第7章 – 「俺の顔を持つ獣」
「もし俺と戦うのが運命なら──鏡を割る覚悟はできてるか?」
—ブラックストーム(ユヴラジ)
「未来の俺が敵になるなら、俺は過去すら壊してでも止めてやる。」
第7章 – 「俺の顔を持つ獣」
アークII:ユニバース D-099X – ダイノバース
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空気が、震えた。
熱ではない。拒絶によって。
まるでこの現実そのものが、侵入者を吐き出そうとしているかのように。
ジャングルが、瞬きする。
そして――折り畳まれた。
一瞬で、マルチバース・マシンはねじれたツタと苔の厚い層に覆われ、歪んだ沈黙の中へと姿を消した。
ジャングルはそれを秘密として受け入れ、テクノロジーを超えた原始的な偽装の中へと葬り去った。
「クローク装置、安定。カモフラージュ濃度、96%。ジャングルはチクらねぇ。」
マッドサイエンティスト・ユヴラジが、汗を額ににじませながらつぶやく。
だが、元のユヴラジ――今や沈黙と存在感だけで全てを支配する彼は、答えなかった。
彼は樹林を見渡し、腰の刀の柄に手を置きながら、読めない目で全てを見ていた。
「奴を見つける。」
そう呟き、歩き出した。
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石のカエルの川のほとり、遥か遠く
水面に波紋。虫が逃げ、鳥が沈黙する。
一匹の獣が、水辺にしゃがんでいた。
その肉体は彫刻のように硬く、髪は嵐で裂かれたツルのように絡まっている。
目は溶岩のように赤く燃えていた。
彼もユヴラジだった。
だがこの世界では、別の名で呼ばれていた。
彼は匂いを嗅いだ。
鋼鉄。悲哀。この世界にはない炎の匂い。
「…未来の腐った臭いがする。」
そして――その姿は風のように消えた。
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衝突
亀裂。咆哮。
そして、木々が爆発した。
ジャングルのユヴラジが、砲弾のように茂みを突き破って突進してきた。
マッドサイエンティストは転げ落ち、喉で悲鳴を詰まらせる。
メインのユヴラジは、間一髪で振り返る。
その拳は隕石のようだった。
彼はそれを、掌で受け止めた。
衝撃で地面が歪み、鳥たちは数キロ先まで逃げ去った。
だが――彼らの手は離れなかった。
掌が、掌に。魂が、魂に。
目が合う。
同じ顔――だが、違う。
交わり過ぎたタイムライン。
積み重なった痛み。
進化という名の断絶。
「…もうムカついてきたぞ。」ジャングルの獣が唸る。
「それはいい。」ユヴラジが静かに言った。
炎を秘めた刃のような声で。
「俺もだ。」
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緊張、崩壊
二人が手を離した。
獣の胸が波打ち、ユヴラジは拳を握り直す。
マッドサイエンティストが倒木の後ろから顔を出して咳き込みながら言う。
「…初日から潰し合うのやめようぜ? 同じチームっぽいし?」
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無線の瞬間
メインのユヴラジが腰から**周波数リンク装置(小型通信機)**を2つ取り出す。
「ほら。」
1つをマッドサイエンティストへ、もう1つをジャングルのユヴラジへと投げた。
「タイムライン越しに叫ぶのも疲れるだろ。」
獣はその装置をまじまじと見る。
「金属の虫か?」
「違う。ただのツールだ。お前と同じでな。」
野生のユヴラジは唸りながらも、それを受け取った。
メインのユヴラジはもう何も言わなかった。
言葉は要らない。
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コードネーム発動
マッドサイエンティストが通信機を操作しながら言う。
「もうユヴラジが3人もいて頭おかしくなるわ。コードネーム決めようぜ。」
彼はジャングルの獣を指差す。
「お前は……ダークラン(Darkeran)だ。」
野生のユヴラジは唸りながらも応じた。
「…それでいい。」
マッドサイエンティストは自分を指差す。
「俺は…レッド(Red)かな。」
2人の視線が、メインのユヴラジへと向かう。
マッドサイエンティストがにやりと笑って言う。
「で、お前は? プライム? OG? 神殺し?」
ユヴラジは歩みを止めず、こう言った。
「…ブラックストーム(Blackstorm)と呼べ。」
ジャングルが、その名を覚えた。
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獣の巣への降下
ダークランの案内で、3人はツタと石の裂け目を進んだ。
大地が彼らの足元で砕け、蔓が裂け、根が巻き付く。
やがて現れたのは、大地に口を開ける隠された地下神殿の入り口。
扉は、太古の捕食者の肋骨で作られていた。
その上には巨大な化石化した頭蓋骨。
ツタに半分埋もれ、叫びの途中で凍りついたような顎。
ブラックストームはそれを見つめた。
どこか**見覚えのある「怒り」**を感じた。
――形ではなく、
――魂の記憶。
3人のユヴラジは、地下の巣へと足を踏み入れた。
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End of Chapter 7
Arc II: Universe D-099X – Dinoverse
------To Be Continued------
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次回、マルチバース:カオスの物語
第8章 –「ダイノエンペラーの玉座」
ダークランの巣の奥、封印された神殿の扉が開く。
そこに待っていたのは――恐竜の帝国。そしてその王。
重装歩兵、DNA武装、空を裂く雷竜の咆哮。
ブラックストームの前に立ちはだかるのは、自らの進化を極めた“王”だった。
> 「俺は進化の終点だ。過去に縛られた貴様とは違う。」
暴走する力と信念。
チームは試され、運命の戦いが始まる。
次章――玉座の上の怒りは、世界を揺らす。