ─③」
【10月17日 AM7:26】
【バレシロ高校 通学路】
僕は、徒歩通学の中だと、そこそこ学校まで距離がある方だと思う。
昨日コレレスさんが言っていた、僕と同じ高校に通っている……金髪の女子生徒を探さなきゃいけない。
「そんなこといったって〜〜ほとんどの生徒が金髪や茶髪が多いし……。」
「無理だよ〜〜!! コレレスさぁ〜ん!!」
バレシロ高校1年[トラル・エンコ(15)]
[性別:男]
「コレレスさんって誰よ?」
バレシロ高校1年[アメ・リサール(15)]
[性別:男]
「うわァァ!!!」
後ろからいきなり聞こえた聞き覚えのある声だったが、僕は腰が抜けて前へと倒れ込んだ。
「よっ!相変わらず反応が面白いな!ハハッ!」
「……ッテテ。」
「やめろって言ってんじゃんか!! アメ〜!!」
「まぁまぁ〜、次は学校でするから許せって! なっ!」
「で? コレレスさんって誰よー?」
「はぁ……実は────」
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「はぇ〜〜それで探偵に依頼してるってわけね〜」
「しかも、お目当てはパッキンの美女か〜〜フムフム。」
と、僕の隣でアメは、無いヒゲを擦るように手で顎を触っていた。
「誰も美女とは言ってないだろ…。」
「金髪の生徒なんてたくさんいるし、どうやって見つけようかなぁ…」
「ならさ、まずは図書室に来る生徒に、聞き込みとかしたらいんじゃね?」
「本好きかもしんないじゃん! 通ってるかもよ?」
「それいいかも!」
「アメにしたら珍しくまともな意見だね!」
珍しく褒めた僕に、アメは腕をおもっきり首に回されて『ガッ!!』っと絞められて痛かった。
「ふざけんなっ!! オレはバカだけど、いつもまともだっつーの!!」
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【PM1:01 バレシロ高校 図書室】
『ガラガラッ─。』と、扉を開けるとたくさんの本が棚に並んであるのが視界に入った。
入り口を入ってすぐ左側に、本の貸し出しをする為の受付があるみたいだ。
僕はそこに立っている生徒に声をかけようとしていた。
「……女子かぁ…。」
『バシィッ!!』と、背中を叩かれて後ろを振り返ると、アメが「なにやってんの?行こうぜ!」と声をかけてきた。
「う…うん。」
僕たちがそばまで来ると、髪の短めの茶髪の女子生徒はこっちに気づいた。
「あ、あの……その…」
情けない口調の僕にアメは、隣で頭を抱えていた。
「……はぁ…。 ダメダメだなぁ〜」
「えっ…なに!?」
「まさか……こ、告白ゥゥゥ!!?」
バレシロ高校1年[リブロス・ミア(15)]
[性別:女]
「あ、いやっ…!! ちが、くて…!!」
「あ、なーんだ。 違うんだ。」
「で? なんか用?」
「…ぷくくくっ。ふふっ。」
(アメのヤツ〜!! 絶対楽しんでるだろ!)
(あとで覚えとけよ〜…クソォ……。 これだから女子は苦手なんだよ〜〜)
(特に目つきも怖いし……。)
眉間にシワがよるミアの様子に、流石にマズイと思ったのか、アメがフォローをしてくれた。
「あーえっとなぁ〜、コイツが本が好きな金髪女子を探しててさ〜本を借りに来てる子で、金髪の子とかいない?」
「…えっ…!?」
「変た…ぃ…? うわぁ〜…」
「ちょっとアメ〜〜!! 誤解するような言い方はやめろよっ!!」
「でも、目的はそうだろー? ハッハッハ!」
「……はぁ…。 まぁそうだけどさぁ〜。」
「なによ、なんか訳アリって感じー?」
(アレ…?なんかこの件、さっきやったような…)
「実は───」
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「はぁ〜なるほどねぇ〜! それで金髪の子を探してたの!」
「いいわ! 任せて!」
「私も探してあげる!」
「良かったな!」
と、アメは言ってくれたけど、正直彼女の性格は苦手だった。
「う、うん。」
「ありがとう。 えっと……」
「ミアよ!」
(ん…? ミア? どっかで聞いか事があるような……どこだったっけ…?)
「とりあえず今週の名簿の中には、いなかったし。 ワタシの友達にも聞いてみるね!」
そうして結局手掛かりは掴めないまま、僕たちは図書室を後にした。
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【PM1:43 バレシロ高校 1年3組】
昼休みが終え、教室で次の授業の準備をしていると、教室に入ってくる2人組の女子生徒が視界に入った。
その瞬間、僕とその人物の1人の視線が合うと声を上げた。
「あっ──!!
「──あっ!!」
「え? なに?」
と、隣の女子は『ポカーン』とした顔で眺めていた。
その人物は金髪で、その隣の人物はさっき図書館で話したミアという女子だった。
「ブフゥッ──。」
(ああ、ほんっと。)
後ろから聞こえる。手で塞いで誤魔化す笑い声に気付きながらも、僕は開いた目がしばらく引き攣っていた。
「さっきの!」
「あはは〜……どうも〜。」
(女子と話すの苦手だから、あまり見ないようにしてたけど……。)
(まさかの、同じクラスだったとは。 これは盲点。)
(そっか。 聞いたことあったのは、あの時だったのか。)
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「どうしたのエニータ?」
「そんなに落ち込んで、大丈夫だって〜!! 明日も小テストはあるんだし!」
「ね? がんばろ?」
「う、うん! ありがとうミアちゃん!」
教室の左前側ではしゃぐ女子生徒2人を眺めていた僕は、後ろから脅かされた。
「ワッ!!」
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「この子はカルタ・エニータ! 私の親友よ!」
元気よくミアが紹介すると、隣にいる金髪の女子生徒は僕の目を見て話し始めた。
「……あ、どうも。 ミアちゃんの友達のエニータです。」
(いてて……目にゴミが入っちゃったかな…。)
うわぁ〜。なんか、心なしか目が引き攣ってるような……。僕のこと奇声を上げる変なヤツって思われてそうだなぁ。うぅ〜……。
目を擦るエニータは、そのまま続けて話す。
「話は聞いたけど、本は特に好きじゃないわ。 あ、でも……おばあちゃんが本好きで、小さい頃はよく読んだ思い出はあるかなぁ。」
「でも、そのおばあちゃんは最近亡くなったんだよね。」
「だから、本ももう売っちゃったし。 人違いなんじゃないかな?」
「あっ……。」
「そうだったんですね。……それはお気の毒に。」
「ありがとう。まあ、ミアちゃんが乗り掛かった船だし。私も協力するよ!」
「おお〜! 良かったじゃんエンコ〜!」
「探す仲間は多いほど頼もしいしなっ!」
「う、うん。ありがとう!」
そうして、僕達4人は図書館を利用する金髪の女子生徒を探すことになった。




